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2025年04月25日

論文「知的障害のある女性が性暴力に遭うとき」が掲載されました


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しあわせなみだ理事中野宏美の論文が、4/25発売の、現代書館『季刊 福祉労働177号』に掲載されます。
【『季刊 福祉労働177号』詳細ならびにお申し込みはこちら】

テーマは「女性差別撤廃委員会・日本審査を受けて―障害と交差性」。
2024年に行われた第九回女性差別撤廃委員会の日本審査・勧告の結果を実際に参加されたさまざまな方の声を紹介しています。
中野からは、「知的障害のある女性が性暴力に遭うとき」をテーマに、以下をお届けしています。


☆1.刑法に「障害を知りうる立場に乗じた性犯罪」を盛り込むために

☆2.なぜ知的障害のある女性への性暴力が潜在化するのか
1)「女性」としても「障害者」としても「犯罪被害者」としても、埋もれる存在である
(1)障害女性の中で
(2)犯罪被害者の中で
2)知的障害の特性が司法の基準に合わない
3)「性問題行動」への対応が優先される
(1)職員の知識不足
(2)いわゆる「レイプ神話」へのあてはめ
(3)サバイバル行動の背景にある被害経験

☆3.なぜ加害者は知的障害のある女性を対象とするのか
1)あえて知的障害のある女性を選ぶ
2)事件が潜在化し、裁かれない状況に乗じる
3)支援現場における多角的要因が、複層的に錯綜する
(1)依存ストレスモデル
(2)対価型(見返り要求型)
(3)グルーミング(手なづけ)

☆4.知的障害のある女性とともに、性暴力と対峙するために
1)知的障害のある女性の声を聴く
2)知的障害のある女性への性暴力の実態を、エビデンスをもって明らかにする
3)性暴力を許容する社会構造を解明する


知的障害のある女性が性暴力に遭う背景と課題を、明らかにしています。
ぜひお手に取ってご覧ください。

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2025年01月17日

書籍にコメントが掲載されました

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【1/17:東京&オンライン】パートナーが性被害を経験した男性の会「寅さんのなみだ」

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理事中野宏美のコメントが、書籍に掲載されました。

2019年から朝日新聞で連載されている「子どもへの性暴力」が、書籍になりました。
連載第7部では、障害のある子どもへの性暴力が、取り上げられ、中野のコメントが紹介されました。
中野からは、障害特性や、障害児ならではの「育ち」が、性暴力を経験するリスクを高める可能性を、指摘しています。
ぜひ書店でお手に取ってご覧ください。

書籍『ルポ 子どもへの性暴力』
朝日新聞取材班 著
定価:2200円(税込)

☆目次
まえがき 
1章 語り始めた当事者たち
2章 消費する社会
3章 男の子の被害     
4章 家の中で
5章 立場を利用して    
6章 脅かされる日常
7章 子どもたちの間で   
8章 狙われる障害
9章 加害を考える     
10章 治療とケア    
あとがき

【書籍『ルポ 子どもへの性暴力』はこちら(中野のコメントは「8章 狙われる障害」に掲載されています)】
【中野のコメントが掲載された記事「信頼していた施設で性暴力に遭った娘 重度障害、つけこまれた特性」はこちら(有料会員限定記事です)】


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2024年07月16日

大人と子どもと一緒に学びあえる本〜しあわせなみだをご紹介いただきました〜


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【パートナーが性被害を経験した男性向けチャットボット「Two Drops」リリースは7/25まで】

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理事中野がオンラインサロン『LIVE MY LIFE』主催イベント「障害がある子どもを性犯罪と虐待から守るために『まず大人が学ぼう会』」でご一緒したやまがたてるえさんが、書籍を出版されました。
書籍では、しあわせなみだもご紹介いただきました。
そこでやまがたさんに、書籍についてご寄稿いただきました。


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【『10歳までに知っておきたい 子どもを一生守る「からだ・こころ・権利」の話』詳細ならびに購入はこちら】
【7月21日に開催される出版記念イベント詳細ならびにお申し込みはこちら】


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☆子ども(特に障がいのある子ども)への性暴力について
今回書籍の出版にあたり、相談先、情報提供のページに、NPO法人しあわせなみださんのご協力を得ることができました。本当にありがとうございます。

