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2023年02月07日

刑法性犯罪改正に向けた要綱案が公開されました


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2/3に開催された、法制審議会第14回会議で、刑法性犯罪改正に向けた要綱案が公開されました。
要綱案を解説します。


☆1)暴行・脅迫要件ならびに心神喪失・抗拒不能要件の見直し
これまでは、被害者が意識のない状態、もしくは加害者から暴力的言動があったことが証明されなければ、罪に問うことができないとされてきました。
これらの定義は、被害の衝撃で動けなくなったり、命を守るために、(抵抗ではなく)懇願するといった「性暴力の実態」にそぐわない、とされ、要綱案では、新たな行為や事由が提案されました。
事由の1つに「心身に障害があること」が盛り込まれています。

☆2)被害者がわいせつ行為を認識できない場合
被害者に障がいがあったり、年少であることにより、その行為が「わいせつである」と理解できない場合についても、罪に問えることが、提案されました。

☆3)年齢差に乗じた行為
子どもは成人と比較して、性に対する理解や経験に乏しいため、年長者が容易に行為に及ぶことができる実態が、指摘されていました。
要綱案では、被害者が13歳から15歳の場合、5歳以上年齢差のある者による行為を、罪に問えることが、提案されました。

☆4)配偶者であることに乗じた行為
配偶者間においては、DV(配偶者等による暴力)や、避妊に協力しない性行為による中絶等が、問題となっています。
要綱案では、配偶者間であっても、強制性交等や強制わいせつを問えることが、確認されました。

☆5)若年層につけ込む行為
子どもは経済的自立が困難な立場にあることから、大人の保護の下で生活する必要があります。
そこにつけ込み、脅す、騙す等によって、わいせつ行為をさせたり、金銭等の報酬で誘惑し、性的な写真を送信させる、といった事態が、把握されています。
これらの行為について、新たな罪の創設が、提案されました。

☆6)時効の見直し
幼少期に性暴力を経験した場合、「それが性暴力である」と認識できるまでに時間がかかります。
また、裁判の仕組みを知り、裁判を起こすためには、ある程度の知識や能力が必要です。
このため、被害者が「裁判を起こしたい」と思った時には、既に時効を迎えていた、という事態が、発生しています。
要綱案では、被害に遭ったのが17歳以下であった場合、時効までの期間が加算されることが、提案されています。

☆7)事情聴取の証拠採用
障がいのある人や、子どもは、「誘導に従いやすい」「慣れた環境でなければ、話すことが難しい」等の特性を持っています。
このため、初めて訪れる裁判所で、初対面の裁判官に、事件の詳細を証言するハードルは高く、裁判を諦める人もいました。
要綱案では、裁判の前に、適切な環境で実施された事情聴取を記録した媒体を、裁判で証拠として採用する特則の新設が、提案されました。

☆8)性的写真や動画の撮影
本人の同意なく性的行為を撮影され、後々脅迫の道具として使われる事件が起きています。
また、アスリートを性的な意図で盗撮し、画像を拡散される事態に対し、競技団体も、声をあげるようになりました。
要綱案では、こうした撮影や、記録媒体の保管、提供等を取り締まり、没収・処分できる罪の創設が、提案されました。


法制審議会でまとめられた要綱案は、法務大臣に答申されます。
その後内閣法制局による、文言等の審査を経て、閣議決定されます。
内閣から国会に提出され、衆議院、参議院で可決成立すれば、法律として公布されます。
【「法律ができるまで」はこちら】

刑法性犯罪改正案は、早ければ、2023年の通常国会で、審議入りする見通しです。

しあわせなみだでは、障がいのある人を取り残さない刑法性犯罪の改正に向け、声を届けてまいります。
応援よろしくお願いします!


