ある日の夕方、ごみ収集箱の前を通ると、ごみ袋が一つだけ残っていた。
その日は燃えるごみの回収日。 収集車が来た後に出しちゃったのかな?と思ったのだが、 よく見てみると袋の中には大量のビール缶が。
ごみ袋の氏名欄にはカタカナで名前が書いてある。
おそらく、このごみの出し主は外国の人。Aさんとしよう。
うちの自治会名簿に、Aさんの名前はない。
これが何を意味するのか。
細かさは世界トップクラス? 日本のごみの捨て方
きちんとした比較データを見たことはないが、日本のごみ分別ルールは、世界的に見ても細かいようだ。
たとえば、この調査では「私の国では日本のような分別はしない」といったコメントが散見される。
都内で公務員をしている友人に教えてもらったのだが、家庭ごみの分別ルールは国によってかなり違うらしい。家庭で出す時点では一切分類せず、それらが集められた処理工場で分類をする、という国もあるそうだ。
これが当たり前の環境で生きてきた人にとっては、日本のルールはまったく馴染まないし、細かい分類のルールを理解するには、ルールが書かれた資料が必要になる。
うちの自治体では「家庭ごみの分け方・出し方」という資料がある。「冊子」と「一覧表」があり、前者には詳細が書かれてあり、後者はA3サイズの概要版。
あんたの住んでるまちにも、こんな資料があるんじゃないかな。
(出典:神戸市)
一覧表は英語や中国語など5か国語対応となっているので、これを入手できれば「家庭ごみを出す時点で分類が必要」ということは分かるはずだ。
一覧表ヲ手ニ入レルニハ?
この一覧表は毎年更新される。更新される一覧表は、自治会経由で配布される。言い方を換えれば、自治会に未加入なら、ホームページから探し出して印刷するか、役場へ行ってもらうしかない。
Aさんは自治会未加入なので、自治会ルートからの入手はできない。仮にAさんが自治会に入っていたとしても、自治会経由で配られる一覧表は「日本語版」なので、Aさんの日本語読解力が低ければ読めないし、理解できない。
日本語読解力という点では、資料が「やさしい日本語」になっているかどうかも重要だ。
Aさんは役場のホームページから探し出して印刷するか、役場の窓口で受け取るかの二択になる。
もしAさんが「家庭ごみを出す時点で分別するルールではない国」の出身で、資料を入手てきないのなら、日本のルールの存在自体を知る機会がない、ということが想像できる。
そうすると、出身国のルールでごみを出さざるを得ない。1枚目や2〜4枚目の写真はそんな状況の表れなのでは、と思う。悪意があるとは思えないのだ。
分別ルールを知ってもらうための、唯一の接点
そもそも、おれが見たのは外国の人が出したであろうごみ袋。ごみの出し主とは出会っていない。
自治会の会員なら訪問して資料を渡すこともできるが、未加入なのでどこに住んでいるかも分からない。
Aさんはいずこに……。
燃えるごみの日の朝に待ち伏せするのも違うなと思って、あれこれ考えた結果「掲示物」をつくることにした。
これをラミネート加工し、ごみ収集箱の看板?の部分に超強力両面テープで貼り付ける。
この掲示物には、
・日本語を含む6か国の「冊子」があること
・燃えるごみの出し方のルール
・資源ごみ収集の開催日(#02参照)
・役場の窓口と連絡先
を書いておいた。
一応、やさしい日本語で書いたつもりなので、必要な情報にはアクセスできるはず。
これをごみ収集箱に貼っておけば、ごみを出しに来た時に目に入るはず、という作戦だ。
これを掲示するにあたっては、事前に役員会(組長会)で提起した。
「こんなの意味あるの?」といった否定的な意見はなく、というか意見がほぼなかったのだが、若い組長から「日本人でも地域が違えばルールが違うので、日本語の二次元バーコードも入れてあげたら、より親切では」という、個人的目から鱗な意見をいただいた。盲点。灯台下暗し。
後日、これをうちの自治会のすべてのごみ収集箱に貼った。
その後
掲示物の効果なのかは分からないが、未分別のごみを見かけることはなくなった。
この掲示物をし始めたのが令和4年の2月から。
それ以前は、Aさんの空き缶混入ごみ以外にも、こんなごみが見られたのだが、掲示物を設置してからは未分別のごみを見たことがない。
別の日にごみ収集箱から回収した家庭ごみ。未分別のごみは役員(組長)が持ち帰り、自宅で分別し直す。割れ物やカミソリも。
行政指定のごみ袋ではなく、レジ袋に入れられたビン。しかも未洗浄。
頑張って分別したことが窺えるが、日本ではこの分別では回収してもらえない。
この掲示物に効果があった、と信じたいが、イヤなシナリオもある。
このごみ収集箱に捨てずに、山や川などへ投棄して、結果的にごみ収集箱で見かけなくなった、という最悪のシナリオ。
そんなことはないと思いたいが、こんな田舎まちでも山や川に行けば明らかに不法投棄と思われるごみを見かけるので、そんな最悪が頭をよぎる。
これは外国の人に限ったことではなく、#02にも書いた「自治会未加入世帯にごみ収集所を使わせない問題」のように、日本人同士のトラブルでもこういったことは起こりうる。
コンビニや道の駅のごみ箱に「家庭ごみを持ち込まないで」と貼り紙がしてあることと、こういった問題とが無関係だとは思えない。
自治会未加入にしろ、外国人への対応にしろ、不寛容な対応をすれば、その捌け口は別のところに向かうかもしれない。
そう考えれば、住民自治の活動は基本的に寛容であることが大切なんだと思う。