「ボランティア募集」ができるまで
〜ボランティア相談の現場から〜 ボランティア情報誌「セボネ」では毎号、紙面10ページから15ページにわたって「ボランティア募集情報」などを掲載しています。
これらはボランティアセンター等に寄せられる相談がもとになっています。では希望者からの相談をどのようにうけ、ボランティアを募集するまでにどのようなプロセスがあるのかについてご紹介します。
◆ボランティアセンターの日常 「もうしばらく誰とも話してないんだけど…。こんなこと言っても困るわよね」
「ボランティアセンターに行ってみたら? と言われたので…」
まだまだ多くの人に知られていませんが、ボランティアセンターや区内3か所にあるボランティアビューローには、さまざまな相談が寄せられ、「ボランティアコーディネーター」というスタッフがそれに応えています。区役所の窓口や知人から紹介されて、ホームページを見て、電話で、メールで、直接ボランティアセンターやボランティアビューロー(以下、ボランティアセンター・ビューローと略)を訪れて、相談が寄せられます。
「ボランティアしたい」という相談が年間約400件、「ボランティアを求めたい」という相談が約200件前後あります。「○○ボランティアを募集したいんですが…」という具体的なイメージがある問い合わせもありますが、漠然とした相談や困りごとも多く寄せられます。
◆制度のすきまの声に寄りそう 障害者総合支援法、介護保険法などの法律が制定され、それに基づいて様々な行政サービスが行われ、高齢者や障がいのある人の生活を支えています。一般的に行政の制度やサービスは税金を原資として行われ、予算に限りがあります。また、大多数を対象とした公平性・平等性の原則をもとにしているため、何でも賄うことはできず、どこかで基準を設ける必要があり、どうしても対応できない隙間が生まれてしまいます。
また、民間企業も様々な工夫の中で、社会のニーズに応えようと取り組んでいます。しかし民間企業によるサービスには、必要な対価が得られるかという経済的合理性や利潤追求が求められます。
そういう環境の中で、地域には「こうしたいけど、従来の制度やサービスではできなくて困っている」ということがあります。
例えば、ひとり暮らしの高齢の方が、余暇や趣味の外出に付き添ってくれる人がいたらいいな、と思っても、介護保険では日用品の買い物以外はサービスの対象とみなされず、民間の外出支援サービスだと有料になってしまいます。
ボランティアセンター・ビューローでは、こうした相談を受け、どうしたらその人の生活がよりよくなるかと考え、「人」が関わる形で解決できないかという姿勢でボランティア相談に取り組んでいます。
◆それぞれの想いをうけとめる 具体的にどのような相談が寄せられているのか、一例をご紹介します。(一部内容を再構成しています)
*年配の女性の方から
「旦那が身体を悪くして以来、いつも家にいる。なにかできるようなことがあればと思っています。本人も希望しているんです」
スタッフがお宅に伺って旦那さんとお話をしていると「昔、囲碁を楽しんでいたんです。趣味程度ですけどね」という話が出てきました。「ただ、もう相手がいないし、囲碁のグループに出かけることも難しくて」とも話されます。「それではまた囲碁ができたらいいですね。来てくださる方がいたらどうですか?」と聞いてみると、「ああ、いいですね」とおっしゃられました。
スタッフが、近くで囲碁をやっているグループの方に相談すると協力していただけることになり、囲碁のレベルがマッチして、無理なく続けられる方に定期的にご自宅に行っていただくことになりました。

*高齢の女性の方から
「夕方さみしくてたまらないの。誰かに来てほしいんだけど」
お宅に伺うと、最近旦那さんを亡くされたこと、その介護が大変だったこと、ただひとりでいるとふと寂しくなることがあること、を話されました。
その後、傾聴ボランティア講座を受講した方に、月2回ご自宅に行っていただくことになりました。