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2023年02月03日

2022年の強制性交等罪は1656件


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警察庁は「令和4年の犯罪情勢」を公開しました。

2022年の強制性交等の認知件数は1,656件と、過去10年で最多となりました。
強制わいせつは4,708件と、3年連続で増加しています。

またストーカー事案の検挙件数は1,639件、配偶者からの暴力事案等の相談等件数は84,493件、児童虐待の通告児童数は115,730件と、いずれも前年より増加しています。


新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの生活様式は大きく変わりました。
その中で、性暴力をはじめとする暴力をどのように防ぐことができるか、この報告を機に、多くの人が考える機会を持てるといいですね。


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2023年01月20日

法制審議会から刑法性犯罪改正試案が出ました

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<理事長中野が執筆!>
【日本看護協会出版会Nursing Today ブックレット 18『災害と性暴力 性被害をなかったことにしない、させないために。』】


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1/17に開催された法制審議会で、刑法性犯罪改正試案が提出されました。


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被害者に障がいがある場合については、以下が盛り込まれました。

【第1-1 暴行・脅迫要件、心神喪失・抗拒不能要件の改正】
▼「心身に障害があること」によって「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」「にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の拘禁刑に処するものとする」。

【第2-2 被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則の新設】
▼「心身に障害がある」被害者の「供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体は、」「供述者の不安又は緊張を緩和することその他の供述者が十分な供述をするために必要な措置」が「採られた状況の下にされたものであると認める場合であって、聴取に至るまでの情況その他の事情を考慮し相当と認めるときは、」「これを証拠とすることができるものと」する。

しあわせなみだが求めた「障がいを知りうる立場」に乗じた性犯罪は、残念ながら盛り込まれていませんが、「被害者に障がいがある」ことに乗じた性犯罪については、大きな前進がありました。


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法務大臣への答申を経て、早ければ2023年の通常国会で審議入りとなります。
引き続き声を届けてまいります。
応援よろしくお願いいたします。


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2022年11月01日

「MenWithWomen」キャンペーンに賛同!


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【11/5:東京】刑法性犯罪をUpdate!映画上映会

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11/5開催「刑法性犯罪をUpdate!映画上映会」にご登壇いただく勝部元気さんが、ジェンダー平等社会にふさわしい男性のあり方を普及・推進するプロジェクト「MenWithWomen」を立ち上げました。
しあわせなみだ理事長中野も賛同しています。

男性こそ当事者として主体的に女性差別の解消を推進することを目的としたソーシャルアクションで、以下2つのビジョンを掲げています。
「ジェンダー平等社会にふさわしい男性になろう!」
「そのような男性を”あるべき男性像”として広めていこう!」
そしてビジョン実現に向けた「ジェンダー平等社会にふさわしい男性のあり方・MenWithWomen 行動基準15ヶ条」が公表されています。

11/19は「国際男性デー」。
ジェンダー平等が広がることは、性による暴力撲滅に繋がります。
ぜひ応援してください。

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2022年03月11日

「誰一人取り残さないジェンダー視点で考える防災」受講生によるパネルができました


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【[4/16:オンライン]パターナリズムが暴力に変わる時〜職業的地位に乗じた性犯罪〜】

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今日3月11日は、東日本大震災から11年です。


昨年9月に理事長中野が登壇した、岡山市男女共同参画社会推進センター「さんかく岡山」主催、さんかくカレッジ専門コース「誰一人取り残さないジェンダーの視点で考える防災」。
受講生がパネルを作成してくれました。

災害時の性暴力については、起きる背景、避難所でできる取り組み、平時からの啓発等が、わかりやすくまとめられています。
ぜひご覧ください。

【パネル紹介ページはこちらです】


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2022年03月01日

ウェブメディアで紹介されました


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【「障がいを知りうる立場に乗じた性犯罪」創設を求めるオンライン署名賛同はこちら】

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ウェブメディア『me and you <little magazine and club>』の「性暴力・性犯罪に関するリンク集」で、しあわせなみだをご紹介いただきました!

