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2012年02月01日

第九回 「春よ来い」



2月に入ると、すぐ3日には節分、
4日は立春の日となります。
豆まきして、鬼や災いを追い出して、
冬から春への折り目とするのです。

毎日寒い日がつづいていると、
春の来るのが待ち遠しいですね。

このような春への思いを“うた”にした童謡があります。
古来よりの“わらべうた”ではなく、
大正時代後期につくられたものですが、
春への思いを込めて歌ってみませんか。


「春よ来い」


春よ来い 早く来い
あるきはじめた みいちゃんが
赤い鼻緒の じょじょはいて
おんもへ出たいと 待っている

春よ来い 早く来い
おうちのまえの 桃の木の
つぼみもみんな ふくらんで
はよ咲きたいと 待っている


作詞は、詩人相馬御風(そうまぎょふう/1883〜1950)。
早稲田大学校歌「都の西北」や「カチューシャの唄」を作詞。
作曲は、弘田 龍太郎(ひろた りゅうたろう/1892〜1952)。
『鯉のぼり』、『浜 千鳥』、『雀の学校』などを作曲。

「春よ来い」の“うた”では、

春よ来い 早く来い
あるきはじめた みいちゃんが


と、みいちゃんが春よ来い、早く来いと歌い、
そのみいちゃんのモデルは、作者の長女といわれています。

あるきはじめた幼い子どもが
片言の幼稚語で歌うのは可愛いですね。

赤い鼻緒の じょじょはいて
おんもへ出たいと

「じょじょ」とは、草履のことで、
「おんも」とは家の外のこと。

赤い鼻緒の草履をはいた女の子が
お外に出たいと、春の来るのを待っているのです。
うららかな春風の吹く日を楽しみにしているのですね。
なんと可愛いのでしょう。
この可愛さの中に、
雪国の人々の春への思いが託されていて、
歌う人、聴く人の心にその思いが響いてきます。
そして、

春よ来い 早く来い
おうちのまえの 桃の木の


家の前には桃の木があって、

つぼみもみんな ふくらんで
はよ咲きたいと 待っている


蕾もみんな膨らみ、
早く咲きたいと、春の来るのを待っています。
想像力豊かなイメージで、
人も自然も一体化していて素敵です。
それこそ自他一如!

“自他一如”とは仏教の教え。
作詞した相馬御風は新潟県糸魚川市出身の詩人で、
早稲田大学講師を勤めた後、故郷に戻り、
良寛の研究に没頭しました。
私たちが親しく良寛さんを知ることができるのは、
相馬御風の功績だといえます。

良寛さんには、
春の日に子どもたちと楽しく遊ぶ詩があります。
春には少し早いですが、よき春の来ることを祈り
読んでみましょう。



冬ごもり  春さり来れば
飯乞ふと  草の庵を
立ち出でて 里にい行けば
たまほこの 道のちまたに
子どもらが 今を春べと
手毬つく  ひふみよいなむ
汝がつけば 吾がうたひ
吾がつけば 汝はうたひ
つきて唄ひて 霞立つ
永き春日を 暮らしつるかも


そして、反歌は、


霞たつながき春日をこどもらと
  手まりつきつつこの日暮らしつ

こどもらと手まりつきつつこの里に
  遊ぶ春日はくれずともよし

“今は春べ”
と喜ぶ子どもの笑顔。

良寛さんも、手まりに加わって、

手毬つく  ひふみよいなむ
汝がつけば 吾がうたひ
吾がつけば 汝はうたひ


子どもたちの弾む心。
良寛さんの弾む心。

楽しさあふれる詩ですね。
良寛さんの過ごす越後の冬はさぞや寒かったでしょう。
長く、堪える冬。
春を迎える喜び。
人々の心は弾みます。
それは、
あるきはじめた みいちゃんも一緒でしょう。
私たちもみんなで“春を呼ぶうた”をつくれば
楽しいでしょうね。




資料:『糸魚川歴史民俗博物館ホームページ』
    『風の良寛』中野孝次著 集英社



【邦楽囃子コンサートのご案内】

明治神宮の杜の中で、邦楽囃子のコンサートを
行います。

日時:平成24年2月19日(日)
    13:30開場、14:00開演
場所:明治神宮 参集殿
出演:藤舎流家元 藤舎呂船社中

初めて邦楽囃子を聞かれる方、お子様にも
ご参加いただきたいと思っております。
詳しくはお問合わせください。

(公財)日本文化藝術財団
TEL:03-5269-0037

posted by 事務局 at 09:52| Comment(0) | わらべうた
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