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2009年01月01日

四季おりおり 〜文化の香り、さんぽ道〜


                                  剪画:小沢直平

新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

新しいもの、
不思議なもの、
稀有なものに惹かれ、
求めてやまない人間たち、
それは人間として生きる存在の本質である。


そして、

ヒトはチャレンジを好む。
進んで新しいもの、違うものを求める。
無理をしたり、背伸びをするのが好きだ。
刺激を求め、あえてわが身を危険にさらす。

われわれは、新しもの好きなのである。


             動物行動学博士・ライアル・ワトソン
             著書『ネオフィリア』(訳:内田美恵)より


さんぽも一つの冒険です。
心と身体が冒険する、さんぽ!

今年は、文化の香りに誘われるままに、
さんぽを楽しみたいと思います。

ずいぶん前のことです。
理論物理学者の湯川秀樹さんを京都のご自宅にお訪ねした時、
「人が新しいことを見出すのは、動いている時が多い」
とお聞きしました。

「次の部屋に行こうとして襖をあけた瞬間、
暗闇の中に、求めていた答えの数式が浮かんでいた」

と実際にあった経験をお話しになりました。
また、「バスに乗ろうとして足を上げたとき、
新しいアイデイアが浮かんだ経験があなたにもあるでしょう」

とおっしゃったのです。

解決したい問題点を考え続けているとき、
身体を動かすと、真っ先に頭脳に血が巡って
ついに新しいアイデイアが誕生するのですね。

さんぽ(歩くの)は、心にも身体にもいいのです。


散歩は楽しい!

なぜ散歩が楽しいのでしょう。

人類学者によると、
人類が一ヶ所に定住して生活をするようになったのは
およそ一万年ぐらい前のことです。

数百万年の人類の歴史の中では、その大部分が、
狩猟や植物の採集をしながら移動する暮しでした。

移動しながら生活するのがあたりまえだったのです。
現代の私たちから見れば、さぞかし大変ではないか、と思いますが、
結構楽しかったかもしれません。

毎日が旅の生活!
想像できますか。

そのころの人たちは、暑さ寒さに合わせて移動し、
行く先々で食べ物や水を手に入れ、
ゴミや排泄物も自然のままに処理できました。

仲間同士うまくいかなくなったり、
部族間で緊張関係に入ると、別れ別れになって
いつでも自由に他の場所に移って行くことができたのです。

日々新しい環境への遊動生活では、
絶えず大脳や感覚器官が刺激されて、リフレッシュします。
そうしなければ生きのびることができません。
ところが人類が定住することになって、
何を知ったでしょうか。

一ヶ所に定住してみると、
日々同じ行動パターンになり、飽きてしまう。
ストレスがたまって、
ノイローゼになったりします。

それで人間は、退屈ということを知りました。

だから、現実とは違う表現世界を考えだしたのです。
儀式や祭りからはじまって、
次第に、踊りや歌や演劇などを生み出しました。
こうして文化や芸術というものができはじめました。

文化とは、芸術や学問に親しみ、道徳や法律、
そして経済などの恩恵を受けて
人生を豊かにしていくことです。

私たちの生活が多彩な変化に富み、
自分の能力が生かさて、
生きていけるような環境になればいいですね。


今、私たちの身近に、
さまざまな文化に触れるさんぽ道はあるでしょうか。
皆さまと一緒に小さな発見をしてみましょう。


第一回は、1月15日です。
よろしくお付き合いください。




資料:『ネオフィリア』ライアル・ワトソン著 内田美恵・訳 筑摩書房

    『おくのほそ道』堀切実著 NHKライブラリー

    『定住革命』西田正規著 新曜社
posted by 事務局 at 00:01| Comment(0) | 告知
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