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「国会も「学級崩壊」?」(「日本経済新聞2010年1月29日朝刊2面) [2010年01月29日(Fri)]
国会序盤戦、審議中に、私語、閣僚を含めて与野党から品がないやじ、審議中の携帯電話いじり、など、学級崩壊の様相を呈してきたとのこと。事態は平野官房長官は28日の閣僚懇談会で「不規則発言は厳に慎むように」という異例の注意をするに及びました。

与野党の議員ともにイライラが高まっているようです。こうした常識・マナーに属する部分で国民の代表たる国会議員が醜態をさらすのは困ったものですが、私が国会論戦を見ている限り、もっと深い所に問題を感じてしまいます。

何かといえば、論戦に垣間見える議員の政策軽視の姿勢です。簡単に言えば、自分たちが今まさに議論している政策について、あまり理解していないで議論しているように見えるからです。公開の場で、自分が理解していないことを議論しなければならないというのは非常にストレスがたまりますので、イライラの原因はそこにも起因していると思います。

話題となっている財務大臣の「乗数効果論争」のような、所管している政策への理解の浅さが前面に出たものをはじめ、議論を聞いていてもお互い言いっぱなしで全く深まらないものばかりなのです。

国会審議の「政治主導」は大変結構なのですが、その前提には政治家が、政策についてよく理解しているという前提があります。政治家の役割として「政局」だけでなく「政策」も自分たちでやろうと思ったら、必死で勉強しなければならないはずです(本来であれば「そもそも政治家に政策立案能力はあって当然」というモードにならなければなりませんが、それには時間がかかるでしょう)。

残念ながらこれまでの国会論戦を聞いている限り、そのような姿勢は見られません。むしろ理解していない問題になると途端に不機嫌になるだけという状況がみられます。

この原因はおそらく、野党が質問通告をこれまでより漠然としたものにしていることと、閣僚が勉強不足であることの両方にあるように思います。

このままの状況が続けば、民主党への支持はますます下がっていくものと思われます。昨日の日経新聞の世論調査では、内閣支持率が45%、不支持率が47%とついに逆転しました。

一番いけないのは、先日前原大臣が国会審議で行ったタイプの逆ギレです。政権交代後は鳩山総理をはじめとしてこうしたものの言い方をする民主党議員の方は多かったですが、未だに言っている人がいるのには驚きです。

野党になった自民党の質問に対し、「もともとはお前が原因を作ったんだ。お前に言われたくない」と言うのは、議論ではありません。単なる議論の放棄です。政治はあくまで未来のためにあるはず。野党に転落した自民党が現在を出発点に、未来についての質問を与党にしてはいけないとしたら、誰が国会論争すればよいのでしょうか。今回の前原大臣のような姿勢は真の意味での国会軽視だと思います。

先の日経新聞の世論調査では、民主党の支持率が下落しても自民党の支持率はほぼ変わらなかったそうです。こうした結果に民主党が安心することなく、気を引き締めて国会で政策論争をしていただきたいです。

「政権交代時代」においては、受け皿たる新党が現れた時に一気に支持が集まりますので、決して油断できる状況ではないと思います。
Posted by 佐藤孝弘 at 18:37 | 政治 | この記事のURL
政策提言のお知らせ「グローバル化する国土資源(土・緑・水)と土地制度の盲点〜日本の水源林の危機 II 〜」 [2010年01月28日(Thu)]
このたび東京財団の「国土資源保全研究プロジェクト」より、政策提言「グローバル化する国土資源(土・緑・水)と土地制度の盲点〜日本の水源林の危機 II 〜」を公表する運びとなりました。

近年、グローバルな資源争奪戦が繰り広げられる一方、土地、森林、地下水といった自然インフラを守るための法律や制度が日本ではまだまだ整備されていないのが実情です。

本提言では関連産業の構造や諸外国な例を踏まえた上で、これらのインフラを国としてどう守っていくかについて重要な提言を行っています。こうした自然インフラは一度毀損されると取り返しがつかないことになりますので、長期の目線でその保全に取り組んで行かなければなりません。

東京財団の平野研究員と吉原研究員を中心に書きあげた渾身の力作となっておりますので、ぜひお読みください。
「年金改革 参院選前に着手」(「日本経済新聞」2010年1月26日朝刊1面) [2010年01月26日(Tue)]
政府は、今夏の参院選前に、年金制度の抜本改革のための関係省庁による協議会を設置する検討に入ったとのこと。スケジュール的には前倒しだそうで、大いに歓迎すべきことだと思います。

民主党が従来から提案してきた「最低保障年金」は、消費税を財源とすることとなっているため、必然的に消費税増税の議論とセットになります。今回の決定はその点も踏まえたもののようです。