「me and you 」は、「わたし」と「あなた」という小さな主語を大切にしながら、小さな違和感も幸福もなかったことにせず、個人的な想いや感情を尊重し、社会の構造まで考えていくメディア・コミュニティです。
ぜひご覧ください。

【「me and you 」ウェブサイト】
【しあわせなみだ掲載ページはこちら】


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2022年02月08日

2021年の犯罪統計を解説!


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2021年の犯罪統計が公開されました。
【警察庁『犯罪統計/令和3年1〜12月犯罪統計【暫定値】』はこちらです】
【長官官房『令和3年の犯罪情勢』はこちらです】

そこで今日のブログでは、この犯罪統計から、特に性暴力関連について、解説します。


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☆1)性犯罪の認知件数は増加している
2021年の強制性交等の認知件数は1,388件と、昨年の1,332件から56件増えています。
また強制わいせつの認知件数は4,284件と、こちらも昨年の4,154件から130件増えています。
実は、刑法犯認知件数の総数は、2003年以降、一貫して減少しています。
特に、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2019年以降は、外出自粛により、人出が減ったこと等で、街頭での犯罪が大きく減少し、結果として刑法犯が減っています(2019年748,559件、2020年614,231件、2021年568,148件)。
他の犯罪とは異なる、性犯罪の傾向を、把握していく必要があります。


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☆2)性犯罪はあらゆる世代、性別で起きている
性犯罪の被害者のうち、暴行脅迫がなくても罪に問える12歳以下の被害者は、強制性交等が171人、強制わいせつが748人でした。
一方、65歳以上の高齢者についても、強制性交等が11人、強制わいせつが49人となっています。
また、男性については、強制性交等が58件、強制わいせつが173件報告されています。
性暴力の被害者は「女性、子ども」というイメージが先行しがちです。
しかし性暴力は、「関係性に乗じた性的支配」であり、弱い立場に置かれることにより、あらゆる人が被害を経験するリスクを持っています。
実態を踏まえた対応を、検討する必要があります。


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☆3)被害者に障がいのある性犯罪は不明
性犯罪には、被害者が「心神喪失若しくは抗拒不能」であった場合、「準強制わいせつ」もしくは「準強制性交等」として、暴行脅迫がなくても、罪に問うことができます。
被害者に障がいがある場合、「心神喪失」に該当する可能性があります。
しかし「犯罪統計」では、「準強制わいせつ」は「強制わいせつ」に、「準強制性交等」は「強制性交等」に含まれ、個別の件数は公表されていません。
また、性犯罪を含め、被害者に障がいがある犯罪の件数も、統計がありません。
障がいがあることにより、社会的に弱い立場に置かれ、性犯罪等の被害に遭うリスクが高まる可能性が、指摘されています。
まずは実態を明らかにする統計が取られることが、期待されます。


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しあわせなみだでは、刑法に「障がいを知りうる立場に乗じた性犯罪」創設を求める署名を実施しています。
ぜひご賛同ください。
【「障がいを知りうる立場に乗じた性犯罪」創設を求める署名賛同はこちら】


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2021年07月16日

災害時の性暴力について


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【8/10まで限定配信】「男性から見える暴力の現状」

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各地で豪雨による災害が相次いでいます。

災害時には、性暴力が発生するリスクを高める可能性、そして潜在化させる可能性が指摘されています。
しあわせなみだでは、災害時の性暴力に関する情報を発信しています。
ぜひご覧ください。

■しあわせなみだウェブサイト「震災時における性暴力」

■日本自治体危機管理学会『自治体機管理学会誌』掲載論文「災害時の性暴力とは〜見えないリスクを可視化する〜」

■性の健康医学財団発行『性の健康』Vol.17 no.3掲載論文「災害時の性暴力撲滅に向け医療従事者に期待すること」


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2021年07月02日

【8/22:東京】DV被害者対応スキルアップ研修会


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【6/20-7/19限定配信】動画「なかったことにされる性暴力」視聴のお申し込みはこちら

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ご縁をいただいているメンタルサービスセンターが、研修を開催しますので、ご案内します。

***

DV被害者対応スキルアップ研修会 ⇒被害者ファーストの支援を探求する.

