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2014年02月15日

第12回 平安時代末期『梁塵秘抄』より

平安時代から鎌倉時代へと激しく時代が移る動乱期。庶民の間に新しい歌謡が生まれました。
今様(いまよう)と呼ばれる歌です。
それは今風の歌、今でいう庶民の流行歌のようなものです。後白河院は今様を大変気にいり、喉が腫(は)れるまで歌っていたそうです。やがてそれらを集め、『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』としてまとめました。このタイトルは歌を聴くと、梁(建物の棟木)の塵まで舞い上がるほどの感動があるよ、というような心を込めてつけられました。「素晴らしい歌の名人が歌うと梁の上にのっている塵も動いた」という故事からきたものです。
これら集められた今様は、とても貴重なもので、中世歌謡の源泉ともいえます。
最も広く知られているのは、遊女が歌った「遊びをせんとや生まれけん」です。

♪遊びをせんとや生まれけむ
戯れせんとや生まれけむ
遊ぶ子どもの声聞けば
わが身さえこそゆるがるれ

「遊び戯れようとしてこの世に生まれて来たのだろうか。遊ぶ子どもの声を聞くと、自分の体までが自然に動き出すようだよ。」
(現代訳:『梁塵秘抄』の世界 桃山晴衣 より)

梁塵秘抄写真.JPG

この歌の中の「遊び」や「ゆるぐ」という言葉は、様々に解釈されています。
「遊び」は、普通「人が楽しく遊ぶ」という意味に解釈します。が、この場合、遊女たちが歌ったものなので、「遊女」の“遊”として解釈するという説もあります。そうすると、遊というのは彼女たちの“なりわい”のことも含んでいるようです。「ゆるぐ」という言葉もまた遊女が歌うと特殊な意味をもち、小西甚一説では「身をゆるがす悔恨を歌ったもの」となります。遊女たちは子どもたちの無邪気な遊び声を聞くと、「ああ、自分はなんというつらい境遇に身を置いて生きているのか、この子どもたちも私のようにはならないでほしい」と願っているようでもあります。

中世の動乱の時代に、遊女たちはどのような境遇で生きざるをえなかったのでしょうか。つらい暮らしのなかで、今様を歌うことが唯一のなぐさめだったのでしょう。
私たちはこの歌から、彼女らの心の奥底にある感情や魂の叫びを読み取ることができるでしょうか。

資料:
新訂『梁塵秘抄』佐佐木信綱校訂(岩波文庫)
『梁塵秘抄口伝集』全訳注 馬場光子(講談社学術文庫)
遊びをせんとや生まれけん〜『梁塵秘抄』の世界  桃山晴衣(ビクター音楽産業株式会社)
posted by 事務局 at 00:00| Comment(0) | 日本歌謡物語
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