• もっと見る

2009年07月31日

人々はなぜ仲良くできないの?

性暴力被害ゼロネットワーク「しあわせなみだ」が取り組む性暴力被害の背景には、「暴力を許す構造」があります。
このため、個別の支援だけでは、性暴力をゼロにすることはできません。

竹中千春著『世界はなぜ仲良くできないの?』
http://books.hankyu-com.co.jp/_ISBNfolder/ISBN_04200/04209_sekai/sekai.html
では、暴力の構造と、連鎖を解く方法が示されています。
世界紛争を取り扱っていますが、「しあわせなみだ」が取り組む性暴力ゼロにも、沢山の示唆を与えてくれます。

1.なぜ世界で起こっている戦争やテロに関心が持てないか
2.なぜ社会的に弱い存在が生まれてしまうのか
3.どうすれば暴力の連鎖を解けるか

【なぜ世界で起こっている戦争やテロに関心が持てないか】(p.13-19)
・私たちは戦争やテロを「知りたくない」と思っているのではないでしょうか。知りたいことならお金や時間を使ってでも知ろうとします。しかし、毎日目の前のテレビにタダで流されている国際的な事件を見ないというのは、はっきりと、知りたくないという態度を反映しています。
・ではなぜ知りたくないのでしょうか。重要ではない、面倒くさい、自分には関係がない、生活の役に立たない、むずかしすぎて理解できない、といった理由もあるでしょう。でも、もっと根底には、「悲劇的な事件を知りたくないので無自覚に抵抗している」のではないでしょうか。そして事件を知ったところで、テレビの前の人を助けてあげることはできません。これは人としては大きなストレスです。
・ニュースを見たくないと感じることは、世界的な悲劇の重みを引き受けるだけの余裕がない、人として当たり前の反応です。けれども、見ず知らずの人々が苦しんでいる悲しい事件に耳を傾けようという気持ちが、ふと沸き起こってきたときには、ニュースをしっかりと聞き、新聞を読んでください。そこから、市民の時間が始まります。

【なぜ社会的に弱い存在が生まれてしまうのか】(p.37)
・グローバリゼーション時代は、人々の考えとともに、人、モノ、金、情報、ネットワークが国境を越えて移動します。そして、資本による過酷な自由競争を推進力として、世界を一つにするような求心力が働いています。それと同時に、世界を二つに分断させ、その間の緊張を生み出す遠心力も、非常に強く働いています。一握りの金持ちグループと、多数の貧乏人のグループに、世界が分裂してきています。
・貧しい人々や貧しい国々の正義を主張する思想(社会主義・共産主義・反植民地主義など)は力を失いました。金持ちに都合の良い資本主義や自由主義の思想や運動に、マイノリティや女性の思想、民主の平和を目指す思想は、互角に挑戦するほどの力は持っていません。貧しい人々には、正義を訴える言葉がなくなってきています。多くの人々は、黙って耐え忍ばざるを得ない状況に置かれています。

【どうすれば暴力の連鎖を解けるか】(p.223-230)
・暴力を止めたいと思うきっかけは「あ、痛い」と感じることではないかと思います。
・友人や家族について、「あ、痛い」と感じたことがありますか。もっと遠くの、一生会うこともない人々について、「あ、痛い」と思ったことがありますか。自分は痛くないのに、痛そう、と顔をしかめた経験がありますか。その感じが、仲間意識の芽生える瞬間だと思います

性暴力被害に置き換えてみると、こうなります。
・性暴力被害に関心が持てないのは、「悲劇的な事件を知りたくないので無自覚に抵抗している」ためではないでしょうか。事件を知ったところで、その人に対して「自分は何ができるか」もよく分かりません。これは大きなストレスであり、人としての感覚を持っているからこそ、情報を受け取ることに抵抗を感じます。
・性暴力被害は、権力のある者からない者(性別、人種、国籍、年齢、経済力、体力など)に対する人権侵害です。被害に遭う側が暴力を振るう側に対して正義を訴えることは、社会構造上とても難しいことです。
・性暴力被害を「あ、痛い」と受け止めてくれる人が増えることにより、性暴力を許さない風土が醸成されます。

「しあわせなみだ」が「あ、痛い」と受け止めてくれる人を増やす情報提供の場になるために。
まずはウェブサイトの開設に向け、準備を進めていきます。

posted by 中野宏美 at 08:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 性暴力被害:書籍
この記事へのコメント
コメントを書く
トラックバックの受付は終了しました

この記事へのトラックバック