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グロマリンの発見 No.82[2016年03月04日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.82
−世界の農業を変え、地球の温暖化を防止−
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日本も土壌を守り、自然と共存する不耕起農業に

求められる農地の土壌の管理

土壌は、食料を産み出す源であるとともに、生態系全体を支えています。
私たち人間の生活は、土壌なくしては成り立ちません。一度土壌を失うと、取り戻すのに気が遠くなるほど膨大な時間がかかります。
土壌は、1cmできるのに、100年から400年かかるといわれています。
今の時代を生きる私たちは、子どもたちや将来世代のために、常に土壌を守る対策を行っておく責任があります。

しかし、残念ながら、現在私たち日本人は、土壌の状態についてほとんど気を配っていません。
特に農地の土壌の状態については、この約50年の間に、「地力保全基本調査→土壌環境基礎調査→土壌機能モニタリング調査」と全国調査が続けられるものの、侵食状況に関する適切な調査が行われておらす、このことは、極めて重大な問題であると言わざるを得ません。

畑は、水田の水のような厚い覆いがなく、常に土壌がむき出しになり、風と雨にさらされてしまいます。
そのため、畑が多い国では、長い間、土壌浸食の問題に頭を悩まされてきました。

現在、日本には、約470万haの農地がありますが、そのほぼ半分は畑です。
残りの水田も半分が畑のような状態になっています。
かつて伝統的に行われていたように、地域の自然に合わせて水田を管理するのではなく、一枚の水田からより多くの品種、より多くの作物を得るために、多くの水田で排水管が地中に埋め込まれており、いつでも人工的に乾かすことが可能になっています。

強い風が吹き土壌が飛ばされやすい冬場、日本の農業は、その約7割に当たる約340万haが畑の状態になっているものと思われます。
一般的には、河川のまわりの平地や山の谷間の農地などは、本来水田に適したところです。
取り返しのつかない上体になる前に、こうした農地においては畑への転換を可能とする土木工事を行わないことはもちろん、すでに工事が完了したところでは、地域の自然環境にあわせて乾田化を控えるなど、適地適作を基本とした対策を進める必要があります。

不耕起農業の推進

日本の農地、特に本来畑作に適した農地において、土壌を守る持続可能な農業を確立していくために、今こそ私たちは、サラ・ライト博士の発見に目を向ける必要があります。
土壌に豊かさを与えるためには、「耕起によって植物の根を断ち切り、機械によって人為的に土壌に混ぜ込むことで腐植を促すこと」ではなく、「今ある土壌を手に入れず、植物の根をそのままの状態で残すことで、根と共生する菌根菌類を守り、グロマリンの増加を促すこと」こそ、最善の方法であるということを、ライト博士は科学的に証明しました。
こうした発見は、私たち日本人が推し進めてきた近代農業のあり方を、根本から見つめ直す機械を与えてくれます。

農業は本来自然から恵みを授かる産業です。
持続的に食料を生産していくためには、農地の土壌をできるだけ自然に近い状態で管理していくことが重要です。
土壌づくりを人の手から生きものたちに譲り、彼らが産み出す恵みを授かる不耕起農業は、自然と共存する持続可能な農業の理想形といえます。

近年、世界の国々においては、こうした不耕起農業の重要性に気付き、この農業の推進に向けて、各種支援施策を導入してきています。
日本においても、グロマリンに着目し、現在検討が行われている資源保全施策や農業環境施策などにおいて不耕起農業を積極的に進めることで、日本の農業を大きく転換する必要があります。
タグ:農業
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