みんなでワイワイ『子ども食堂』
「さんさんこども食堂」のにぎわい。この日はみんな大好きなハンバーグ。
近年「子どもの貧困」が社会的課題となり、豊島区の「要町あさやけ子ども食堂」や練馬区の「ねりまこども食堂」などの取り組みが新聞やテレビで取り上げられるたびに、大きな注目を集めています。
「テレビで見たけど、世田谷では活動していないのか?」「家の近くでやっていたら手伝いたい」という問合せが世田谷ボランティアセンターにも入るようになりました。調べてみると、世田谷区内でもこの半年の間にいくつかの子ども食堂が活動を始めていることがわかり、さっそく「世田谷さんさんこども食堂」と「せたがや子ども食堂・みっと」に取材にうかがいました。
◆おなかをすかせた子どもたち 厚生労働省の調査によると、2012年の日本の子どもの貧困率は16.3%、子どもの6人に1人が「貧困」状態であることが明らかになりました。また、ひとり親家庭の子どもの貧困率は54.6%を超えています。ひとり親家庭の増加が子どもの貧困に拍車をかけているともいわれています。
学校給食でかろうじて栄養を摂っているため長期休み明けにやせてしまう子どもが増えているという養護教諭の話もあり、おなかいっぱい食べられない子どもたちがいるのです。そんな状況をなんとかしようと全国各地で「子ども食堂」という取り組みが始まり、報道されることが多くなりました。そして世田谷でも2015年秋頃から「子ども食堂」オープンの動きが始まっています。
◆世田谷さんさんこども食堂 2015年9月から始まった「世田谷さんさんこども食堂」の会場は、赤堤の静かな住宅街の一角。毎月第3火曜日の17時から20時半まで、参加費は子ども無料、大人300円。調理するのはエプロン姿が板についたシニア男性たちです。「それがここの一番の特徴かもしれません。地域活動への男性の参加が少ないと言われますが、ここは男性が多い」と、「さんさんこども食堂」実行委員長の小川正徳さん。

男性陣が腕をふるいます
実行委員会には区内で活動する5つの団体(コーデ騎士団・おとこの台所・せたがや福祉サポートセンター・劇団せたがや創作紙芝居・NPO法人かぞくの杜)が集まっています。いずれも、高齢社会問題や福祉、料理や子育て支援などに取り組んできた団体。地域での活動を通して多くの問題の内側に「貧困」が潜んでいることに気づいた人びとが、その一番のしわ寄せを受ける子どもたちの居場所をつくろうと、2015年1月に実行委員会を立ち上げました。
いつもひとりで晩ご飯を食べなくてはならない子どもたちと食事会を開こう、というアイデアはすぐに生まれました。会場は、小川さんがご両親の隠居所を改装して地域活動の拠点としている「トナリプラザ」で、調理は男性の料理グループ「おとこの台所」と、子育て支援をしている「かぞくの杜」が引き受けました。
最大の問題は、参加者を集めることでした。4月に近くの小学校の協力で全校児童にチラシを配りましたが、なんと申し込みはゼロ。「シングルマザー」などの言葉に抵抗があったのではないかと考えた実行委員会は、「ねりまこども食堂」の見学などを重ね、9月に再出発しました。困難な状況を抱えた子どもたちだけを誘うのではなく、「だれでも参加できるよ、いっしょにご飯を食べると楽しいよ」と呼びかけたのです。
チラシのほかにも、町の掲示板にポスターを貼ったり、国際結婚をしている家庭に声をかけたりして、9月の第1回は12人、10月には7人の親子が集まりました。活動を始めて半年くらいは参加者がなかなか集まらないといわれる中、大健闘。実行委員会のグループがそれぞれに築きあげてきた地域ネットワークの成果でした。

