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2017年06月01日

第3回 蛙の歌

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田んぼの風景 撮影:服部考規

♪蛙の歌が 聞こえてくるよ〜
子供の頃に輪唱で歌った「蛙の歌」。もとはドイツ民謡と言われていますが、原曲そのものは不明です。でも、ドイツ人は決して蛙の声を「歌」とは考えないでしょうね。人も虫も動物もすべて自然の一部と考えてきた日本だから、蛙の声も「歌」になるのでしょう。
インドネシアでも、蛙の声は音楽と密接に関わっていて、バリ島の声だけの合唱「ケチャ」のルーツも蛙の声だそうです。バリガムランを日本人で初めて習得した皆川厚一さんが、「バリ島の蛙は時間差で啼くから、本当にケチャみたいなんですよ」と、現地で録音したテープを下さいました。テープからは、確かにケチャの数パートを歌っているような、時間差で啼く蛙の声が聞こえてきました。

新潟県上越市の大学に赴任したばかりの梅雨の頃、夜になるとモーターが回るような音が外で聞えました。一晩中断続的に聞こえて来る唸るような低い音を、子供時代の自家水道のモーター音に似ているなあと思っていたら、翌朝それが牛蛙の声と判明。詩人の草野心平が「蛙の声明(しょうみょう)」という作品を書いていますが、牛蛙の声は、まさにお坊さんが唱える声明にそっくり。バリ島の蛙の鳴き声とは随分違っていました。

歌舞伎の擬音では、赤貝で蛙の声を表現します。貝殻の表面のギザギザした面をすり合わせると、グヮッグヮッと蛙が鳴いているような音になるのです。

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赤貝の蛙 撮影:服部考規

>>赤貝の蛙
誰が最初にこの素敵な演奏法を考えたのでしょう。
歌舞伎では、身近な道具を使って自然界の音を作り出すことが本当に上手なのです。

例えば、牛の声を出す笛は、写真下の管の左端を口に加えて息を吹き込むと「モーッ」と啼き、馬の嘶きは、写真上の管に両唇を入れ込んで吹くと「ヒヒーン」と啼くのです。

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馬の笛(上)と牛の笛(下) 撮影:服部考規

>>牛と馬の擬音笛
馬笛は、巻き舌をして息を吹き込むと、馬がブルブルと唸るような声も出せます。一体中はどうなっているのかというと、内部に細い3本の管が取り付けられていて、それぞれの管にシングルリードが付いています。このリードは、夏祭りの屋台で見かける音の出る風船のリードと同じ仕組みで、クラリネットのリード構造によく似ています。
蛙の声に、牛と馬の声、そこに見えてくる懐かしい思い出は、田植えの風景です。

この時期に山あいの村の水辺に生えるイタドリ。若い芽は、山菜として食べるようですが、少し成長して空洞になった茎の部分は笛になります。イタドリ笛は、竹より加工しやすいので、自然に恵まれた地域では子どもたちの身近な笛として活用できる素材です。

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イタドリの笛 撮影:竹内敏信

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イタドリの笛(リードなし) 撮影:服部考規

>>イタドリの笛(リードなし)
一端が閉管のイタドリの開いた部分に口を当てて吹くと、パンンフルートになります。新しい茎は一部に切り込みを入れて葉っぱを差し込んでリードのある笛にもなります。茎が赤いものと緑のものとがあり、この写真の赤い茎のイタドリ笛は20年も前に作ったのに、まだ現役なのです。

次回は、「海辺にて」です。

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今回のシリーズで聞くことの出来る楽器の音は、佐藤勇一氏(film media sound design)が録音して下さっています。佐藤氏は、歌舞伎や民俗芸能の音響を担当するなど、日本の伝統的な音文化に精通した音響プランナーです。


文:茂手木潔子(日本文化藝術財団専門委員/聖徳大学教授)
音源制作:film media sound design
※スピーカー等の環境によって、再生されない場合があります。
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