あとがき(緑の分権改革) [2011年10月26日(Wed)]
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「緑の分権改革」は、その言葉の響きから全く新しい発想や政策のように思われている面があるかもしれませんが、実は古くからわれわれ日本人が大切にしてきたものを思い出し、少し取り戻していこうという考え方が根底にあるように思います。明治維新以来、日本よりも西欧の文明がすぐれたもので、それに追いつき追い越せという考え方が強くなりすぎた面がなかったか、物質文明や市場原理が人間社会で一番素晴らしいものであるという考え方に偏しすぎた面はなかったか、お金がお金を生むという拝金主義がはびこりすぎていないか、など考えさせられる点が多々あります。 東日本大震災でも、人間が自然を完全にコントロールし、自然は人間に従属して当然だ、原子力も人間が完全に制御することが可能で、そのことにより今まで以上にすばらしい文明生活できる、という思い上がりが強くなりすぎていたのではないかと反省させられました。 現在の文明は遠からず終焉を迎え、その後に新しい文明が創造され、それによって人類の新たな発展の道が開けるという考え方が、世界中でかなり一般化しつつあります。それでは次の文明とはどんな文明なのか?それを解き明かすカギを提供しているのが、「緑の分権改革」だともいえそうです。 私は、当時の原口総務大臣からの指示で、多くの有識者の方々と「緑の分権改革」について議論し、その本質を解き明かす作業に最初に携わるきっかけを得ましたが、そのことは私自身の世界観や人生観を深めることにもつながり、大変幸せだったと考えています。その中でもたくさんの示唆を与えていただいた国際日本文化研究センター教授の安田喜憲先生、東京大学名誉教授の大森彌先生、月尾嘉男先生、明治大学教授の小田切徳美先生、早稲田大学教授の宮口としみち先生、株式会社ベネッセホールディングスの福武總一郎会長、一般社団法人太陽経済の会の代表理事の山崎養世氏にはこの場を借りて深く感謝申し上げたいと思います。 また、総務省の「緑の分権改革推進室」の創設当初のメンバーであった黒田地域政策課長(現財政課長)さんのほか総務省地域力創造グループのメンバーの皆さんには、最新の資料の提供などについて多大なるご協力をいただきました。ここに改めて御礼を申し上げたいと思います。 さらに、このような新しいテーマについての出版を提案したところ、快くお引き受けいただくとともに、さまざまな観点から的確なアドバイスをいただいた学芸出版の前田裕資さんにも、心から御礼を申し上げたいと思います。 最後になりましたが、本書が、「あるものを生かす地域力創造」の参考書として、わが国の特色ある自然・風土・歴史、そしてそれに培われてきた独特の伝統・文化を大切にした地域づくりと経済の再生に少しでもお役に立ち、サステナビリティーのあるわが国社会の構築に寄与できることになれば、著者としてこれにまさる幸せはありません。 |




