国際サンゴ礁年 No.97[2016年03月19日(Sat)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.97
−世界一豊かな日本のサンゴが60%減っている−
日本でのサンゴ減少の原因
日本でも深刻なサンゴ礁の異変の問題。その原因は何なのでしょうか。
主には四つありますが、そのどれもが、わたしたち人間の、陸上での生活と密接な関係があるものです。
−世界一豊かな日本のサンゴが60%減っている−
- ”サンゴ”とは何か
- 人々の生活も支えるサンゴ
- そんなサンゴは今、どうなっているのか
- 日本でのサンゴ減少の原因
- 日本は何をすべきか
- 日本で必要な取り組みは
日本でのサンゴ減少の原因
日本でも深刻なサンゴ礁の異変の問題。その原因は何なのでしょうか。
主には四つありますが、そのどれもが、わたしたち人間の、陸上での生活と密接な関係があるものです。
- 赤土被害
- 陸上での土地開発や農業耕作などにより、陸の土壌が海に流れ込むと、水が濁り、サンゴに光が当たらなくなって光合成ができなくなってしまいます。
また、土壌が沈殿するとサンゴの表面に泥が覆いかぶさり、そのためにサンゴが窒息死してしまいます。
特に沖縄の土壌である赤土は、粒がきわめて小さく、豪雨によって現在、農地などから簡単に海に流れ出てしまうために、広い範囲にわたるサンゴ礁破壊の原因となっています。 - 白化現象の増加
- 地球温暖化によって、海水の温度が異常に高くなると、サンゴの体内に共生していた褐虫藻がサンゴから抜け出してしまいます。
そのため、サンゴは色を失い、真っ白になってしまうのです。
これがサンゴの白化現象です。
海水の温度が下がると、褐虫藻は再びサンゴに戻ることもありますが、湿度の高い状態が長く続き、光合成によるエネルギーを長時間にわたって受け取ることのできなかったサンゴはやがて死んでしまいます。
水温ほぼ30℃が白化の発生する温度と考えられており、わずか1℃高くなっただけでも白化が起こることがわかっています。
近年、海水温度上昇の現象が大規模かつ頻繁に発生留するようになり、白化現象が多発し、生きているサンゴが減りつつあります。
また最近では、日本を含めた多くの国で「日焼け止め」に使われている成分が海に溶け出した場合に、わずかな濃度でも褐虫藻が死んでしまい、サンゴの白化を招くこともわかってきています。 - オニヒトデ食害の増大
- サンゴの触手の部分(ポリプ)を採食する、いわばサンゴの天敵であるオニヒトデによる食害が、近年、急速に増大しています。
オニヒトデは口や内臓を裏返しにして体外に出し、サンゴをなめるように食べ尽くしてしまいます。
オニヒトデが増えた理由についてはよくわかったいませんが、水質の悪化などによりオニヒトデの天敵であるホラガイが少なくなったことや、赤土被害で濁った海水がオニヒトデの生息に好都合である可能性などが指摘されています。 - 病気の蔓延
- ここ数年、サンゴが死滅する原因として急速に注目を集めるようになったのが、サンゴの病気です。感染症や腫瘍など、数種類のサンゴ病が確認されていますが、土壌細菌や、人や家畜の腸内細菌など、陸上から流れ出た細菌によるものが含まれていることが明らかになってきています。
治療法は、まったく確立されておらず、今後、いっそうの広がりをみせることが心配されます。