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2021年07月08日

とある自治会の暗黒奇譚 #04 Another Story 「大金鶏菊の老婆」

※#04のボツネタ(パロディ)です。興味のない方は読み飛ばしてください。



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婆「しびれを切らしたか?」

なんでもお見通しらしい。

盆「私の自治会長としての仕事に、何か不備でも?」

婆「不備はない。だが、通常の自治会活動を再開するには、今しばらく時間がかかる」

盆「なぜでしょうか?」

婆「直に分かる」

そろそろ五類に移行でもするのか……。

盆「待ちきれませんね。一体いつになったら、再開できるんですか?」

婆「変化のない現状に耐えられないか?」

盆「まあ、今までがあまりに忙しい人生でしたからね」

婆「アレをする回数も増える、と」

盆「……」

婆「アレをやるようになって、そろそろ一年か?」

盆「……はい。どうしても、やめられません」

すると、婆さんは姿勢を正し、声を張り上げた。

婆「防御! 伏せ! 立て!」

盆「……っ!?」

身体が反応する。

婆「腕! 心臓! 脚、脚!」

それは、ナイフを用いたオオキンケイギクの刈り方。

婆「逆手に持ったナイフを相手の腕の内側から入れ、そのまま筋肉を切断。相手の指を引き金から離すと同時に左の肩から手を回しストラップで首を絞める」

特定外来生物の、駆除の訓練。

婆「心臓を一突きする。胸骨の上から刺し、地面に引き倒す。大腿部を刺す。動脈を狙え。邪魔な腕をどかし、脇から肺に向けてナイフを突き入れろ」

盆「ぐ……うぅ……っ!」

ぴきぴきと、全身の血管が沸き立つ。

条件反射で、身体が疼くのだ。

盆「はあっ……はあっ……」

婆「……」

じわっと、額に脂汗が浮かぶ。視界がぐらぐらと歪み、みぞおちが潰れそうなほど痛む。

婆「……それほど、恐ろしかったか」

盆「うぅ……」

海外から入ってきた外来種が、島国固有の在来種を淘汰するという悲劇。

園芸用に持ち込まれた、北米が原産地のオオキンケイギクは、その強靭な繁殖力で、次々と在来種を根絶やしにした。

国の当局は特定外来生物に指定し、その駆除を国民に呼びかけた。

行政の広報紙なとで周知が図られたが、関心を示す国民は少なく、派手な見た目に惹かれて、法律で禁止している栽培に手をそめる者もいるほどだ。

盆「おれは……見ている……。鮮やかな黄色の花びら……花が枯れ落ちた後の蕾の中の大量の種子。空き地一面に広がる黄色の絨毯……。ヤツラは草刈り機で地上部だけを刈っても意味がない。多年草だから根から取らないと次の年も生えてくる。種の数も尋常じゃない。昨年まで生えてなかった空き地が翌年ヤツらで覆われることもある。そして……」

婆「だが、お前は、とある空き地のオオキンケイギクを一人で駆除している。迅速かつ的確な行動を称賛され、勲章まで授与されているではないか」

そのとき、おれの中で溜まっていた衝動が爆発した。

盆「仕方がなかったんだ!!

駆除しないと在来種が減っていくってのにそんなことも知らないで市民一斉清掃のときに綺麗な花だからってオオキンケイギクだけ残しやがったあのクソの地主野郎があろうことか水やりしててだからおれは侵入して背後から――!!!」

婆「腕、喉、心臓、脚、脚、肺……マニュアル通りにナイフを突き立てたわけだ(オオキンケイギクに)」

盆「うおおおっ!!」

婆「ぬっ……!?」

踏み込むと同時に、狙いをつけていた。

左足。

押し車がないと歩けないお婆さん。その身体的欠陥を狙い、腰にばねを利かせ、強烈な回し蹴りを放った。

婆「ぐぅっ・・・!」

盆「はあっ・・・はあっ・・・!」

全身が熱い。

特に、振り上げた右足が。

荒れた呼吸が引いていくにつれて、状況が見えてきた。

婆「……いいぞ、若いの」

吹っ飛んだ押し車を拾いおこし、もたれかかる婆さん。

よろよろしながら体勢を整えていく。

婆「私とて人間だ。そうやって不意に弱点を突かれれば、対処の仕様がない」

盆「はあっ……はあっ……。す、すみません……つい……考える間もなく……」

婆「そう、なにも考えるな。考えていては外来種は駆除できない。そう教えたのは我々だ。私はむしろ、お前のいまの行動によって、お前への指導が間違っていなかったと確信した」

