◆セボネ11月号特集記事
まちづくりを支える新たなしくみ
〜『世田谷コミュニティ財団』の胎動〜 世田谷では、25年にわたり「公益信託世田谷まちづくりファンド」が資金面で区民主体のまちづくりを支援してきました。一方で、NPO法人の増加や公益法人制度改革、企業の社会貢献活動、遺贈寄付制度、休眠預金の活用など、この四半世紀で社会の状況は大きく変わってきています。
そんななか、市民の手で新たなしくみをつくろうという動きが始まっています。「コミュニティ財団」とはいったい何をめざしているのか、「世田谷コミュニティ財団設立準備会」代表の水谷衣里さんにお話をうかがいました。

(写真提供/世田谷コミュニティ財団設立準備会)
◆想いをカタチにかえるしくみ そもそも「コミュニティ財団」とは何でしょうか。水谷さんからは、「コミュニティ財団は、アメリカで誕生した財団の形態で、広く企業や個人から寄付を集めて、それを地域の活動団体に助成するなど、地域の社会課題の解決のために活用するもの」と教えていただきました。世界には1,700ものコミュニティ財団があるそうですが、日本で活動している団体は全国で16団体と、まだまだ数が少ないのが現状です。
地域に関わる方法として、一個人としてボランティアで活動したり、団体をつくって仲間と活動を始めるなどの直接的な方法がありますが、「寄付」という形で参加し、地域の活動を応援する方法もあります。
世田谷でも、寄付やボランティアとしての参加を広げながら、まちづくりにもっと多くの人が関われる「しくみ」を育てようと、「世田谷コミュニティ財団」設立に向けてスタートが切られました。
◆「まちづくりファンド」で耕された豊かな土壌の上に 「助成金」による市民活動団体の支援といえば、一般財団法人世田谷トラストまちづくりが1992年に設立した「世田谷まちづくりファンド(以下、ファンド)」の歴史が古く、この25年間で地域発の数多くの活動が生み出され、区民主体のまちづくり活動を支援してきました。
ファンドでは活動の立ち上げを支援する「はじめの一歩部門」、住みよい地域環境づくりをめざす「まちづくり活動部門」や「10代まちづくり部門」のほか、4年前から「キラ星応援コミュニティ部門(以下、キラ星部門)」という伴走型助成プログラムも始まっています。「キラ星部門」は、活動資金を助成するだけではなく、よりよい成果をめざすために団体の活動に共感した「伴走者」(=メンター)が深くかかわることで、活動をより自立的・継続的なものとし、助成団体の成長を支えて、まさに「キラ星」のように他のグループの活動モデルとなってもらうところに特徴があります。
ファンドは「公益信託」というしくみを活用しているため、助成するごとに基金が減少し、このままでは将来的に枯渇する可能性など限界も見えてきました。そこで、ファンドが培ってきたノウハウや歴史を大切にしつつ、新たな未来をつくる発展的な方法として「世田谷コミュニティ財団」を設立しようという動きが生まれました。設立の発起人は、これまでのファンドの運営をボランティアで支えてきた運営委員の有志や、キラ星部門の運営を同じくボランティアで支えてきたメンバーが中心となっています。

財団設立キックオフイベントには約100名が集まった。
設立準備会発起人の水谷さんは、民間シンクタンクの研究員として全国各地のNPOやソーシャルビジネスの支援に関わってきました。また世田谷の住民のひとりとして、ファンドの運営にも4年間、ボランティアとして関わりました。運営委員としての活動のなかでは、世田谷の『地力』のようなものを感じたといいます。
「地層のように厚く積み重ねてきた世田谷のまちづくりの歴史に敬意を払いながら、その効果をもっと高めたり、いろいろな人が参加できるしくみを民間発でつくれたらいいな、と思ったんです」と話してくれました。
ファンドは公益信託を活用して「助成する」しくみですが、「コミュニティ財団」は、広く個人や企業から「寄付を集めて、助成」します。しかし、単に寄付者と団体の仲介役を果たすだけではなく、団体の組織基盤や力量強化に向けたサポートを行ったり、地域の課題を発掘し、共に解決策を練り上げたり、さらには地域の未来像を描き、財源をはじめとする複数の資源を組み合わせるなどの試みも将来的にはしていきたいということでした。また、「世田谷の最大の資源である「人」にも注目し、社会人のスキルや経験を、もっと地域に活かしていければ」と水谷さんは語ります。

