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2014年06月01日

第19回 室町時代 『閑吟集』

『閑吟集』は、中世の歌謡を集めて編纂された歌謡・小歌集です。その仮名序に次のように記されています。
「ここに一人の世捨て人がある。遠く富士山を眺められる地をえらんで草庵をつくり、すでに十余年の歳月を過ごした。松風の吹きそよぐところに軒端を構えて、その風の音に和して琴を奏でたり、尺八を伴侶として春秋の季節にふさわしい調子を試みる折々に、一ふしの小歌をうたうことを慰み草として、・・・(略)・・・数々の歌を忘れ難い記念にもと、思い出すままに、閑居のかたわらに記して置いた。・・・(略)・・・詩経三百十一編に似せて、同数の歌を集め、閑吟集と命名した。・・・(略)・・・」
(『閑吟集研究大成』明治書院から浅野建二氏の「口訳」)

この歌集のなかに、世の無常さ、憂き世のつらさを嘆く歌があります。

♪世間(よのなか)は ちろりに過ぐる ちろりちろり 
「世の中は瞬く間に過ぎていくよ、ちろりちろりとね。」

♪ただ何事もかごとも 夢幻(ゆめまぼろし)や水の泡 笹の葉に置く露の間に あぢきなの世や
「ただ何もかもすべては夢、幻よ。水の泡よ。笹の葉におく露がはかなく消えてしまうように、一瞬のうちに過ぎ去ってしまうやるせない世よ。」

また、浮き世を面白おかしく享楽的に歌ったものもあります。

♪くすむ人は見られぬ 夢の夢の夢の世を
現顔(うつつがほ)して
「まじめくさった人など見られたものではないよ。夢の夢の夢のようにはかない世なのに、覚めた顔つきをしてさ。」

♪何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ
「何をしようというのさ、まじめくさって。人の一生ははかない夢だよ。ひたすら遊び狂えよ。」
現代語訳:『五感で読む閑吟集・風雅と官能の室町歌謡』植木朝子著 より

閑吟集.jpg

中世は戦国動乱の気配が迫りつつある時代でした。『閑吟集』を読みながら、人々がどのように生きたかを想像して、その心によりそってみたいと思います。どんな時代でも、生き方は人それぞれで、想いもいろいろです。次回は『閑吟集』の他の歌もご紹介したいと思います。

資料:
新訂増補『日本歌謡史』高野辰之著(五月書房)
『閑吟集・孤心と恋愛の歌謡』秦恒平著(NHKブックス) 
『閑吟集研究大成』浅野健二著(明治書院)
『五感で読む閑吟集・風雅と官能の室町歌謡』植木朝子著(角川選書)

posted by 事務局 at 00:00| Comment(0) | 日本歌謡物語
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