盆「……」

婆「お前は、自治力養成試験に合格できなかった。だから、その埋め合わせとして一年間の草刈りボランティアに強制参加する羽目になった」

盆「わ、わかってます。おれの貧弱な意志を叩きなおすために……」

婆「だが、人間の意志というものは、そのような極限状態に置かれては、お前に限らず、みな等しく弱い。残念ながらお前は、後遺症を負ってしまった」

盆「は、はい……毎日夢に見てしまいます……。あのときの光景や、ときには匂いや感触すら……だから、おれは……っく……あ、うぅ……」

婆「アレをやりたいのならば、ここでやってもかまわんぞ」

盆「す、すみません……」

おれはたどたどしい手つきで背負籠から鉄アレイとシェイカーを取り出した。

盆「はっ……ふっ……」

婆さんは、おれをじっと見ている。震える手で鉄アレイを繰り返し持ち上げ、上腕二頭筋をパンプアップさせ、プロテインを一気に飲み干して恍惚の表情を浮かべるおれを。

盆「だ、だいぶ、落ち着いてきました」

……どうやら、まだ大丈夫なようだ。

婆「その粉は、外国産のかなり高価な栄養補助剤のようだな?」

盆「調べたんですか?」

おれが持っている粉を、没収されたことはない。

婆「運動後すみやかに摂取することで、アミノ酸の吸収効果が高まり、効率のよい筋肥大が期待される。依存性は低いが、使用を続ければ幻覚や妄想を引き起こす。常習者の躁鬱症状も多く見られているようだ」

本に載ってる通りの知識。

盆「……まったく、最近は深く考え込んでしまったり、回覧板から資料を抜いて回したり……キャラが安定しないんですよね……クク……」

婆「お前が自治会に莫大な貢献をすると誓う限り、私はお前の不正(職務中の筋トレ)に目をつむろう」

ありがたいぜ。

おれがおかしな真似をしたら、すぐにしょっぴくってわけだ。

そうやって、首に縄をかけているつもりらしい。

盆「それでは……失礼します……なんだか疲れました」

草刈りは途中だったが、おれはその場を後にした。

(おわり)
posted by 島根 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 盆子原

とある自治会の暗黒奇譚 #04 Side Story

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特定外来生物『オオキンケイギク』をご存だろうか。

詳細な説明は▼コチラに譲るとして……
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list/L-syo-01.html

自宅の裏庭に群生しつつあるオオキンケイギクを根絶やしにせんと格闘していた、ある日の夕方。

「きれいな花ですね〜」

通りすがりの、手押し車で歩くお婆さんに声をかけられた。

きっと労いの言葉だと思い、優しいな〜と思いつつも、

(あれ? オオキンケイギクをご存じでない?)

という可能性が頭をよぎった。

そして、おれの中に溜まっていた衝動が爆発した。

盆「これはですねオオキンケイギクといって特定外来生物なんですよ繁殖力が強くてほかの植物や生態系に影響を及ぼすから駆除しないといけないんです多年草なので地上部を刈り取っても翌年生えてきますから根こそぎ駆除しないといけません江津市のかわらばんにも毎年出ていますよ読んでないんですか後学のために教えて差し上げますが栽培しちゃいけないし運搬も販売も野外に放つことも禁止でこれらの項目に違反した場合最高で個人の場合懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金法人の場合1億円以下の罰金が科せられますからねだからおれはこうやって― ― ― ― !!」

婆(すごい喋るな)

お婆さんは「そうなんですか〜」とさして興味のなさそうな返事をして去っていった。





広報の罠

オオキンケイギクについては毎年、まちの広報紙に掲載されている(p.19参照)

広報で陥りやすいのは、

  ・広報紙に載せた
  ・チラシを全戸配付した
  ・SNSで流した

という実施レベルでとどまって(満足して)しまって、検証できない(しない)こと。

オオキンケイギクを例にすると、行政の広報紙には毎年掲載されているが、このおばあさんのようにオオキンケイギクを知らない市民はいる。

勘違いされたら困るので一応言っておくが、おれは別に行政の広報を批判するつもりはない。このブログの主旨からすれば、自治会活動も似てるのではないかと思う。

加入している各世帯に、自治会活動の目的や様子が伝わっているか?
集めた自治会費が何に使われているのか、理解されているか?

ということだ。

「自治会が何やってるか分からない」

と言われてしまう要因の一つが広報だと思う。

広報の難しいところは、たとえどんなに分かりやすい広報媒体を作っても、「読まない人は読まない」という問題がある。これはなかなか難しい。

最近だとLINEを使って情報共有しているところもあるようだが、やはり読まない人は読まない。究極は、日常的・直接的なコミュニケーションなのかな〜と思う今日この頃。

たとえばうちの場合、2か月に一度まわってくる『資源ごみ回収日の立ち合い』でペアの組長さんと約30分話をする機会がある(#03参照)。

昔や現在のことをいろいろ話してもらえるので、地域のことをいろいろと知るにはよい機会だ。

となると、分かりやすい紙媒体やSNSに注力するだけでなく、地域のサロンや寄合の場で情報が拡散していくようなやり方が良い気がするし、そういった場が地域の中にたくさんあることが今は重要かもな〜という気がする。

しかし、この時はコロナ禍真っ最中。会議や寄り合いが減って、直接コミュニケーションがとりにくい中で、自治会の広報手段は回覧板がほぼ唯一の方法という状況だった。

情報源として回覧板や広報紙しかないと思われるこのお婆さんにオオキンケイギクを認識してもらうにはどうすれば良かったのか?

