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2014年04月01日

第15回 鎌倉時代『平家物語』

平安末期から鎌倉時代にかけて日本を二分した源平の戦い。その戦いを題材にしたのが『平家物語』です。当時の琵琶法師は民衆を前に琵琶を弾き、語りました。

♪祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理(ことはり)をあらはす。
おごれる人も久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、偏(ひとへ)に風の前の塵に同じ。
(略)・・・・・

(祇園精舎の鐘の声は諸行無常をつたえ、沙羅双樹の花の色は、さかえる者はかならずほろびる理をあらわしている。権力をおごる人もながくつづかず、みな春の夜の夢のようにはかない。武勇のすぐれた者も最後にはほろびて、風前のちりのようだ。(略)・・・・・

(原文及び現代語訳『平家物語』水上勉著 学研より)

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法師が琵琶をかき鳴らし歌い語り、聴くのはこの戦の悲劇を自ら味わっていた都の人々でした。
石田吉貞著『古典への慕情』の中に、
“さびた琵琶の撥(ばち)の音がひびき、『平家物語』を歌うこえがあれば、どこにでも中世の人々は集まった。そして、息を呑み涙を流してそれを聞いた。平家の興亡が自分たちの興亡であり、平家の宿命が自分たちの宿命であることを、骨身にしみて知っていたからである”
と書かれています。

『平家物語』の中で、最も忘れられない名場面は那須与一の場面です。

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♪与一、鏑(かぶら)をとッてつがひ、よッぴいてひやうどはなつ。
(略)・・・・・
浦ひびく程、ながなりして、あやまたず扇のかなめぎは一寸ばかりおいて、ひィふつとぞ射きッたる。
鏑は海へ入りければ、扇は空へぞとあがりける。しばしは虚空にひらめきけるが、春風に、一もみ二もみもまれて、海へさっとぞ散ッたりける。夕日のかかやいたるに、みな紅(ぐれなゐ)の扇の日の出したるが、しら浪のうへにただよひ、うきぬ沈みぬゆられければ、奥(おき)には平家ふなばたをたたいて感じたり。陸(くが)には源氏、えびらをたたいてどよめきけり。

(『平家物語』梶原正昭著 岩波セミナーブックスより)

与一の放った矢が見事に扇を射ると、今まで戦っていた敵も味方も絶賛の声を上げます。舟に乗っている敵の平家も、舟ばたをたたいて褒め称え、源氏は、箙(えびら:矢を入れて肩や腰につけるもの)をたたいて大歓声を上げたのです。自らの命をかけて矢を放った那須与一の覚悟はいかばかりであったでしょうか。戦いの悲惨さ、空しさ、哀しさをこれほど美しく描いたのは日本人独特の感性が生んだ感動といえます。

資料:
新訂増補『日本歌謡史』高野辰之著(五月書房)
新訂『平家物語』(学習研究社)
古典講読シリーズ『平家物語』梶原正昭著(岩波セミナーブックス)
『平家物語』石母田正著(岩波新書)

posted by 事務局 at 00:00| Comment(0) | 日本歌謡物語
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