CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

2017年07月01日

第4回 海辺にて

P1092686_s.jpg
海辺 撮影:服部考規


このところの地球温暖化のせいか、この夏は、これまでにも増して暑い夏になりそうな予感です。海のない山梨県に育った私は、子供の頃、夏になると、母の郷里の海辺の町に良く連れて行ってもらいました。海岸で色とりどりの石を探したり、砂に埋もれた貝を掘り起こしたり。拾った小さな巻貝を耳に当てると、サーっという風の音にも似た響きが聞こえてきたことを思い出します。幼いころは、この音が海の音だと信じていました。

P9021689.JPG
石笛 撮影:服部考規

海辺で見かける自然石に孔の開いたものを、「いわぶえ(石笛)(磐笛)」と名付けて、神道の「警蹕(けいひつ)」という、神を招く音として使っています。警蹕は神道行事の中で発する「オーッ」と言う声を指しますが、孔の開いた自然石を吹いて高音を出す場合もあるのです。石笛を吹くと、人間の可聴範囲を超えた高周波の音が出るので、邪気を追い払う音、魔除けの音として使われてきました。能の横笛(能管)の高音「ヒシギ」の音にも似ていることから、能管は石笛と関係があるという説があります。
石笛は、海や河川の自然石を利用したものですが、砂岩、火山弾、翡翠、珪石などでできています。この写真の石笛は砂岩質の多い堆積岩です。数カ所の孔に唇を当てて吹くと実に甲高い音がします。

>>石笛


海といえば貝。貝の楽器の代表は法螺貝です。昨年、千葉県で日本の楽器について話をする機会があり、その時に仏教で吹く法螺貝の映像を紹介した所、参加していた曹洞宗福田寺のご住職が、たまたまお持ちの小ぶりの法螺貝を見せて下さいました。房州より南の海に生息する巻き貝で、地域の名前を付けて「房州法螺」と呼ぶそうです。

P4065751.JPG
房州法螺 撮影:服部考規

法螺貝といえば、修験道の山伏が吹いたり、密教行事の始まりに真言宗や天台宗のお坊さんが行列の先頭で吹く大きめの貝が一般的だったので、このような小ぶりの法螺貝があるとはびっくりでした。千葉県外房では「ポッポ」、「ポッポケイ」、「ポッポガイ」、「ポーポー」、「ポーポーケイ」、「ポーポーガイ」などと呼び名も色々あるようで、食用にもなるそうですが、吹口を付けて、漁師たちが舟同士の合図に吹いていたのだそうです。あまリも私が珍しがるものですから、ご住職はとうとうこの貝を私に下さいました。

>>房州法螺

>>大きい法螺貝


法螺貝は仏教では「ほうら」と呼び、ルーツはおそらくインドでしょう。日本には、空海(1434−1495)や円行(1455−1512)等がもたらしたそうで、法螺とは、仏の説法の力を称える言葉だったものが、貝の名前となったのだそうです。

巻き貝を吹くことだけでなく、小さな巻貝の卵嚢(らんのう)を使った「海ほおずき」という音を出すおもちゃがあったのをご存知でしょうか。昭和50年代ごろまで、夏祭りの出店で良く見かけた発音具です。

1707_01_名入り.jpg
海ほおずき 撮影:竹内敏信

口の中に入れて鳴らすと、グゥィーと言うような不思議な音がしました。子どもたちが口にくわえて鳴らすと、虫封じになるという言い伝えがあるそうですが、昔の玩具は、その目的をたどると皆、虫封じ、厄除けになってしまいます。
7月9日、10日の2日間、東京浅草にある浅草寺では、夏の風物詩「ほおずき市」が開かれます。懐かしい海ほおずきがきっと並んでいることでしょう。

次回は、「縁日にて」です。

文:茂手木潔子(日本文化藝術財団専門委員/聖徳大学教授)
音源制作:film media sound design
※スピーカー等の環境によって、再生されない場合があります。
この記事へのコメント
コメントを書く