近年、DV防止法が施行されるとともに、医療・福祉・相談などの現場では、電話相談や面接を通してDV被害者に対応する機会が増えています。
被害者が同じような質問を何度も相談員に尋ねてきたり、被害者の迷いが多くなかなか行動につなげられない、など、対応に苦慮する経験を持つ援助職の方も多いはずです。

この研修会では、DV被害者ケースに必要な見立ての枠組みと対応技術を提供します。
講義だけでなく、講師によるデモンストレーション、ロールプレイ実習もふんだんに取り入れ、次の日から現場で役立つノウハウが満載です。
日本でこれほど詳細に具体的対応を学ぶ機会は多くはありません。
ぜひご参加下さい。


◇◆内・容・項・目◆◇                      
DVの本質/被害者の心理機制/セルフケアの工夫/被害者の隠れたニーズをつかみ、実現する援助技法/被害者ファーストを妨げる無意識バイアス/リフレイミングの応用/他


〔日時〕
2021年8月22日(日) [10:00〜16:30]

〔受講費〕
予約7700円(当日8800円)→広めの会場で定員12名.

〔会場〕
新宿区内研修施設(JR飯田橋駅数分)

〔講師〕
草柳 和之 (大東文化大学非常勤講師)
✿平成27年度・社会貢献者表彰を受賞✿

〔主 催〕
メンタルサービスセンター
Tel.03-3993-6147、070-5016-1871
〒176-8799 練馬郵便局留  

〔申込方法〕
まず電話連絡でご予約いただいた後、受講費の振込みをして下さい。
入金確認後に、参加者へ会場案内を致します。
[みずほ銀行 桜台支店 (普)1438903 名義:メンタルサービスセンター 草柳和之]

〔備  考〕
※この研修会の性質上、DV加害経験のある方のご参加は、ご遠慮いただいております.
※納入された受講費は,主催者の都合による不催行の場合を除き,返却しかねますことをご了承下さい.


【講師紹介】
●草柳 和之
▲メンタルサービスセンター代表・カウンセラー. 長年,DV被害者支援に携わると同時に、日本で初めてDV加害者更生プログラムの実践と研究に着手、以来20年以上にわたる。その活動は新聞・TV・雑誌等を通じて広く紹介される. 日本カウンセリング学会認定・カウンセリング心理士.
▲大東文化大学非常勤講師. 日本カウンセリング学会東京支部会・運営委員. 著書に『ドメスティック・バイオレンス』(岩波書店), 共著に 『標準 音楽療法入門 下』(春秋社), 『平和を創る心理学』(ナカニシヤ出版)、他多数.
家庭裁判所・自治体・弁護士会・大学・学会等から,幅広く講演や研修会の依頼を受けており, その優れた研修指導は多くの人々から支持されている.長年のDV問題の先駆的な取り組みが評価され、社会貢献支援財団より、平成27年度社会貢献者表彰を受賞した。
▲アマチュアながらピアニスト・作詞家の顔も持つ、異色の心理臨床家.世界的に活躍する作曲家・野村誠氏にDV根絶を願うピアノ曲を作曲依頼し、自らピアノを弾き、音楽によるDV防止キャンペーンを展開している。DV問題の講演、平和のための音楽会、ライブハウスのランチタイムコンサート、学会のミニコンサートなど、幅広い機会でピアノ演奏を行い、《世界の平和は家庭から》を訴えてきた.


