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2013年09月01日

第1回 はじめに

時代によって、いろいろな形で表現されてきた日本人のこころ。
そのこころをもっともよく表してきたもののひとつに歌謡があります。

川口幹夫氏(当財団の前会長・元NHK会長)は、
「有形の文化は、時が経っても残る。しかし、無形の文化は、人がいなくなれば失われてしまう。
邦楽には楽譜がない。
口と耳とで継承される邦楽は、一度絶えてしまったら元には戻せない非常にデリケートなものです。
そのためには、連綿とやり続けなければいけない」
と言っておられました。
財団では、平成10年当時、伝統音楽を広めるため、「音楽のきずな」というイベントを催していたのです。

古い時代に歌われたであろう歌謡の曲そのものは、残念ながら、現在ほとんど残っていません。
誰かが歌い継いできたものだけが残っているだけです。
古代の歌謡は、今では文学として記録されているものから知ることができるのみです。

高野辰之記念館.JPG

故郷の碑.JPG

そのようなことが気になっていた、ある秋晴れの日、長野県中野市にある「高野辰之記念館」を訪ねました。
そこは、「故郷」「春の小川」「紅葉」など、たくさんの小学校唱歌を作詞したことで有名な、
文学博士・高野辰之氏の生涯に関する資料やその類まれなすばらしい業績などの展示がされています。
この高野辰之記念館の副館長さんから、大正時代の終りに刊行された高野辰之著『日本歌謡史』を紹介されました。

ほん1.jpg

この本は日本における歌謡史研究のさきがけです。
すぐさま「これこそ読むべきだ!」と思いました。

早速、購入したのは、昭和56年新訂増補版。
『日本歌謡史』は、古くは『古事記』に記されている
伊耶那岐命(いざなぎのみこと)の歌
“あなにやし 愛女(えおんな)を”
と、
伊耶那美命(いざなみのみこと)の歌
“あなにやし 愛男(えおとこ)を”
から始まっています。
続いて、万葉時代の長歌・短歌・旋頭歌など。
時代を追って、仏會歌謡(声明)・神歌(神楽歌)・平曲(平家物語の琵琶)・猿楽能(謡曲)・
浄瑠璃・歌舞伎歌・盆踊り歌・江戸長唄・常磐津・新内節・どどいつ節の歌・筝曲・浪花節・流行歌など、さまざまな歌謡が紹介され解説されています。
最後には、昭和初期の“一目見た時、好きになったのよ”の「愛して頂戴」や
“肩で風切る学生さんに、ジャズが音頭取る”の「神田小唄」まで、
歌謡の歴史を詳しく楽しむことができます。

読み進むにつれて、「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉があるように、
世の中の変化も、歌を知ることによって理解することができるのだとわかってきました。
これから、この先達の素晴らしい業績『日本歌謡史』を参考にしながら、
『にほん歌謡ものがたり』をお話していきたいと思います。

つづく
posted by 事務局 at 22:56| Comment(0) | 日本歌謡物語
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