2020年ころより、内閣府の性暴力対策の動きもあり多数の性教育に関連する書籍が発売されている中で、今回の書籍を作るにあたり、共著者の渡邉さんの思いの中に「特別支援学級の生徒さんと先生が学ぶ教材にも活かせるような内容にしたい。」という思いがありました。
すべての子ども達、そして、障害のあるお子さんたちに、体のことをわかりやすく知ってもらうことは何よりも大切なこと。体の名前を覚えやすいようなワークシートを作成し、学校などの現場でも活用してもらえたらと思ってのデザインイラスト構成になっています。
子ども達が困ったことを一言でも「言葉」にできること、また、体や心のことを大人と一緒に考えることで、何かの変化に気づけたり、体についてポジティブで健康的な側面に注目していただける、そのきっかけや学びのサポートになれればと思ってます。

また、今回相談先にお願いしたのも、どんな状況の親子さんであっても情報やサポートが受けられることへの安心感をもっていただきたい。そのような思いもあります。
書籍は総ルビ、イラスト入りで、読みやすい工夫もしています。


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☆読者へのメッセージ
親子はもちろん、保育園、幼稚園、子ども園や学校、支援学校などで子ども達と大人たちが一緒に学びあえるような本になれば、と思いを込めて作成しました。

後半は心について、境界線や同意についても書かれています。
また大人が子どもと一緒にワークをしている中で、「そんなのだめよ」とついつい、言いたくなるようなシーンもグッと堪えて、子どもたちの行動や考えを受けとめて学ぶ態度などについても触れています。
からだの権利を知って、お互いのことを大切に思うことや、日頃の子ども達の考えを肯定的に受け入れる態度に触れるような、新しい性教育の本としてご活用いただければ幸いです。


☆プロフィール
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やまがたてるえ
助産師/看護師/保育士/心理カウンセラー/チャイルド・ファミリーコンサルタント
地域子育て支援をしながらWEBでの発信から書籍「13歳までに伝えたい女の子の心と体のこと」を出版、その後7冊の本を出版。
NPO法人子育て学協会理事 松戸市教育委員会教育委員


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2024年01月12日

震災関連書籍のデータを公開しました


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【災害時の心のメンテナンスならびに性暴力撲滅に向けた取り組み】
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1/1、能登半島地震が起きました。
心よりお見舞い申し上げます。

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被災地の支援活動に役立てていただくため、理事中野宏美が執筆した『Nursing Today ブックレット・18 災害と性暴力』の「医療従事者だからできること、医療従事者に期待すること──災害時の性暴力を撲滅するために」が、期間限定で無料公開されました。
ぜひご活用ください。

【日本看護協会出版会が公開した震災関連書籍はこちらです】
※公開期間は2024年3月31日までです


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2023年01月17日

「災害と性暴力」出版!


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<残席わずか>【1/28:オンライン】「すべての人が幸せに過ごせる社会のために〜性暴力ゼロを目指して〜」

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今日1/17で、阪神・淡路大震災から28年となります。
また2023年は、関東大震災から100年という、節目の年です。

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理事長中野が、書籍『災害と性暴力 性被害をなかったことにしない、させないために。』に執筆いたしました。
「医療従事者だからできること。医療従事者に期待することー災害時の性暴力を撲滅するためにー」として、加害者は、支援者や被害者の困難につけ込むこと、平時の取り組みが災害時に生きること等を踏まえ、災害時だからこその、医療従事者の立場を生かした取り組みへの期待を、まとめました。

【日本看護協会出版会Nursing Today ブックレット 18『災害と性暴力 性被害をなかったことにしない、させないために。』詳細ならびに購入はこちらです】


そこで本日のブログでは、災害時の性暴力について、ポイントをお伝えします。

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☆1)なぜ災害時に性暴力が起こるのか

災害は、街並みを変えます。
がれきが散乱し、街灯が消えます。
結果として「死角」が増加します。
ここが性暴力の現場となります。

また、ボランティアをはじめとする、住民以外の人々が、数多く流入します。
その中には、加害を目的とした人も、紛れ込みます。

加えて、余震や慣れない避難所での生活は、ストレスを増幅させます。
その発散の矛先が、弱い者への性的攻撃として現れる可能性が、指摘されています。

こうして、災害の渦中で、性に対して暴力を振るう状況が、生み出されます。


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☆2)日本における災害時の性暴力防止に向けた取り組み

阪神・淡路大震災では、性暴力を経験した人々の声が「デマだ」と打ち消される出来事がありました(※1)。
そこで東日本大震災後、「東日本大震災女性支援ネットワーク」が設立され、支援団体等への調査を通じて、被災地で性暴力が起きていたことを、立証しました。
東日本大震災では、しあわせなみだを含め、多くの民間団体が、被災地での性暴力防止に向けた取り組みを展開。
経験を通じて得られた知見やノウハウは、内閣府のガイドライン等に反映されています。


