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2009年09月15日

第十六回 遊び心



「人間は遊ぶ動物」と言った人がいます。
“遊び心”は大切!
エネルギーの源泉になります。

遊びといえば、“おもちゃ”
今回は「東京おもちや美術館」に行くことにしました。
四谷三丁目交差点から歩いて7分、
新宿方面に向かい、
3つ目の角を右に曲り、少し歩くと美術館。



「東京おもちや美術館」


その建物は、もとは四谷第四小学校の校舎。
昭和10年に建てられ、歴史的建築遺産。
入り口のところに、モクレンの木があり、
夏の名残でしょうか、蝉の抜け殻が枝にいっぱい。
あまりに多いので、気味が悪くなるくらいです。
モクレンの花言葉は“自然の愛・荘厳・恩恵”。
セミは“自然の愛”に育まれ、
命の荘厳さ、恩恵を体現するために脱皮し、
夏中、おもいっきり鳴けるだけ鳴いたでしょう。

懐かしい小学校の校舎。
靴箱、階段、廊下、教室など、そっくりそのまま。
プレイルームには
卒業生の描いたステンドグラスが、
真昼の陽の光を通して、輝いています。
絵のなかでは、小鳥が飛び、馬が跳ね、
電車も走っています。

階段を上ると、サポーターズボードがあり
「一口館長」の名前を刻んだ積み木になっています。
多くのサポーターによって
支えられている美術館なのですね。



招福猫児〈まねきねこ〉のお話

季節展示は、小泉正直コレクション3「ねこの猫ノネコ」
いろいろな招き猫が展示され、
なかには両手で招いているのもあります。


解説に、世田谷豪徳寺の猫縁起由来が書かれています。
要約すると、
江戸の西の郊外に、小さく貧しいお寺があり、
和尚は猫好きで、わが子のように猫を育てていました。
そして、猫に言い聞かせます。
「恩を知れば何か果報を招来せよ」と。
ある夏の日、鷹狩りの武士5・6騎が通りかかりました。
「門前の猫1匹、うずくまりて我等を見て手をあげて、
しきりに招くので訪ねた」
和尚は、武士たちを寺の奥に招き入れます。
するとどうでしょう、
空がたちまち曇り、
一気に雨が激しく降りだし、
雷がとどろき渡りました。
武士たちは、
門前の猫のお陰で、
あやうく雨の難から逃れることができたのです。
難を逃れたのは江州彦根の伊井直孝。
このことがあって、直孝は帰依(きえ)の念を起します。
菩提寺となったその寺には、寄進が多くなり、
貧しかった寺が一大伽藍になったということで、
「猫が恩に報いて福を招く」
という次第です。

猫は湿気を嫌います。
湿度が高くなると、しきりに手をあげて、
顔を撫でるしぐさをします。
この猫の習性は、
私たちに、雨の降るのが近い、と知らせることになります。
農家の人にとっては、雨が降るのは天の恵み、
それを知らせる猫のしぐさは、吉兆のあかし。
また、猫は、米などの穀物を食い荒らすネズミを退治します。
昔から、家の守りとして大切にされてきたのがわかりますね。

顔を撫でる猫のしぐさは、
あたかも人を招いているようにも見えます。
それは、福を招いているのと同じです。
このことから、商売繁盛の縁起物として、
関東を中心にたくさんの招き猫がつくられてきました。



遊ぶ力

次は「グッド・トイてんじしつ」

おもちゃ文化の向上活動をめざす
NPO法人「グッド・トイ委員会」が選んだ
「遊び力」を育む、新しい発想のおもちゃが展示されています。

わっかを編むという意味の「ワミー」は、
小さなピースをつなげて、地球のような丸い球体をつくりだせます。
「クリップ」は、クリップの形をしたブロックの遊び。
ブロックをはさんでつなげ、
動物や乗り物の形を、想像力によって作ることができます。
丸いドーナツ型のテーブルに集まって、
子どもたちはグッド・トイをいっぱいひろげ、
楽しそうに遊んでいます。
どんどん遊んで、遊び力アップです。



ロシアのおもちゃ

となりの「きかくてんじしつ」では、「ロシアのおもちゃ展」

あっ、こけし人形にそっくり。
新しいロシアの民芸・人形マトリョーシカ

その誕生は、1980年代半ばから。
日本のこけしや箱根細工の七福神
入れ子ダルマなどのアイデアが大いに役立っているそうです。
マトリョーシカは女性の名前マトリョーナの愛称形。
庶民の娘をかたどった可愛いものが多いですね。
頭にはプラトークと呼ばれるスカーフ、
身体にはサラファンと前掛け、
色鮮やかに描かれています。

立体紙人形「七匹の子ヤギ」
幼心のあふれたものです。
ロシア木彫り玩具も並んでいます。
素朴な木彫りで、無垢の木肌がとてもいい感じです。
熊やウサギ、シーソーの木馬。
彩色されたものもあります。
手に持って振ったり、指で操作するとカタカタと動きます。
小鳥がえさをコツコツとついばむ姿は、とても可愛い!
仕掛けによって動くのが、
ロシアの木彫り人形の特色だそうです。



サマルカンドの土人形の、“親子でロバに乗る”や“龍”。
フェリモーノボの土笛人形もあります。
土笛人形は、白土を乾燥させ彩色したもので、
“愛し合う2羽のニワトリ”や“ニワトリを抱く犬”、
“山羊”、“馬に乗る人”、“ヒヨコをかかえるニワトリ”など
愛情あふれたものです。
吹くと、どんな音色なのでしょうか。
素朴な形と色彩に、母なる大地ロシアの心が宿っているようです。



「おもちゃのもり」は、木の香り

床は総ひのき張り。
うわ〜ア、気持ちよさそう。
7,8人の子どもたちが
大きな丸い木の枠で囲まれたものの中に寝転んでいます。
その中は、
ツルツルの丸い木のボール20,000個で埋め尽くされ、
「木の砂場」と名付けられています。
仰向けになったり腹ばいになったり、気持ちよさそう。
枠のところに凹みがあり、ボールはそこを転がります。
よ〜くできていますね。

森の合唱団という木琴があります。
板の長さが全部同じです。
なぜドレミファソラシドと、音楽が奏でられるのでしょうか。
音は、木の重さと硬さによって違います。
この木琴は、重さ、硬さの違う木を使うことによって、
音階を引き出しているのです。
くるみ、けやき、かえで、なら、ひのき、せんだん、きはだ、ほお、
かば、おおだも、えんじゅ、いちい
 等と一本一本に書かれています。
演奏してみましょう。
ドレミファソラシド〜 いい調べ!



おもちゃから未来を!

3階の「おもちゃこうぼう」に入ってみましょう。
満員です。
みんなおもちゃを作っています。
楽しそうに、何を作っているのでしょう。
《ストローのグライダー》ですね。
黒板に作り方が書いてあり、子どもたちは真剣そのもの。

新しい発想と工夫は、子どもの得意とするところ。
地球の未来は、
子どもたちのたくましい想像力=創造力にかかっています。
それを見守り、育てるのは社会や、親たち!
さあ遊びましょう。
感性を磨きましょう。
やわらかい思考を育てましょう。
指導の方が席をまわって、ニコニコ。

階段の踊り場からは、窓ガラスを通して校庭が見えます。
一気に子ども時代を思い出しました。





資料:
『東京お持ちや美術館リーフレット』

会場解説ボード 他



posted by 事務局 at 10:49| Comment(0) | 東京
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