〔参加者の感想〕
●弁護士 ♂              
「私が全て悪いんです」「夫のもとに帰らなければならないんです」と言う被害者に自分の考えを押しつけるのではなく、被害者が自分から変われるよう援助することの大切さを学びました。カウンセリングの技法が中心でしたが、法律相談の場面でも生きてくるヒントをいくつも頂きました。

●一般病院・ソーシャルワーカー ♀    
研修会に参加して、今まで当然と思い込んでいたこと、そして、そのことに何かしっくりこないと感じていたことに、新たな視点で気づくことができました。研修の内容も、参加者が技術を身につけられるような体験型になっており、1回の研修で、学んだ技術を自分のものにすることは難しいですが、得られたものは大きかったと思います。

●精神科クリニック勤務・精神科医 ♂     
以前から、DV被害者の理解を深め適切な治療を導入するのは、重要な課題と考えていました。孤高の心理臨床家とも思える講師が提供する本研修会では、DV問題を考える基本概念の説明から様々な技法を駆使したロールプレイの実体験まで密度濃く学習できました。これらの対処法を自分のものにするには研修時間をもっとほしいくらいで、研修はあくまで出発点に過ぎず、試行錯誤を繰返してDVの診療を展開していきたいと考えています。


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2021年03月09日

障害のある性暴力被害者へのICTを活用した相談支援


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【「障がいを知りうる立場に乗じた性犯罪」創設を求めるオンライン署名実施中!】

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3月6日に開催された、日本社会福祉学会関東部会研究大会で、東洋大学岩田千亜紀さんが、しあわせなみだが調査に協力した「障害のある性暴力被害者へのICTを活用したソーシャルワーク支援の検討」の報告を行いました。
【抄録集はこちらです(岩田さんの論文はp.3-4です)】

そこで今回は岩田さんに、調査について、ご寄稿をいただきました。

***

読者の皆様は、「健常者よりも障害者では、性暴力被害の割合が高い」ということは既にご存じかと思います。
2020年6月に政府が示した「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」でも、「障害者が被害を受けることが多い一方で、被害が潜在化しやすい」との記載がありました。
そして、「障害者や外国人などの多様な相談者への対応を推進する」ために、メール相談やオンライン面談などのICT活用の推進が盛り込まれました。

そこで、障害のある性暴力被害者に対するICTの活用の実態と課題を明らかにするために、昨年の8月〜9月に支援者へのインタビュー調査などを実施しました。
その結果、障害のある性暴力被害者への相談支援では、ICTを活用することは非常に有益であるということが分かりました。
障害がある場合には、相談しても理解してもらえなかった経験や、言葉でうまく伝えられないことがあります。
そのため、コミュニケーションに苦手感を持つ障害者にとっては、SNSなどの文字情報を活用できるICTによる相談は、情報を伝えることにより大きな効果をもたらします。
つまり、ICTの活用は、相談支援への物理的アクセシビリティを高めることができます。

しかし、いくつか課題もあります。
たとえば、障害のある性暴力被害者では、支援に繋がりにくいことや、助けを求める力が弱いこと、性暴力被害を被害と認識できないなどの問題を抱えている場合があります。
そのため、障害のある性暴力被害者が相談支援に繋がるために、ICTによる分かりやすい映像などを活用して、性暴力や被害に遭ったら援助を求めても良いといった啓発活動を行うことが必要です。
また、性暴力被害の影響は、中長期の様々な生活に影響を及ぼします。
そのため、相談を受けた後、速やかに医療や福祉等、必要な社会資源に繋げるなど、被害相談の「出口」に向けた支援を行うことも必要です。

障害のある性暴力被害者の問題は、障害者をめぐる人々の意識などともかかわっています。
障害のある性暴力被害者の問題を社会の問題として認識し、共に解決を目指す社会となることを念願しています。


☆著者プロフィール
岩田千亜紀(いわたち・ちあき)
東洋大学社会学部社会福祉学科助教。日本女子大学文学部社会福祉学科卒業後、インドJawaharlal Nehru University修士課程修了、日本社会事業大学大学院社会福祉学研究科修了(社会福祉学博士)。
専門は、障害者福祉、子ども家庭福祉、ソーシャルワーク、プログラム評価。発達障害をもつ母親の子育て支援や、障害者の性被害に関する調査、学習支援プログラムの評価調査等に取り組んでいる。
主な論文に「障害者へのDVなどの暴力についての国際的な動向と課題:文献レビュー」『東洋大学 社会学部紀要』55(1) 43-55(2018年)など。

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