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2009年07月15日

第十二回 世界天文年


1609年にイタリアの科学者・ガリレオ・ガリレイ
星空に望遠鏡をむけ、宇宙を見つめてから400年目。
今年2009年は、国連、ユネスコ、国際天文学連合が、
「世界天文年」と定めました。

その目的は、

「世界中の人々が夜空を見上げ、宇宙の中の地球や
人間の存在に思いを馳せ、自分なりの発見をしてもらうこと」


もうすぐ梅雨が明けると、
夜空に輝く星を、思う存分見ることができますね。

星への思いを、東京近辺で味わうことできるところが
三鷹にあります。



森の中の天文台

JRの武蔵境駅からバスで15分。
「天文台前」で降りると、緑の木々の中にありました。
国立天文台 三鷹です。

その前身の東京天文台が、
大正3年(1914)〜13年(1924)にかけて、
麻布飯倉からここに移転されました。
日本の天文学研究の共同利用センターとなり、
世界各国の天文学者と連携して、
日々宇宙の謎を解き明かすことに挑戦しています。

森一つほどの広い構内には、さまざまな研究施設が点在しています。
見学できるのは移転当時の面影を残す大正期の建物
国登録有形文化財の第一赤道儀室、天文台歴史館(大赤道儀室)、アインシュタイン塔などです。
早速入って見学することにしました。

入門受付で、住所氏名を書いて・・・・・。

最初に見学するのは、第一赤道儀室の建物。
1921年に建てられ、この森での現存最古の建物です。


深い緑の中に、
大きなドームの兜を被ったような円筒形の建物。
蔦の絡みつく大きな古木に囲まれ、
まさに天文少年の夢世界!
冒険好きの少年・少女が大喜びしそうです。
どんな秘密の宝物がつまっているのでしょうか?

木の葉が舞う階段をのぼり、
観測室の中に入ると、ありました、宝物が!

カール・ツァイス社(ドイツ)製の口径20cm屈折望遠鏡
望遠鏡には太陽写真儀(カメラ望遠鏡)が取り付けられ、
宇宙に向けると、天体を追尾できます。
観測されていたのは太陽。
撮影された写真が展示され、黒点のスケッチ台もあります。

ここで1939年から60年間、観測が行われていました。
その記録は毎月整理され、国際機関に報告され、
太陽活動の監視や研究に大きく貢献したのです。



太陽系を歩く

天文台歴史館(大赤道儀室)に向かう道沿いに、
「太陽系ウォーキング」という、太陽系の惑星を
歩きながら見ることができる模型パネルが並んでいます。
太陽系の距離を140億分の1に縮めたものです。

太陽から土星までの実際の距離は14億kmもありますが、
この道では、たった100mでたどり着けます。


このパネルを見ると、一目瞭然で太陽系のことが分かります。
太陽はみずから輝く星で、直径139万2,000 km、表面温度6,000度などなど。
地球は、太陽から1億5,000万kmの距離で、直径1万2,756 km

水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星の各惑星も。
子どもたちにも、わかりやすく、楽しく書いてあります。
森の中で、宇宙を見ながら・・・・・。
このようなさんぽも、あるんですね!

道沿いに、白いユリの花が満開に咲いていました。
大きく開いた花びらのなかに、
まるで宇宙が息づいているように感じます。



天文台歴史館(大赤道儀室)

道の奥には、1926年に建設された大赤道儀室
今は、天文台歴史館となっています。
いかにも天文台と言う風貌の建物は、
森の木々の中で、威風堂々の威厳にあふれています。

地上19.5m、ドーム直径15m。
ドームは大きな帽子のような緑青色。
建設当時、この半球ドームを作る技術が建築業者になく、
船底を作る技術を持った造船技師に力を借りたそうです。

観測室には、
巨大な屈折望遠鏡がドンと据えられていました。
レンズ口径65cm
屈折望遠鏡としては、日本最大の口径だそうです。
この望遠鏡は、1998年3月に引退しましたが、
今でも星の位置関係を測定し、観測が可能な状態なのです。


手回し計算機も展示されていました。

10桁と10桁の数の掛け算、割り算は、
ソロバンより早くできたそうです。
1970年ごろまで使用され、今見ると芸術品のようです

天文学では数の計算はとても大切。
1階では、その手回し計算機を使って暦の計算を体験できます。

壁には、すばる望遠鏡で撮影した天体の画像。
とても美しく、とても危険をはらんだ宇宙。
でも、いつ見ても飽きない宇宙の姿です。



アインシュタイン塔

愛称アインシュタイン塔は、太陽分光写真儀室です。

あの理論物理学者アインシュタインにちなんだ塔です。
太陽光の観測によって、アインシュタインの一般相対性理論を、
検証しようとして建てられたものです。

うっそうとした森の中の道を歩くと
建物が見えてきます。
少し離れたところから、外観を見ることしかできません。
これまた、不思議な感じのする建物です。
それこそ宮崎駿のジブリ映画に出てきそう。

建物が塔になっていて
その全体が望遠鏡の筒になっているのです!
塔望遠鏡とも呼ばれています。

高さは18.6m。
地上5階。地下1階。
外壁は鉄柱のはしごがかかり、
高いところに窓が一つ。
遠くからでも、美しい曲線を持つバルコニーが見えます。
塔の上には観測用ドーム。

資料によると、
内部は吹き抜けで、
屋上のドームから入った太陽光は、
望遠鏡から半地下の大暗室に導かれます。
そこで、プリズムや回折格子(かいせつこうし)で
虹色の光の帯(スペクトル)に分けて観測したのです。

この施設では、
アインシュタインの理論は証明できなかったようです。
観測されていたのは黒点の磁場や、
太陽表面での爆発現象です。
また太陽の自転の測定や太陽光の研究などにも使われ、
成果をあげました。


人はなぜ宇宙を知ろうとするのでしょう。
昔から宇宙のことを知ろうとする人間の情熱は
衰えることはありませんでした。
古代文明の遺跡の中にも、
天文観測の痕跡がいくつも残っています。

「人類が宇宙に乗り出すのは、
“私たちは何者なのか”という問いへの
答えを探すため」

       (『たぐいまれな地球』松本敏博著)


ひたすら望遠鏡をのぞき、
星の観測を続けたガリレオ。
今では、コンピュータでコントロールされたハッブル宇宙望遠鏡や
大型望遠鏡「すばる」が活躍しています。
そのリアルタイムで映し出されるはるか彼方の銀河の鮮やかな姿は、
宇宙の過去・現在・未来をひとつの枠の中で考えさせてくれます。

天文学は、私たちを果てしない世界に誘ってくれますね。

天文台に来たからこそ、
知りえることもあるのだと思いながら、
やわらかな光につつまれ、
静かな森を、散策しました。






資料:
『国立天文台三鷹・見学ガイド』 国立天文台 三鷹

『世界天文年2009』パンフレット 世界天文年2009日本委員会

『たぐいまれな地球』 松本俊博著NHK出版

『天文学がわかる。』 アエラムック 朝日新聞社

posted by 事務局 at 04:41| Comment(0) | 東京
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