広報、情報共有の難しさを痛感した。
posted by 島根 at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 盆子原

とある自治会の暗黒奇譚 #04 「回覧板」

お待たせしました。
お待たせしすぎたかもしれません。
自治会といえばコレ。





回覧板

まずは回覧板に関する全体的な構造から。

何度も言うが、これはうちの自治会の話なので、他所は違うかもしれない、ということを予めご承知おきいただきたい。

さて、回覧板の回し方だが、うちの自治会では次のような流れになっている。

  @月1回、自治会長会が開かれる(夜7時から)。
  Aその時、回覧資料と全戸配付資料が配られる。
  Bこれらの資料を配付担当の役員(組長)に配る。

おれの場合、@Aで受け取った資料を、その日の夜に北・南・団地の3地区に仕分けし、翌朝か翌日夜に配付担当の役員3人の自宅に届けていた。自転車でまわって30分。説明が必要な資料もあるので、だいたいこれくらいの時間がかかる。

ここで『配付担当の役員(組長)』について説明しないといけない。

うちの自治会は北、南、団地の3地区があるのは先ほど言ったとおり。それぞれ5・5・3の計13組から構成されている。北地区は1〜5組、南地区は6〜10組、団地は11〜13組、という具合だ。

この3地区に1名ずつ『配付担当の役員(組長)』がいる。

たとえば、あんたが北地区の1組の組長で、配付担当の役員だとする。北地区は組数が5なので、あんたはあんたの組を除く2〜5組の組長へ回覧板と配付資料を渡す。

配付担当の役員から回覧板と配付資料を受け取った組長は、自分の組内で回覧板を回し、配付資料を配る。

お分かりいただけただろうか?

細かく書いたせいで、何か大変な仕事のような印象を持ったかもしれないが、要は

自治会長 ⇒ 配付担当役員 ⇒ ほかの役員 ⇒ 各世帯

と回覧板や資料を回していくということだ。家系図とか、トーナメント表みたいなものを思い浮かべていただければ構造をイメージしやすいかもしれない。まあ、あんな感じだ。





自治会(町内会)未加入世帯に回覧板はまわってくるか?

このように『回覧板の仕組み』は自治会が担うようになっている。市報を発行する行政からすると、自治会は「住民への広報するための仕組み」とみることもできる。

これが広報システムとして優れているかというと微妙なところで、自宅に届いた回覧板や資料を“世帯主だけが見て次の家に回す”ということがある。そうなると「住民すべてに周知できた」かどうかは怪しい。だって、父ちゃんはみて、母ちゃんはみてないんだから。

もちろん、自治会に入っていない家(世帯)には、市広報紙は、自治会からは配られない。これは、自治会に未加入だから配っては「いけない」のではなく、配って「いない」だけ。

配ってもいいのだが、 うちの自治会ではそうなっている。自治会の規約で「未加入世帯には配らない」ともなっていない。暗黙のルールでそうしている。これはこれで問題だと思うが……。

うちのまちでは、行政と自治会の間で「市報を配る業務」の契約を結んでいる。業務委託なので、行政から自治会に委託料が支払われている。金額はヒミツォンディー。

行政からもらう委託料は配付世帯数に比例する。なので、未加入世帯にも配れば、それだけ多く委託料を受け取ることができる。

この契約は「自治会未加入世帯に市報を配ってはいけない」とはなっていない。行政からすれば、自治会に入っているかどうかにかかわらず、全世帯に配ってほしいのだ。でも、契約では「全世帯に配れ」ともなっていない。実に曖昧だ。

自治会によっては未加入世帯にも市報を配ったり、回覧板を回したりしているところがあるかもしれない。これに関しては自治会の匙加減一つというわけだ。

うちは未加入世帯には配っていないので、未加入世帯は行政からの大切なお知らせ、重要な情報を“自分で取りにいかなければならない”ということになる。

  公共施設に市報を取りに行く。
  社内で回覧される市報を読む。
  ホームページで市報を確認する。

果たして、どれだけの未加入世帯の人が、こんな行動を取るだろうか。

未加入だから自己責任では?という意見があるかもしれないが、市報や回覧板は先ほど書いたように自治会側のルール次第。

なあ、あんたはこれをどう思う?
posted by 島根 at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 盆子原