発達障がいのある人とともに〜「CoCo Cafe(ココ・カフェ)のいま」〜 最近「大人の発達障がい」という言葉が聞かれるようになりました。少しずつ認識が広まりつつありますが、支援体制はまだ十分とはいえないのが現状です。
障がい者を支援するボランティア養成講座に参加して、3年前から「CoCo Cafe(ココ・カフェ)」という、成人期の発達障がいのある人の居場所づくりに取り組んでいる小梶さんと守武さんにお話をうかがいました。

CoCo Cafe(ココ・カフェ)の運営スタッフ
◆「ココ・カフェ」にようこそ 「こんにちは、初めての方ですか?」「こちらにどうぞ」
春の訪れを感じさせる穏やかな日差しがさす会議室。「ココ・カフェ」は玉川ボランティアビューローを会場に、毎月第2金曜日の午後、実施しています。"カフェ"といっても喫茶店ではなく、参加費100円でお茶を用意しているサロンです。室内にはコーヒーの香りが心地よく漂い、おやつをつまみながら個々におしゃべりをしたり、ひとりで過ごされる方もいます。特に決まったプログラムはなく、ゆったりとした空間には時折笑い声が響き、思い思いに時間をすごします。
午後1時から4時までオープンしていて、予約不要で出入りは自由。遅れてやってくる人や一足先に帰る人もいます。この日もおなじみのメンバーの他に、初めて訪ねてくる人もいました。
◆安心して過ごせる場を 世田谷ボランティア協会では各拠点で、障がい者支援にかかわるボランティア養成講座を開催してきました。玉川ボランティアビューローでは2013年から毎年、世田谷区と共催して「発達障がい者の社会参加を支援するボランティア養成講座」を開催し、発達障がいの特性を学んだり、居場所づくりの先進事例の見学や、ふれあい体験をしてきました。
「ココ・カフェ」はその養成講座修了生のメンバーで結成され、運営スタッフ(サポーター)はすべてボランティアです。成人期の発達障がいの方も安心して過ごせる場所として、発達障がいのある方、そのご家族、関心のある方の居場所づくりをめざして活動をしてきました。
2014年4月のオープン以来、この3年間の養成講座の修了生も加わって少しずつメンバーが入れ替わりながら、今はサポーター6人で、当事者やご家族などが平均して4〜5人来られ、毎回だいたい10人前後で和気あいあいとおしゃべりしています。年齢も幅広く、20代の方から70代の方までさまざま。
サポーターの守武さんは、「平日の午後開催なので、お仕事している方よりも、さまざまな理由でいまはお仕事をしていない方、これから一歩踏み出そうとしている方がここに来られますね」といいます。
「最初はどんな場所なのか様子を見に、ご家族といっしょに来ていた方が、何度か足を運ぶうちにひとりで来られるようになったり、ひきこもっていた方がここに来ることがきっかけとなって、少しずつ外に出られるようになった方もいます」
ここでは、発達障がい当事者の方のお話が聞けたり、「発達障がい」についてより詳しく知ることができ、「障がいについて知る意味でも参加してよかった」という人もいました。
◆大人の発達障がいの壁 「『発達障がい』の方の生きづらさは、パッと見てわかりにくいところにある」と守武さんはいいます。「ここに来る方のお話を聴いていると、小さい時からの経験の積み重ねやこれまでの人生での失敗経験で、障がいがあることを理解されずに大変な苦労をしたり、けなされたり否定されて自信を無くしている人もいます」
発達障がいのある方のなかには成績は優秀で学歴が高い人もいます。学校の授業はある程度決まったことを教えられ、教わった通りにやれば試験をクリアできます。しかし「仕事」となると、その場の状況に応じて自分で考えて組み立てなければならず、障がいの特性で応用や状況判断が苦手な方にとっては苦労することがあります。社会に出てみて初めて自分の特性に気づく人もいるといいます。1から5まで指示すれば10までわかる人もいる一方で、1から10までひとつずつ指示を必要とする人もいるのです。しかし、そのことをまわりが理解して接すれば、10までの仕事を言われたとおりに終わらせることができます。
他にも発達障がいには「はっきり言わないと気付けない」「臨機応変な対応が苦手」「『適当に』が理解できない」などの特徴があります。そのため、仕事をしてもうまくいかずに「役立たず」と言われて傷ついてきた方も多く、中には「発達障がいだと診断されて、理由がわかってすっきりした」と語る方もいたそうです。とりかかりや飲み込みが遅いけれど一度身につけるとものすごく集中力を発揮する人もいて、個々の障がいの特性を理解して、接し方やかかわり方を変えたり、特性を生かした仕事に変えることで、社会での生きづらさが軽減されるのです。
◆失敗から学んで、いまがある 当初は講座を主催していた玉川ボランティアビューローのスタッフがフォローしながら運営していましたが、現在はボランティアグループが中心になって運営しています。最初からうまくいっていたわけではなく、立ち上げた頃はすべてが手探りで、「この3年間いろいろと失敗しながら学んできたよね」と笑いながら小梶さんは振り返ります。専門家ではないので、アドバイスしたりカウンセリングするのではなく、思いや悩みに耳を傾け、安心して過ごせる場をつくることを目的としています。
発達障がいの方やご家族はさまざまなストレスを抱えて、だれかに話を聞いてほしくてここに来ています。けれどサポーターが一方的にしゃべりすぎてしまったこともあり、「サポーターは傾聴の姿勢が大事だよね」と反省したり、初対面で個人的に連絡先を交換してしまいトラブルになりかけたり、と、よかれと思ってしたことが失敗を招いたこともありました。月1回の活動を続けるなかで、そこで起きたことをその都度ミーティングで振り返ったり、学習会に参加して少しずつ経験を積み重ねてきました。
この振り返りにはビューローのスタッフが参加することもあり、「何か困ったときには相談したり、親身になっていっしょに考えてくれる伴走が心強い」といいます。「ビューローのバックアップがなければ、私たちだけで運営を継続していくのは難しかったと思います」と守武さん。振り返りを重ね、お互いが安心して過ごせるためにルールをつくってきました。
《サポーターが心がけていること》
★穏やかにリラックスできる空間(場所)にする
★話をしたくない方が静かに過ごせる工夫を
★相手の話に耳を傾ける
★政治・宗教に関する話はしない
★初対面や慣れないうちからの連絡先の交換は控えるようにする
★守秘義務
★笑顔で接する