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☆3)災害時の性暴力をなくしていくために

平時に困難なことは、災害時には一層困難です。
すなわち、災害時の性暴力をなくすには、平時から、性暴力を撲滅する風土を醸成することが重要です。
性暴力被害者ワンストップ支援センターをはじめとする相談機関の普及、性暴力被害者に対するバッシングへの適切な対応、Active-Bystander(行動する傍観者)を増やす、といった、「今自分にできること」を増やしていこう、というマインドが、求められています。


※1小川たまか「災害とメディアーなぜ阪神・淡路大震災で性暴力被害はデマとされたのかー」日本看護協会出版会Nursing Todayブックレット 18『災害と性暴力 性被害をなかったことにしない、させないために。』


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2022年11月15日

「AERA」にコメント掲載!

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11/14発売の「AERA」11/21号に、しあわせなみだ理事長中野と理事千谷のコメントが掲載されました。
特集「セクハラを許さない」で、中野からは「回復」について、千谷からは「心の傷」について、お話しています。

性暴力を経験された方、性暴力撲滅や性教育の分野で活躍されている皆さんが、多数登場しています。
ぜひご覧ください。

【「AERA」2022年11月21日号詳細はこちらです】

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2022年10月07日

子どもへの性暴力は防げる!


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【10/16:オンライン】障害がある子どもを性犯罪と虐待から守るために『まず大人が学ぼう会』

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2012年に開催したイベント「男だって性暴力をゼロにしたい!」にご登壇いただいた、精神科医の福井裕輝さんが、書籍を出版されました。
書籍では「参考サイト・団体案内」として当団体をご掲載いただきました。
また本文では、「障がい者を対象とした性暴力」について取り上げています。
そこで今回のメールニュースでは、福井さんにご寄稿いただきました。

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【『子どもへの性暴力は防げる!』詳細はこちらです】


☆書籍の紹介

このたび書籍「子どもへの性暴力は防げる!」を刊行しました。
子どもへの性暴力対策は私が精神科医になったばかりの頃から、長年注力しているテーマです。被害を受けた子どもの診療経験を通じて、「被害者を生まないためには加害者をなくすしかない」と決意して、海外の実態や治療について研究し、2011年に性障害専門医療センター(SOMEC)を立ち上げ、加害者の治療に携わってきました。

書籍では、それらの経験をもとに、子どもに対する性的嗜好から加害の傾向、加害者に対する治療法、保育・教育現場などにおける対策、加害・被害が起きた時の周囲の対応のポイントまで解説しています。
特に加害については、親による性的虐待、保育士や教員などの立場を利用した加害、近年増加しているSNSを通じた加害、盗撮、デジタル加害など、さまざまな関係性・手法を取り上げ、子どもへの性暴力を未然に防ぐための啓発に広くお役立ていただけるように心がけました。


☆障がい児への性犯罪について

加害者の診療を積み重ねる中で、障がい児を狙ったケースにも残念ながら数多く対応してきました。
「抵抗が少ない」といった理由で加害に及び、征服欲などが重なって加害を繰り返しやすい傾向がみられます。
ただ、その危険性がまだ日本であまり認識されていないと思います。
本書でぜひ知っていただきたいと考え触れましたが、模倣犯が出る恐れがあるため具体的な事例や手口などは掲載を控え、社会の中で障がい児を守っていかなければならないというメッセージにとどめました。

ちょうど刑法の見直しも審議されている時期です。
本書も障がい児への性犯罪の危険性を多くの方に知っていただき、対策を検討する上での一助となればと願っています。


☆読者へのメッセージ

海外に比べて日本では性暴力の対策や啓発が遅れています。
ただ、個人レベルでは、犯罪防止や再犯予防に強い関心を寄せる人も少しずつ増えていると感じます。

日本全体で対策を進めていくためには、まずは広く一般の方に身近な問題として捉えていただき、活発な議論になることが必要です。その先に性暴力のない未来があると信じています。


