韓国STX造船所の現状と発展戦略に関する調査-1 [2011年08月17日(Wed)]
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(データ容量により4分割で掲載) 【はじめに】 リーマンショック以降に発生した国際金融危機は、中国を含めた世界三大造船国に対して、一時的に大きな影響を与える結果となった。中でも、韓国造船事業者は、海外の輸送船の多くが運航停止となり、契約キャンセル又は引き渡し遅延等の直接的影響を強く受けるに至った。これは、ヨーロッパ船主の多くがヨーロッパ金融機関からの貸付金により建造を発注しているが故に、違約金を支払ってまでも契約キャンセル等を行うしかなかったことや、他国と比較し、韓国造船事業者に対する発注の前払金が少ないという契約要件が原因となっていた。契約キャンセル等の船種も、ばら積み貨物船から1万TEU級以上の超大型コンテナ船に至ったとされている。 こうした影響から、韓国大手造船企業においては、流動資金の確保が喫緊の課題となった。このような資金不足は、新規受注の急減に伴う前払金の減少が主要因と見られた。韓国政府も、資金難に直面した韓国中小造船企業等に対し、韓国経済における輸出総額の10%に当たる7兆ウォンを資金援助するとともに、国内外の船主向けに11.5兆ウォンを出資する(韓国船舶金融制度)などの対策を講じた。その後、受注が徐々に持ち直し、造船業界は一応の安定化を見せた。 一方、韓国造船業界の風雲児とも目されるSTX造船所は、韓国新興造船所の代表格のみならず、世界をリードする韓国造船企業の5指に入る巨大企業であり、特にヨーロッパとアジア諸国に造船所の積極的展開を図る特徴的な企業戦略を有している。大連の長興島造船基地への進出もいち早く決断、決定するなど、新興造船所ならではの決断の早さは世界屈指といえる。他方、急速な拡大成長路線は、経営安定力の観点からは、時には大きなリスクを伴う。巨大カンパニーへの到達を目標に拡大し続けてきたSTX造船所は、過去、我が国造船業が抱えた設備過剰という歴史的課題に今後どのように対処するのか。未知の領域での経営手腕にその真価が問われる。 本調査は、日本と並ぶ造船大国となった韓国の大手造船企業の経営戦略について、企業リスク等の観点から最も注目されるSTX造船所を調査対象とし、その経営状況(設備状況、財務状況等)に関し実態調査するとともに、韓国政府の支援策の内容および活用状況を含め、STX造船所の今後の発展動向を整理し、将来展望について評価分析を図り、今後、我が国造船関連事業者が国際企業戦略、海外投資、海外取引を検討する際の参考に資することとする。 ジェトロ大連事務所船舶部 (社団法人日本中小型造船工業会共同事務所) ディレクター 織田 陽一 【目次】 第1章 企業紹介 第2章 筆頭株主分析 第3章 主要製品及び造船所概況 第4章 技術及び研究開発 第5章 受注分析 第6章 財務分析及び予測 第7章 戦略的な事業展開 第8章 政府補助と政策研究 第9章 融資関連 第10章 関連会社分析 第11章 競争相手及びSWOT分析 第12章 国際金融危機による影響 成果物詳細ページへ(ファイルダウンロード) |