世界を平和にみちびくチベットの人々 No.161 [2019年03月21日(Thu)]
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日本生態系協会 会報「エコシステム」No.161
−持続可能な生き方−
広大な草原で身の丈にあった伝統的な暮らしをおくるチベットの遊牧民の人々。 一つしかない地球の一員としての責任を持ち、持続可能な生き方を探すとき、チベットをはじめとする自然とともに培った伝統的な知恵と文化は、さまざまな手がかりを与えてくれます。 チベットの暮らしの根底にあるもの 伝統的な 暮らしが今も続けられているチベット。 チベットの人々に根差すものは何なのでしょうか。 人々との出会いの中で、チベット高原ならではの自然のもと、長い年月をかけて培われてきた価値観や独自の文化を垣間見ることができました。 厳しくもろい自然、そこでの暮らし 「世界の屋根」と称されるチベット高原は、総面積約250万kuのユーラシア大陸の中央に広がる世界最大級の高原です。 南にヒマラヤ山脈、北はクンルン山脈などに囲まれ、高標高のため寒く乾燥し、気温差が大きく1日の中に四季があると言われるほどです。 またこの厳しい気候に適応した地域固有の動植物が数多く生息・生育しています。 黄河、長江、メコン川、インダス川など大河の源流を有することから、「アジアの給水塔」とも呼ばれています。 かつては、豊かな草原や、特に南部や東部では原始の森が広がっていましたが、近年深刻な自然破壊が進んでいると言われています。 森林は乱伐により、1950年の面積2,520万haから、1985年には1,357万haと約半分にまで減少しました。 また森林や草原の劣化によって、土壌流出や、砂漠化、動植物の絶滅などが危惧されています。 寒冷で乾燥した環境での森や草地の再生は困難であるため、チベット高原の自然破壊はより深刻と言えます。 とはいえ、中国の国務院報道弁公室が2018年に発表した白書「チベット高原における生態文明建設状況」には、「希少野生動物が自然に生息している場所で高原生物種の遺伝子バンクであると同時に、中国ひいてはアジアにとって重要な生態安全バリアでもある」とされ、チベット高原は依然として、地球で最もクリーンな地域の一つであることが記されています。 チベットの人々は、厳しくも豊かで、そして脆い唯一無二の自然を生き抜くなかで、この土地に合った募らし方や生活文化を築いてきました。そしてそれは今もなお強く息づいています。 無用な殺生はしない 慈悲深いと言われるチベットの人々。 テーブルに虫がとまっていたらどうするかを聞いてみると、ほとんどの人が追い払うだけで殺さないと答えます。 赤ちゃんを連れたある若い男性は、「大人は絶対に殺しません。子どもが殺そうとしたら、学校や家族の大人が、命あるものは平等で大切であることを教えます」と話しました。 カム地方の小さな街では、車に礫かれないようにと、毎朝、道路の虫たちを手で拾い、草原に戻す人たちにも出会いました。 チベットの人々は昔から自分より他人や生きものを大切にする利他の精神を持っていました。 さらに、すべての命は死ぬと別の人間や生きものに生まれ変わる輪廻転生という仏教の考え方も加わり、命を大切にする習慣が先祖代々身についているのです。 チベットの人々の心を支えるもの チベットの人々は聖地巡礼に熱心な民族だと言われています。 チベットには多くの聖地が存在し、中でもチベット自治区の中心の街ラサには、ベチット高原全域から巡礼者が訪れます。 ジェクンドの近くで出会った4人組の家族は、チベット高原北東部の甘粛省から巡礼の旅を続けていました。 4人のうち2人は初めての巡礼で、ーか月前に出発したと言います。 ジェクンドから巡礼の目的地ラサまでは約1,000kmほどの道のりがあります。 おそらく、これからさらに1か月以上歩き続けるのでしょう。 私たちと話している途中、4人は通りかかった車を止めました。 少し話をして、その車に4人分の大きな荷物を乗せると、車は4人を置いて走り去りました。 知り合いかと尋ねると、初対面だが、荷物を15km先の町まで運んでもらうよう頼んだと言います。 4人が休んでいた道ばたのテントも、自分たちで用意したものではなく、目の前に住んでいる人が巡礼者のために立てたものでした。 チベットの人々にとって、巡礼者に対して協力することはごく当たり前の習慣になっているのです。 チベット仏教特有の祈りの形式に「五体投地」があります。 合掌した手を額、喉、心臓の三か所につけたのち、うつぶせになり、また立ち上がり、自分の身の丈だけ足を踏み出す一、これを繰り返しながら祈ります。 聖地では、五体投地をして祈るチベットの人々を多く見ます。 また、人々の祈りは、さまざまな形で風景の中に見ることができます。 多くの寺院はもちろんのこと、川の両岸に積まれた経文などが彫られたマニ石や、山の中腹に無数にはためく、タルチョという経文が書かれた五色の旗も、人々の祈りの形の一つです。 政治的に複雑な問題を抱えるなかでも、伝統的な価値観や考え方、そして人と人との支え合いが見られます。 |
Posted by
総務
at 16:07