☆プロフィール

福井裕輝(性障害専門医療センター〈SOMEC〉代表理事・精神科医・医学博士〈京都大学〉)
米国インディアナ州生まれ。1999年京都大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院精神科、京都医療少年院、国立精神・神経センター(国立精神・神経医療研究センター)などを経て、2010年にNPO法人性犯罪加害者の処遇制度を考える会、2011年に性障害専門医療センター(SOMEC)を設立。


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2022年06月24日

書籍にコメントが掲載されました


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[8/6:オンライン]―共に変えよう― これからのソーシャル・ジャスティス 連携ダイアローグ2022

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読売新聞取材班『わいせつ教員の闇』に、理事長中野のコメントが掲載されました。

読売新聞特集記事「許すな わいせつ教員」を書籍化したもので、学校が抱える課題、ならびに、しあわせなみだもヒアリングに参加した「わいせつ教員対策法」成立までの過程を追っています。

コメントでは、障がい児が通う放課後デイサービスでの性被害の多くが潜在化していることを踏まえ、実態を明らかにする必要性をお話しています。
ぜひご一読ください。

読売新聞取材班
『わいせつ教員の闇 教育現場で何が起きているのか』
中公新書ラクレ
840円プラス税
【書籍詳細はこちらです】


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2022年03月15日

『児童福祉施設における性的問題対応ハンドブック』出版!


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理事長中野が執筆を担当した書籍が、3月下旬に発売されることになりました!
【『児童福祉施設における性的問題対応ハンドブック』詳細はこちらです】
【ご予約はアマゾンで受付中です】


タイトルは『児童福祉施設における性的問題対応ハンドブック』。
虐待等があり、親と暮らすことが困難な子どもたちが生活する「児童養護施設」や、適切な養育環境が必要な子どもたちが生活する「児童自立支援施設」等における、性的問題への取り組みを、まとめました。

中野は第11章「多機関連携による支援と予防――性的被害経験後の人生に寄り添うために」を担当。
しあわせなみだが実施してきた、施設で暮らす子どもや施設職員を対象とした講座から見えた課題を、提起しています。

本書の編集を担当した、性教育研究会代表で、東京経営短期大学こども教育学科教員の小木曽宏さんに、ご寄稿いただきました。

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☆1)児童福祉施設における「性的問題」の現状について
近年、児童福祉施施設において「性的問題」が多く発生してきています。
厚生労働省の調査によれば、全国の児童養護施設だけでも回答した763施設で、687件発生していることが報告されました(2018年3月)。
しかし、これは「氷山の一角」と言わざるをえません。
なぜならば、児童自立支援施設、知的障がい児施設は含まれていないからです。
そして、今まで施設内で起きている「性的問題」は『恥ずかしいこと』『特別なこと』『外に出してはならないこと』という施設自体の『体質』が、「問題」を先送りし、『深刻化』させてしまったとも言えます。


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☆2)「性教育研究会」の発足
そこで、児童養護施設の有志が集まって2009年に「性教育研究会」が発足しました。
前述のような状況を抱えながら、その実態すら分からず、まして「対処方法」は見つからないままだったのです。
私たちも暗中模索する中で、近接領域の方々の協力や「叡智」を結集する中で、この「糸口」を探っていくことに辿りつきました。


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☆3)「NPO法人しあわせなみだ」中野宏美さんとの出会い
活動していく中で、児童養護施設一宮学園の山口修平さんを介して、中野さんと出会いました。中野さんたちの活動が、実は児童福祉施設の子ども達と大きく関わっていると思いました。
例えば、施設に来る子ども達の中には、親・きょうだいからの「性的暴力」を受けている子も多くいます。
さらに、前述したように、施設内「性的問題」も多くなっています。
そして、施設を退所した後に「性的被害」に合うこともあります。
そこで、中野さんには、毎年、開かれる「学術大会」で「分科会」を担当して頂いています。


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☆4)「性教育研究会」と「しあわせなみだ」が目指すもの
第一に施設に「性的被害」に傷つき、入所して来た子ども達に「寄り添う」ことが大切です。
第二に施設内で起きる「性的問題」が起きないための「予防教育」や起きてしまった後の「回復のケア」が必要です。
そして、施設を退所した後に、性的被害に遭わないために何をすべきなのか。
もしも、「性的被害」を受けた時に、どうすればよいか。
このほとんどが、「しあわせなみだ」が取り組んでこられた実践につながると思います。


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☆5)出版に対する思い
本書は中野さん始め多くの実践者にもご執筆頂いています。
本書の出版が契機に、多機関と協力しながら、いつか施設で暮らす子ども達、施設職員とともに「性暴力ゼロ」社会の実現を目指して行きたいと改めて意を強くしました。