*身体に障がいのある方から
「今度65歳になる。これまでは障がいの制度で外出支援のヘルパーさんが付き添えたが、介護保険になると通院の時の病院の付添いをしてもらえなくなってしまうので困っています」
まず、ご本人にお会いして、いつ、どこの病院へ行っているのか、どんなサポートがあればいいのかなどを聞きました。移動サポートをしているNPOの情報と、ボランティア募集をする流れを説明して、病院に行く日が具体的になったら連絡をして頂くことになりました。
◆雑談のなかにある想い 改めて「相談」という形でなくても、雑談中に何気なく出た一言に悩みが隠れていたり、出てくる困りごともあります。いろいろなチャンスでそういった本音や悩みが聞けるようにスタッフは心がけています。
*ひとり暮らしの高齢の方から
傾聴ボランティアの活動中に、
「実はね。独りで夕ごはんを食べるのがつらいの。一緒に食べてくれないかしら」とポロリ。
その声をうけとめた傾聴ボランティアの方が、毎月の傾聴ボランティアの学習会でそのことを報告してくれました。「なんとかしようよ!」と話し合い、ボランティアセンターを会場に、夕ごはんを一緒に食べる企画をつくっていくことになりました。

大人気の「しもうま夕ごはん会」は、ひとりのつぶやきをキャッチしたことからうまれた
*セボネの表紙イラストを描いてくださった方から
「実は、近所でお絵かき教室をやりたいな、と思っているんです。場所なんてないですよね」
近隣の子どもを対象に、書道教室をやっている町会の会議室があることを思い出し、町会の方を紹介して、お絵かき教室をやっていくことになりました。
*大雪の日に
これまで相談でお会いした人を思い浮かべ、きっと困っているのではないかと思って動き出すこともあります。大雪の日に「ひとり暮らしの方が外出できなくなっているのではないか」と考え、除雪ボランティアを呼びかけ、サポートを必要としている方にご紹介したということもありました。
◆「人」のかかわりで 電話などで相談があると、私たちスタッフは「まずは会ってお話しませんか?」と応えます。ボランティアセンター・ビューローに来ていただいたり、来るのが難しい場合には、ご自宅にうかがったりします。相談者が具体的にどんな様子なのか、直接お会いして話さなければわからないことが多い、と思っているからです。
会うことができたら、相談者が困っていることやできたらいいなと思っていることをうかがいます。漠然とした困りごとを整理して主旨がわかると、さて、どういうふうに「人(ボランティア)」が関われば解決・実現できるか、少しでも改善できるかと考えていきます。既存の制度や民間サービスでそういう人が見つけられるのであれば、制度やサービスの利用を優先します。それが難しい場合には、こんな「人」がいたらどうか、こんなかかわりはどうか、という具合に提案し、時にひとつの困りごとに複数の役割のボランティアを募集したりもします。

◆おたがいさまの縁むすび 世田谷ボランティア協会は大勢の人たちにささえられています。スタッフはその支援で、「きっと応えてくれる人がいます、いっしょに探しましょう」という気持ちでお会いし、お話をうかがっていきます。
ボランティアを募集する方向性が決まると、協力してほしい人の性別、年代、経験、資格など募集の条件を確認していきます。スタッフが募集の呼びかけの文案を作成し、ご本人に文面の確認をして頂き、了解を得られたら、広報をしていきます。
基本的には、世田谷ボランティア協会のホームページやSNS、情報誌「セボネ」での募集を呼びかけます。内容によっては、チラシを作って近隣や関係団体に配ったりもします。募集をする際には、プライバシーに細心の注意を払い、問合せ先を個人宅ではなく、ボランティアセンター・ビューローの担当者宛にすることもあります。なかには、ボランティア協会のこれまでの関係を活かして口コミでボランティア活動希望者を探すこともあります。こうして、「ボランティア募集」がはじまります。
さて、「ボランティア募集」記事を見て、ボランティアの希望者から問い合わせがあってからの流れは、次回「ボランティアが見つかってから」でお届けします。
(担当/事務局 鈴木佑輔)