その人のありのままを受けとめ、「いいところさがし」の意識でかかわっている。
◆思いを吐き出せる場 「初めて来たときには暗い顔つきで表情が硬くこわばっていた人が、『ココ・カフェ』に来ることによって、今まで誰にも言えなかった思いを全部吐き出して、次の月に来たときにはパッと明るい笑顔に変わっていたのが印象的でした。そんなときにやっててよかったなと思います」と小梶さん。
この日も、初めて来られて緊張気味だった方が、発達障がいの当事者同士で話が盛り上がり、帰り際には「おかげさまで新しい道が開けました。また来月も来たいと思います」と言ってにこやかに帰られました。

手づくりの看板でお出迎え
参加する方は、ここで思いを吐き出すことで肩の荷を下ろしていきますが、サポーターも同じです。ここで聞いたことは口外しないのが約束。受けとめた思いをサポーター自身が抱えすぎないのも大事なこと。情報を共有して、よりよい場づくりにつなげていくために振り返りをとても大切にしています。取材したこの日も、「ココ・カフェ」終了後に1時間ほどミーティングをしていました。
◆「ここ」からはじまる 「ココ・カフェ」のネーミングは「ここから(始まる)」「今ここに」という意味と、「ありのままで過ごせる場にしたい」と願いをこめて名づけられました。他のスタッフにも「ココ・カフェ」の魅力を聞くと「ここは"素の自分"でいられるのがいいね」と一言。
グループの代表は毎年交代していて、新年度は早川さんが代表を務めます。「僕はまだ来たばかりで1年しか経ってないから、コーヒーを淹れるお手伝いくらいしかできないけど」と控えめですが、そんな肩の力の抜け具合がリラックスできる空間をつくっているのかもしれません。
世田谷区による発達障がい者への支援も充実してきて、相談機関や就労支援のサポートなども始まっていますが、成人期の居場所や活動はまだ数が少ないのが現状です。これからも安定した運営をしていくために「ココ・カフェ」ではサポーターを必要としています。発達障がいのことを理解して、傾聴する意欲がある方を募集しているとのこと。まずは、ちょっとのぞきにいってみませんか?
(取材/事務局)
●Coco Café(ココ・カフェ)サポーター募集
「Coco Café(ココ・カフェ)」は、発達障がい者を支援するボランティアグループです。毎月第2金曜日、玉川ボランティアビューローで行っているCafeを支援するボランティアを募集しています。支援内容は、当日の会場設営、茶菓及び展示の準備、来訪者との傾聴的コミュニケーション、後片付け 等です。
●日時:毎月第2金曜日12:30〜17:00
●場所:玉川ボランティアビューロー
●交通:田園都市線二子玉川駅徒歩5分(玉川税務署となり)
●条件:成人期の発達障がいの特徴をもつ人への基本理解と傾聴意欲のある方
●問合せ・申込み:玉川ボランティアビューロー
電話 03-3707-3528