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ダム撤去という選択 No.114[2016年04月05日(Tue)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.114
−力で治める時代から共存の時代へ−
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  • 持続できない巨大な構造物

  • 失われていくダムの機能

  • まかないきれない維持管理費

  • ダムが生態系に与える悪影響

  • 海外で進むダム撤去

  • 日本でのダム撤去の議論

  • 健全な社会は健全な生態系から




失われていくダムの機能

砂で埋まっていくダム湖
ダムができると、それまで下流にながれていた砂や石が、ダムのつくる湖(ダム湖)の中に溜まるようになります。
ダム湖に大量の砂が溜まっていくと、飲み水や農業用水として使える水の量が減ったり、あるいは洪水のときに受け入れることのできる水の量が減ってしまい、ダムが十分な機能を発揮できなくなってしまいます。
そして、このまま砂が溜まっていくと、ダムが機能を果たすことのできる”寿命”が縮んで行くことになります。
溜まった砂を取り除くための工事も行われていますが、取り除く以上の量の砂が毎年溜まっていくダムもあります。

地滑りを引き起こす
ダムによっては、もともと地盤が弱い場所につくってしまったことから、度々地すべりを引き起こし、うまく機能していないものもあります。奈良県にある大滝ダムでは、ダムに水を溜める試験の最中に何度も地すべりが起き、その度に水を抜いて対策工事をやり直したために、追加で多くの費用を費やしました。
地盤が弱い場所につくられたダムでは、今後も地すべりが起きないとは限りません。

老朽化
日本でダムや堰が決壊した事例は少ないですが、最近の事例としては、熊本県にある建設後72年が経過していたコンクリート製の川辺川第一発電所取水堰が2008年に決壊しています。
コンクリート製の構造物と同様に、適切な対策なくしては時間とともに劣化していく運命にあると言えます。

まかないきれない維持管理費

一度つくられたダムを維持していくには、どれくらいのお金がかかるのでしょうか?
国土交通省と独立行政法人水資源機構が管理するダムと堰については、維持管理費は、1基あたりの平均で一年間に約4億5,000万円にも上がります※。
これらの管理費は、つくられてからの年月を経るごとに増える傾向にありますが、国も自治体も予算が縮小していくなかで、今後、すべてのダムの維持管理費をまかなっていけるのかが懸念されます。
※国土交通省および独立行政法人水資源機構が管理するダム・堰の平成19年度予算をもとに算出

ダム湖の砂を取り除く費用

維持管理費の中には、ダムに溜まった砂を取り除くための費用も含まれています。
砂を取り除くには、ショベルカーやクレーンつきの船などで掘り取りますが、1㎥につき、砂が陸上にある場合で4,300円、水中の場合には35,000円かかるとされています。
一年間に溜まる砂の量は、ダム1基だけで数万〜数十万㎥におよぶこともあるので、仮に1万㎥の砂を掘り取ると、陸上の場合で4,300万円、水中の場合は3億5,000万円もかかることになります※。
なお、新たな対策として、ダムの脇にトンネルをつくってそこから下流に砂を流す対策も行われ始めていますが、この方法はつくるのに非常に大きな費用がかかるだけでなく、トンネルの底が流れてくる石によって削られるために毎年補修のための費用もかかります。
※淀川水系流域委員会 第69回委員会 審議資料より
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