さかみちをのぼって [2013年03月11日(Mon)]
3・11 大船渡保育園は高台にあったため、寸前のところで津波を逃れました。園庭から見下ろす街は壊滅。子育て支援センターも併設するこの保育園はその直後からコミュニティの中心として、皆が寄り添い助け合う大切な場所となって、今まで頑張って来られました。 そこを訪れた、作詞家の覚 和歌子さんと、作曲家の千住 明さんは、深く胸を突き動かされ「さかみちをのぼって」という園歌を作られたということです。 この歌は、<さかみちをのぼって、あのくもをつかもう さかみちをのぼって、かぜのおかひだまり さかみちをのぼって、だきしめるあおぞら>と、こどもたちが繰り返し唄うことによって、地震が起きたら、何をおいても先ずさかみちを登ろうという意識を、身体の芯にまで染み込ませたいという、切なる願いが込められています。今、私たちが訪れるとあちこちの部屋からこの歌が聴こえてきます。みんなこの歌が大好きな様子です。 この歌は、大船渡保育園だけに留まらず、広く多くのこどもたちに届き、歌い継がれて行ってほしいと願います。 その坂道の上の園庭には、立派な銀杏と桜の木があります。この二本の木が踏ん張って、津波を止めてこども達を守ったような気が、訪れるたびにいつもします。 この映像は2012年9月12日大阪の<邦楽普及団体・えん>が保育園を訪れた時、その前の晩に手に入れた楽譜をみて、ぶっつけ本番で伴奏をし、こどもたちが一生懸命唄っている様子です。琴を弾かれている伊藤志野さん(えんの主宰をされている伊藤和子さんの娘さん)が急遽編曲し、立命館法学部のOBの三嶋廣人さん(現在は気仙沼の高校の化学の先生。授業を2日休んでの参加です)が尺八を、菊池隆明さん(今は盛岡在住)が十七絃を演奏しています。 さかみちをのぼって 作詞:覚 和歌子 作・編曲:千住 明 伴奏: えん 合唱: 大船渡保育園園児 今日であれから二年。多くの犠牲者と今だ見つからない行方不明の方々。その後、「関連死」と呼ばれるような形で逝かれた方々(福島の人が圧倒的に多い)。仮設で、避難先で、それぞれの場で、辛い思いを抱えて寒い夜を今日も迎えている数多の人々。被災は今だ続いております。 統計によるとしょうがいのある方たちの今回の災害による死亡率は、いわゆる健常者の2倍であるとのことです。私たちが作ってきた社会が、いかに脆いものであったかがこの複合巨大災害で露呈されたと言ってよいでしょう。 今行われている<復興>はそのような脆さを、見据えるところからしかなしえないと思います。ところが湯水のように使われる復興資金は、そのもろさを更に重ねてゆくような形で使われているとしか見えないものが多々あるように思います。 私たちが被災地を巡る中で、勇気や明るさをもらうのは、しょうがいのある人たちや、こどもたちです。 こどもたちの笑顔は太陽です。 こどもたちの こどもたちの こどもたちの ために。山川草木・衆生ともども、わたしたちもさかみちを登って、陽だまりの中に行きたく思います。 大船渡保育園は2011年10月の野染以来、私達、風の布・パピヨンにとっても、本当に大切な関わりを続けさせてもらっています。これからもよろしくお願いします。 |