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2014年01月15日

第10回 上古時代末:『万葉集』より その3

初夢のベストスリーは「一富士、二鷹、三茄子」。
富士は、日本一高い山。鷹は、高いの語呂合わせ。茄子は「事をなす」に通じ、高い志を貫くということ。この三つの夢を新年の始めにみると、とても縁起が良いとされています。

fuji.JPG

初夢一番人気の富士山は今や世界遺産。およそ50万年前の大噴火で出現したといわれ、その後、度々の大噴火で高くなり、今から1万年から5千年前の間に現在の富士山の形になりました。噴火活動はその後も続き、今から約3千年前(縄文時代晩期)から紀元800年頃(平安前期)までが、もっとも活発でした。
縄文の人々にとって、山の姿が変るほどの大噴火は、部落全体を飲み込み、多くの人々を死に追い込む恐怖の体験であり、富士山への畏怖の心を生みました。そのことが、“神の山”として縄文人の心の奥底に記憶されたに違いありません。その記憶は歌になって蝦夷の人々に伝承されたのです。

遠く大和からこの土地に旅をしてきた山部赤人は、土地に伝わるこの伝承の歌を聞き、大和言葉に変えて、『万葉集』に長歌として残しました。

♪天地(あめつち)の 分かれし時ゆ 神さびて
高く貴き 駿河なる 不尽の高嶺を 天の原 
ふりさけ見れば 渡る日の 影もかくらひ
照る月の 光も見えず 白雲も いゆきはばかり
時じくぞ 雪はふりける 語りつぎ
言ひ継ぎゆかむ 不尽の高嶺は

 
歌の意味は、
「天地のわかれた時から、神らしく高く尊い駿河にある富士の高い嶺を、天遠く仰いで見ると、空を渡る日の光も隠れ、照る月の光も見えない。白雲もその上を通るのをはばかり、不断に雪は降っている。後までも、富士山の高い嶺のことを語りつぎ言いついでゆこう」
(現代語訳:『万葉秀歌』久松潜一 講談社学術文庫)

山部赤人は、春夏秋冬の区別なく頂上に雪の彩る富士を見て、感嘆し有名な短歌を残しています。

♪田子の浦ゆ 打ち出でて見れば 真白にぞ
   不尽の高嶺に 雪はふりける
富士山写真.jpg

旅の途中、視界が開けて仰ぎ見る富士山。その姿は真白き姿。そこには崇高・荘厳で美しい富士山がそびえていたのです。一説にはこの短歌を詠ったのは夏であったといわれています。大和からやってきた赤人にとっては、夏なのに雪の降っている富士山は驚き以外の何物でもなかったでしょう。


資料:
『歳時記・にほんの行事』(池田書店)
『万葉秀歌』久松潜一(講談社学術文庫)
『日本美 縄文の系譜』宗左近著(新潮選書)
新編『和歌の解釈と鑑賞事典』井上宗雄・武川忠一編(笠間書院)
posted by 事務局 at 00:00| Comment(0) | 日本歌謡物語
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