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(向かって左から2番目が小木曽さん、一番左が中野)
☆プロフィール
小木曽宏(おぎそ・ひろし)
1954年、東京生まれ。児童自立支援施設、児童相談所、大学教員、児童養護施設長を経て、現職


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2022年02月22日

「あなたの傷を知恵に変えなさい」


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【「障がいを知りうる立場に乗じた性犯罪」創設を求めるオンライン署名賛同はこちら】

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しあわせなみだは2017年の刑法性犯罪改正時、他3団体とともに「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」を立ち上げ、改正を後押しするための、議員訪問やキャンペーン等を展開しました。

このプロジェクトの活動が、書籍でご紹介いただけることになりました。
そこで今回のメールニュースでは、著者の小川たまかさんに、ご寄稿いただきました。


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【書籍『告発と呼ばれるものの周辺で』詳細ならびに購入はこちら】


***

こんにちは。ライターの小川たまかと申します。
今回は中野さんにご紹介いただき、こちらに寄稿させていただきます。

私は2015年から性暴力について取材を始め、かれこれ7年になります。
とはいえ最初は、この問題について自分が深く取材・執筆するようになるとはまったく考えていませんでした。
書かなければいけないことだけれど、取り組み始めたら戻れなくなる、そんなふうに心のどこかで思っていた気がします。

きっかけは、あるネットニュースを見たことでした。
その記事では女性専用車両が必要だと思っている60代女性がアンケートで7割を超えていることを挙げ、記者が「痴漢も人を選ぶと思いますけどね」と、からかうような言葉を書いていました。

痴漢って多くの人が悩まされてきた性暴力なのに、どうしてこんな書かれ方をしなければいけないんだろう。
そう思ったことから、自分が10代の頃に通学電車の中で経験した痴漢被害について具体的にブログに書きました。

そのブログを読んでくれた人たちが記事を拡散してくれて、「自分もこうだった」「小学生の頃から被害にあっていた」など、それぞれの被害経験を書いてくれる人もいました。
一方で「こんなに被害に遭うなんてこの人がおかしい」といった二次加害も、少なからずありました。
「痴漢被害について書くなら痴漢冤罪も同じように調べろ」としつこく絡まれたこともありました。

その後、2016年以降は、性犯罪刑法について取材することが増えました。
これも、自分がまさか司法なんて難しいことを取材するようになるとは思っていませんでした。

この大変な問題に飛び込むことができたのは、当時2017年の改正に向けて活動されていた、しあわせなみださんなど「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」の皆さんの熱意を間近で見たからだと思います。

それまでの私は、法律というのはすごく頭の良い人たちがさまざまなことを考えてまとめて、良きようにしてくれているものなんじゃないかという漠然としたイメージを持っていました。
自分の生活から司法というものまでは、それなりに遠い距離があると思っていました。

社会に問題を伝えるためのイベントや署名、ロビイング活動を通して、私は自分が抱え込むことになった被害を知恵に変えている人の存在を知りました。彼女ら彼らが、心ない人たちからの攻撃を受けながらも前へ進もうとする姿を見て、自分もこちら側にいたいと思いました。
※「あなたの傷を知恵に変えなさい」は性虐待の当事者であるオプラ・ウィンフリーの言葉。

2022年2月末に、新刊『告発と呼ばれるものの周辺で』が発売となります。
この本の中で、2017年の性犯罪刑法の改正と、その後の当事者・支援者たちの活動について触れています。

性暴力の問題はときにとても複雑で、理解してもらうのが難しいと感じることも多々あります。苦しくなることもツラくなることもしょっちゅうあります。
けれど、ときどき休んで、休んでいる間は誰か他の人が動いてくれていると信じて、適度に体の力を抜いて、粛々と歩いていくこと。そのやり方を学んだのがここ数年の自分であるようにも思います。

誰かの行動が、誰かが投げた言葉が、今ではなくても、たとえ10年後でも、誰かまだ見ぬ人につながること。それを信じて、これからも取材と執筆を続けていければと思っています。


☆プロフィール
小川たまか(おがわ・たまか)
ライターでフェミニストです。
主に性暴力、働き方、教育などの取材・執筆をしています。
2022年2月新刊『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)、その他『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)、共著『私は黙らない性暴力をなくす30の視点』(合同出版)。
【小川たまかのたまたま生きてる】
【たまたま通信】


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