シンボルマークには Sympathy(共感), Support(支援), Sustainability(持続可能性), Setagaya(世田谷)のSと、ともに(&)取り組もうという想いが込められている。
◆まちを支える生態系をつくる 「世田谷コミュニティ財団」が掲げるミッション(使命)の「まちを支える生態系をつくる」とはいったいどのようなことなのでしょうか? 水谷さんに尋ねました。
「世田谷にはすでに、まちのために活動している人たちがたくさんいます。それに、支えられた人が次は支える側に変わるという現象がふつうに起きています」
ファンドでもその実例を生み出しています。例えば、「世田谷コミュニティ財団」設立の呼びかけ人のひとりでもある磯村歩さんは、障がい者を応援するプロジェクト「フタコラボ」の代表として、2014年、2015年にファンド「キラ星部門」の助成をうけました。助成期間中は、キラ星部門のメンター(助言者)と話し合いを重ねて、福祉作業所で製造販売するお菓子に、障害のある人が描いたイラストのポストカードを添付し、販促イベントを実施、話題を呼びました。そんな磯村さんが、翌年はファンドの運営委員になり、助成希望の団体を審査する側にまわることになったのです。さらには、磯村さんはコミュニティ財団設立の呼びかけ人にも加わられています。

futacolab(フタコラボ)の商品「焼き菓子ホロホロ」は、
パティシエと福祉作業所が協同してつくりあげた自信作。
水谷さんはこう続けます。「『支えられる人』と『支える人』が固定的な役割である必要性はありません。私たちは互いの立場を行き来しながら、まちに必要な新しい挑戦が生み出されるしくみをつくっていきたいと考えています。コミュニティ財団という新しいしくみができることでを通じて、世田谷のまちづくりに知識や経験、成果が還元され、それを多くの人と分かち合いながら、次の循環を生み出していく。こうしたチャレンジをささえる有機的なしくみをつくっていくことをめざして、「生態系をつくる」と表現しています。
そしてそこから始まる取り組みや、生まれる価値は世田谷にとどめることなく、地域を超えて全国に広めていく役割も果たしていきたいと考えています」
◆人生を豊かにするアクション 学生時代からNPOをささえる中間支援機関でボランティアやインターンに積極的にかかわってきた水谷さん。自身の経験から「まちへのアクションは人生を豊かにする」といいます。
「地域で活動すると、それまで知らなかった人と出会って、価値観が揺さぶられたり、視野が拡がったり。同じ目的にむかって誰かといっしょに活動すると、自分の人生が豊かになることを実感したんです」
「社会人の多くは家族との時間と会社での時間が生活の大半を占めます。でも、まちや人とかかわることで人生がもっと楽しくなる。それをぜひ実感していただければと思います」と語ります。

市民の参加による循環のしくみ
準備会は、今年7月にキックオフイベントを実施し、財団設立に向けて設立寄付者を区内外から募り始めています。9月から開催中の世田谷カレッジ『世田谷コミュニティ財団のすべて』では、より多くの人にコミュニティ財団を知ってもらうための勉強会を開催しています。
2017年度内の財団法人設立を目途に、輪が広がってきています。変わり続ける街の中で、改めて暮らしを考えるために。働き方が見直される中で、改めて時間の使い方を考えるために。そして誰かとつながることで、あなたの生き方をもっと豊かにするために。
せたがやで始まる「新しいチャレンジ」に、関心をよせてみてはいかがでしょうか?
(取材/事務局 宮崎)
●世田谷コミュニティ財団設立準備会
ウェブサイト
http://scf.tokyo/ Facebookページ
https://www.facebook.com/scf.tokyo/●「設立寄付」「設立記念助成寄付」を呼びかけています。
寄付申込みフォーム
http://bit.ly/scf_donation 問合せ:setagaya@scf.tokyo
●世田谷カレッジ第1期 『世田谷コミュニティ財団のすべて』
■第3夜:11月6日(月)19時〜21時「公益信託 レガシーナイト」
■第4夜:12月1日(金)19時〜21時「ソーシャルインパクト 最先端ナイト」
■会場:両日とも「カタリストBA」(二子玉川ライズオフィス8階)
※この他にも様々なイベントがあります。詳しくはホームページを参照ください。
http://scf.tokyo/