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2014年05月15日

第18回 室町時代 幸若舞『敦盛』

幸若舞1.JPG

「幸若舞は、中世末の民間に広く流行した民俗芸能。主題となった悲壮な人間葛藤の物語は、戦国武将たちにも愛好され、能楽や歌舞伎に発展した」と東洋文庫426『幸若舞3』に書かれています。

幸若舞『敦盛』は、織田信長が今川勢と戦うため、桶狭間へ疾駆して行く時、「♪人間五十年・・・・・」と謡い舞ったことでよく知られています。

では『敦盛』の一節を読んでみましょう。

♪思へば此の世は常の住みかにあらず。
草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし。
金谷(きんこく)に花を詠じ、
榮花(えいぐわ)は先立って無常の風に誘はるる。
南楼(なんろう)の月をもてあそぶ輩(ともがら)も、
月に先立って有為(うゐ)の雲に隠れり。
人間五十年化天(げてん)の内をくらぶれば、
夢幻(ゆめまぼろし)のごとくなり。
一度(ひとたび)生を受け滅せぬ者の有るべきか。
・・・・・(略)
(東洋文庫426『幸若舞3』 荒木茂著 平凡社より)

歌詞には中国の故事が多く引用されています。その歌詞の意味するところは、次のようなもの。
“思ってみれば、この世は常の住みかではなく、草の葉につく白露のようなもの。水に宿る月よりもなおあやふやである。贅沢にも金谷の園に花を植え、詩をうたい栄華をきわめても、無常の風には逆らえない。南楼で月をめでている友人たちも月に先立ってはかなく亡くなっていくものだ。このように人間の命は無常だ。天の上の上に第五番目の天とよばれる化天というものがある。そこでは、この世の800日が一日で、8000歳の長寿を保つのに、なんとこの世の人間の寿命は50年ほどだ。思えば人間の一生は、ほんの一瞬、まるで夢か幻のようなものだ。この世に生まれた者で死なない者はあろうはずがない。”

信長はこの世に生きるのはたかだか50年と謡い舞い、一瞬一瞬を激しく、真剣に、生きようとしたのではないでしょうか。それが戦国武将としての信長の生き方だったと思われます。

現代に生きる私たちも、この『敦盛』の一節を読むと、大切な人生の一日一日を心して生きていこうと思わざるをえません。

資料:
新訂増補『日本歌謡史』高野辰之著(五月書房)
東洋文庫426『幸若舞3』荒木繁、池田廣司、山本吉左右 訳注(平凡社) 
『信長』秋山駿著 新潮文庫
posted by 事務局 at 15:08| Comment(0) | 日本歌謡物語
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