さんさんこども食堂は昭和の大家族のよう。「おなかすいた〜!ごはんまだ〜?」
「会費と寄付で運営していますが、食材や食器などの寄贈もあります。高齢者のサポートに寄付が寄せられることはほとんどなかったけれど…」と笑う小川さん。地域の力で子どもを育ててきた日本の伝統がよみがえるようです。食材や献立にもこだわりがあり、有機野菜を使用し、できるだけ地元の食材を使う地産地消を心がけています。11月のメニューは「キラキラこどもおでん」、12月は「ケーキ寿司」。見た目も楽しく、テーブルでの話題も広がります。
順調に滑り出した「さんさんこども食堂」ですが、本当の課題はこれから。苦しくても声を出せずにいる子どもたちに支援を届けるには、どうすればいいのか。信頼できる大人がいる場、安心できる居場所を提供し続けるには…。試行錯誤が続いているようでした。
(取材/編集委員 家井雪子)
◆せたがや子ども食堂みっと 世田谷線松原駅近くにあるコミュニティスペース「シーマシーマ」で、第2・第4木曜日の15時〜20時に開催しているのが「せたがや子ども食堂みっと」です。
そもそもの始まりは「シーマシーマ」のオーナーである井上文さんが、貧困家庭の子どもたちのために何かできないかと考えていたところへ、世田谷区社会福祉協議会の協力もあり、関心ある仲間たちを集めたところから始まりました。
「みっと」代表の村上由美さんは、地元赤堤で料理サークルや発達障がい児の支援をしていたところに井上さんからお声がかかって参加。最初は本当に人が集まるのかと半信半疑でしたが、実際やってみると、地域のいろいろな人が差し入れをしてくれたり手伝いを名乗り出てくれたりと反応があり、子ども食堂への関心の高さにびっくりしたそう。「この場が子どもたちや大人もふらっと来て気晴らしできる機会になるといいなあ」と考えているとか。

お話をうかがった、みっとの井上さん(左)と村上さん(右)
11月12日にオープンしたばかりで、まだ2回だけの開催(取材当時)ですが、初回は20名を超える子どもたちが集まり、大人も含めると40名ほどの大盛況な結果に。これは井上さんをはじめ発起人の6人がそれぞれに以前から地域との深いつながりを持っていて、近くの小・中学校へのチラシの配布のほか、主任児童委員や学校支援コーディネーターなど地域のキーパーソンによるクチコミなど、事前の周到な根回しの結果のよう。
孫を連れた高齢の方も来たり、子どもたちの遊び相手になったり宿題をみてくれる大学生が来ていたりと、地域の居場所づくりと多世代交流、学習支援という3つの柱が実現。スタッフのみなさんも市民活動のベテラン揃いで、出だしからいい感じの居場所ができているという印象でした。

「子ども食堂みっと」12月10日のメニューはおでん。野菜やお米の寄付もいただきました。

「おいしいね」ごはんを食べながら会話がはずむ

開催日は黄色い旗が目印。世田谷線からも見えるかも?
ちなみに、「みっと(mitt)」とは「みんなで いっしょに たのしく たべよう」の頭文字をつなげたネーミング。野球のミットのように「受けとめる」という意味も含まれています。開催日は会場の入口に大きくてかわいいのぼりがはためいています。のぼりが気になるのか子どもたちがワイワイしてるのが珍しいのか、通りがかりの人がちょっと覗いていくこともありました。この活動が地域に定着していくといいなと思います。
(取材/編集委員 市川 徹)
北烏山でも2015年9月からお寺を拠点とした「ぞんみょうじ子ども食堂」が始まっています。井上さんの話によると、他にも区内で子ども食堂を始めようと計画している団体もあるとか。1月11日には、豊島区で「こども食堂サミット2016」が開かれます。おいしくて、楽しい「子ども食堂」、これから地域にもっともっと広がっていきそうです。
●世田谷さんさん子ども食堂
毎月第3火曜日17時〜20時半

080-1019-9884(小川)
●せたがや子ども食堂みっと
第2・4木曜日15時〜20時
URL
https://www.facebook.com/setamitt/ メール setamitt@gmail.com