「困った!」を話せるところ
〜世田谷地域障害者相談支援センターの取り組み〜
「どこに相談したらいいかわからない」そんな疑問に身近に答える窓口のひとつとして、世田谷区には支所ごとに「地域障害者相談支援センター」があります。今回は、「世田谷地域障害者相談支援センター」の2年半の取り組みや実績について、相談員の山内聡さんにお話をうかがいました。

※世田谷地域…世田谷・経堂・宮坂・桜丘・桜・弦巻・若林・上馬・下馬・三軒茶屋・太子堂・野沢・三宿・池尻・駒沢1〜2丁目
◆「困った!」を話せるところ 世田谷区独自の事業として2013年に開設された「地域障害者相談支援センター(以下、相談支援センター)」は、障がいにともなう「困りごと」を相談できる場として、世田谷、北沢、玉川、烏山、砧の支所ごとに設置されました。
相談支援センターでは、身体障がい、知的障がい、精神障がいといった障がいの種別を問わず、いろいろな障がいにともなう困りごとを聞き、必要な情報提供や相談者の希望に応じた提案などを行っています。「世田谷地域障害者相談支援センター」では、原則として世田谷地域(※)に住んでいる人を対象とし、ご家族も含めて無料で相談することができます。
2013年度に相談に来た方は133名、2014年度は132名。2年間で延べ265名の方から相談がありました。これは2日にひとりは新しく相談に来る計算となり、それだけ相談を必要としている方がいるということがわかります。
多くの方が相談に来られるので、困りごともさまざま。例えば、「障がい者手帳の申請をするにはどうすればいいか?」「障がい者年金の申請はどこにいけばいいか?」などの問合せには、申請窓口の情報提供をします。
「障がいがあって今は働くことができないが、いずれ働きたいのでそのための準備ができる場所はないか?」「家にいることが多いので、どこかゆっくりと通うことができる場所はないか? でもいきなりひとりで行くのはちょっと心配…」など、これから先どうすればいいかをいっしょに考えてほしいという相談もあります。こうした「困りごと」は継続的にサポートして解決策を探っていきます。
相談経路は本人や家族からの相談のほか、区の窓口から相談を受けることもあります。相談に来る方の年代は40代〜50代の方が多く、6割強を占めます。これは、これまで家庭内で解決できていたことが、障がいのある方の親が高齢化して家族だけでは対応しきれなくなるためです。生まれつきの障がいだけでなく、働き盛りの世代が病気や事故で、ある日突然、障がいを負ったことによる相談もあります。

2014年度相談割合 障がい別

2014年度相談割合 相談内容
◆いっしょに考える 相談が寄せられると、その方が何に困っていて、これからどうしていきたいのか、相談員が詳しく話を聴いていきます。まずは相談員と相談者がお互いのことを知り合い、信頼関係を築くことを大切にしています。
相談の内容はざまざまで、「仕事を見つけたい」と思い自分で探してみたけれど、なかなか見つからない。就職できてもうまくいかないことが多く、すぐに辞めることになってしまう。「何をどうしたらいいかわからない」という漠然とした不安や悩みもあり、そんなときには、「じゃあこれから何をしたらいいか、いっしょに考えましょう」といっしょに問題を整理し、ひとつずつ解決にむけて方法を探っていきます。既存の制度や福祉サービスを紹介したり、制度で補えないことについては、ボランティアやNPOなどの地域資源の利用を提案していくのです。
◆地域で顔の見える関係づくり 相談者の困りごとを解決するために、都や区の公的な福祉制度、民間事業所の福祉サービス、NPOや地域のボランティアによる支援につなぐことが相談支援センターの役割です。「相談に来た方が抱えるさまざまな困りごとに対応するために、いろいろな方の知恵を借りています」と相談員の山内さんは話します。
区の保健福祉課やヘルパー派遣事業所などの関係機関と連携して取り組むこともあり、さまざまな支援機関とチームを組むためには、普段からのつながりが重要です。地域支援のネットワークをつくる場、ともに考える場として、開設当初から隔月で、情報交換会を開催してきました。このような場が支援機関同士の横のつながりをつくる機会となり、それぞれの得意分野を知ることで支援する側も困った時にはお互いに相談しやすい関係を築いています。

情報交換会の様子。毎回テーマをもうけて話し合います。

相談員の山内さん
◆暮らしのなかに「つながり」を求めて 「世田谷地域障害者相談支援センター」では、今後独自の取り組みとして2016年1月に「ごきんじょ市」の開催を計画しています。ネーミングも微笑ましいこのイベントは、「世田谷地域のなかでいろいろな活動をしている"ごきんじょ"のみなさんを知ってもらおう!」、そして、「誰でも気軽に立ち寄れて、知り合うことができる『場』をつくろう」という2つの目的があります。
これまで地域の町会は盆踊りなどのイベントを、福祉施設は福祉まつりを開催するなど、交わることなく独自にやっていました。「ごきんじょ市」は、いうなれば「盆踊り」と「福祉まつり」をミックスして地域のいろいろな人が交じり合うイメージ。
地域の学生にも参加を呼びかけて、まちの人たちといっしょに「ごきんじょ市」を企画し、商店会や福祉施設などそれぞれの活動をより多くの人に知ってもらうためのイベントになるよう検討しています。地域に暮らす人、働く人、学ぶ人、誰でも参加できてみんなが知り合える「ごきんじょ市」をめざします。
◆地域に広がる「面」の支援へ 「障がいがあっても地域で暮らし続けたい」という想いを支えるには、地域全体でその人の暮らしを支え、ともに考えていく必要があります。障がいのある人にとって問題がひとつ解決すれば全てOKというわけではなく、その先も続く日々の生活では新たな悩みも生まれてきます。「『困ったらまたいつでも来てください』と話しています」という山内さんの言葉は、相談に来た方の胸に心強く響いていることでしょう。
2016年度から始まる地域包括ケアシステムも見据えて、「世田谷地域障害者相談支援センター」は、地域のつながりを味方に、人材や資源を開拓して、住みたい地域で暮らしていける可能性をさらに広げていきます。
(取材/伊藤 立)
●世田谷地域障害者相談支援センター

03-6313-4544(月曜〜金曜、10時〜18時)
世田谷区下馬2-20-14 ケアセンターふらっと内
http://www.cocokaraweb.org/