今年もよろしくお願いいたします。
年末に「里山いきもの共生キャンプ」の構想と基金支援のお願いをしまして、
年明けから基金への振り込みいただいております。
ありがとうございます。
今年は特に、この「共生」という言葉にこだわってこの新たなキャンプはじめ
色々な里山での活動にチャレンジしてみたいと思っています。
そもそも里山とは様々な生き物たちの「共生」が結晶している場です。
ネイチャーと呼ばれる原生自然とは違い、
そこには、人間の農的な営みも積極的に参加しての共生なので、
自生植物や野生動物に、栽培植物や飼育動物も混ざっての
里山独特の共生ハーモニーが生まれます。
そのことがもっと良く見えて体験できて語り合えるような
そんな見学+体験+語り合い型キャンプを作りたいと思っています。
今年はその土台となるフィールド拠点作りからのスタートになります。
引き続き、2月いっぱい基金への賛同ご支援よろしくお願いいたします。
ところで、ここからは新年早々
かなり個人的かつ里山活動と直接関連の薄い長文になってしまうので躊躇してもいたのですが、
今回の基金で建てる予定のキャンプフィールドの小屋の使い方と関係しているので、
やはりあえて書くことにしました。気の向いた方だけお付き合いください。
人生、思いもよらぬ出会いが出会いを呼んで、
運命とか使命と呼ばれるような重たいバトンを手渡されることがあります。
16年前に、無名なハンセン病詩人であった祖母の弟・志樹逸馬の
直筆遺稿を奄美大島に住む元夫人から手渡されました。
岡山の孤島のハンセン病療養所内で書き綴られた60冊にも上る膨大なノートです。
逸馬の死後、夫人がなけなしの財産をはたいて血の出るような思いで出した詩集を含む
2冊の詩集が出されていましたが、もちろん逸馬自身は全くの無名。
遺稿がこのまま、私の家で埋もれても不思議ではなかったのですが、
詩に共感した当時大学生の込山志保子さんが卒論で取り上げてくださったりして、
わずかな細い糸がつながり、ほんの一握りのひとたちに細々と読み継がれていました。
ところが一昨年、詩人で批評家の若松英輔さんがNHKの番組で
志樹逸馬の詩をとりあげてくださり、その後、込山さんの卒論から遺稿を知って、
岩手まで訪ねてくださり、2冊の絶版になった詩集をあらたに編み直したいという
びっくり構想を伝えていただきました。
この出版大不況時代に、無名の詩人の詩集を出版するなんて、
まずありえない有り難さでありますが、
さらにもう一つ、ありえない構想をすすめられたのです。
「こういう詩人の遺稿をゆっくり静かに読める場を作ってみてはどうか」、と。
「求める人は必ずいて、その場所は都会から遠ければ遠いほどいいと思います。」
という若松さんの言葉が心に引っかかったまま約1年・・・
込山さん、若松さんのご尽力で年末に素敵な装丁の
新編・志樹逸馬詩集が出版されました。
実に没後60年目の奇跡的な出版が、しかも予想以上の売れ行きだとお聞きしています。
(誰よりも真っ先にお伝えしたい元夫人は、
数年前に92歳で永眠されたことが、何よりも残念ですが、
彼女は決してこのような大それた展開を望んでいたわけではなく、
もっとギリギリのところで、必死に次の世代へ無事に渡すことだけを
自分の役目として、実に45年もの間、この遺稿を守り続けてくれたのだと思います。)
詩人・志樹逸馬は、11歳でハンセン病を発症して以来
隔離療養所での生活を余儀なくされて43歳で亡くなるまで、
苦しい闘病の中で、愛妻に支えられながらひたすらに詩を書き続けました。
療養所の中で、養鶏や畑仕事を懸命にする中で生まれた詩も多く、
いま、岩手の山なかでこんな暮らしをしている私には、
格別の共感が沸きあがる詩も数々残されています。
そんなわけで、今回キャンプ地に建てる小屋(ミニログハウス)は、
里山のいきもの資料館であり、語り場でもあるのですが、
もう一つ、この詩人・志樹逸馬の遺稿を訪ねてきた人のために、
それを静かに読む場所としても提供する準備したいと考えています。
これはいわば、里山の地上を生きるいきものたちと
天国の詩人の、今風に言えばシェアハウス?であり、
これも一つの「共生」かな、と思ってもいます。
by 里山おやじ
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