ひとまずは政府部内での検討のようですが、個人的には、そこで論点整理が済んだら、与野党で年金問題を議論する場を設けるべきだと思っております。理由は簡単です。年金制度は極めて長期的な視野が必要な政策分野の一つだからです。これまでの年金改革の議論は、基本的には積立方式が部分的に混じった賦課方式という、既存の制度を前提に「保険料を増やして給付を減らす」というマイナーチェンジの繰り返しでした。

それに対し、今回民主党がしようとしている年金改革の議論は、50年に一度、といったスパンで考えるべきものです。そうなると、検討のプロセスも、これまでとは違ったものが求められるでしょう。

昨年から日本の政治は「政権交代時代」に入りました。たとえ民主党政権だけである年金制度改革を決めるにしても、その検討や、新制度決定後の制度移行には時間がかかります。途中で政権交代が起こったとき、それまでの過程がすべてひっくり返され、また一から検討、ということでは、いつまでたっても問題は先に進まないということになります。

年金制度改革がやっかいなのは個人レベルでの「損得」の議論がつきものだからです。例えば、最低保障年金の下では、これまで保険料を納めていなかった人も年金を受給することになりますが、これを「ずるい」と主張する世論も出てくるかもしれません。

この観点からみると意外と重要になってくるのが移行期間の問題です。そうした「損得」の議論を避けようとすればするほど、移行期間は長くなります。逆に、移行期間を短くしようとすればするほど、この「損得」の部分が多くなるという関係にあります。

そういう問題はあるでしょうが、移行期間40年というようなことでは、あまりにリアリティがなさ過ぎますので、どこかで政治決断で移行期間を短くする必要があるでしょう。これも主要政党の合意による、「国民の総意」の擬制が必要なのではないでしょうか。

少なくとも、急激に進む少子高齢化の下、現在の制度では持続可能性が薄く、また世代間の負担の差が激しすぎるという問題意識はおそらく与野党とも共有できると思います。また国民の関心という点では、どんなアンケートでああっても、年金は関心が最も大きい政策課題に位置しています。

こうしたことを考えますと、少なくとも主要政党が参加する検討の場が必要だと思います(実は「子ども手当」などでも全く同様の事情が存在するのですが…)。

国会改革の議論とからめて考えますと、参議院をそのような長期的な視野が必要な政策についての「議論と合意」の場としていくことが考えられます。そうしたプロセスの面も含めて、日本が直面する政策課題を中心に政治のあり方を見直すことが今ほど求められているときはないと思います。
「税・社会保障の共通番号制度「秋にも法案提出」」(「日本経済新聞2010年1月22日朝刊1面) [2010年01月22日(Fri)]
峰崎財務副大臣が、昨日の記者会見で、税と社会保障の共通番号制度について、秋の臨時国会にも法案を提出する方針を示したとのことです。基礎年金番号、住民票コード、新しい番号創設の3案から、利点や欠点を検討して税制の番号にも活用するとのこと。

ようやくこの案件が具体的政治日程に乗ったようで、感慨深いものがあります。現在の日本では給付つき税額控除をはじめ、「所得」に着目した様々な政策の必要性が高まっています。そのインフラとしての番号制度の必要性を、東京財団の「税と社会保障一体化研究」プロジェクトは訴え続けてきました。

プライバシーの問題なども指摘されますが、幸い、海外で既に導入している国がありますので、それらを参考に、プライバシーの問題やシステムの問題を実務的に詰めていけばクリアできると思います。東京財団としても、実現に向けてさらに活動を続けていきたいと思います。
中小企業の会計基準について2 [2010年01月20日(Wed)]
昨日のエントリで、中小企業の会計と法制度の関係について書いたのですが、それを読んだ同業の方に「最近の状況含めてもう少し教えて!」と言われましたので、続きを書いてみようかと思います。

2005年より、新会社法が施行されてからも、商法の会計についての考え方は変わりません。旧商法の「公正ナル会計慣行」の規定は、新会社法431条の「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」とされましたが、現代語化されただけで趣旨は一緒です。

手元ある江頭先生の「株式会社法第2版」(有斐閣)によると(写真は第3版)、

「では、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」とは何か。企業会計審議会が公表する「企業会計原則」を始めとする会計基準は、一応それにあたると推定される。しかし、当該会計基準の内容は基本的事項に限られ、網羅的ではない。また、それが唯一の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」であると解すべき理由はない。とくに中小企業の場合には、当該会計基準と異なる会計処理をなすことが直ちに違法といえないことが少なくない。たとえば、会計参与設置会社である中小企業の会計は、右の会計基準より簡便な「中小企業の会計に関する指針」(平成十五年八月)によることが適当とされており、それ以外の中小企業には、より幅広い会計処理も認められる。ここの会社にとっての「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」の内容を最終的に決定するのは、裁判所の役割である。」

実に明快ではないでしょうか。IFRS(あるいは中小企業向けIFRS)を中小企業にも一律強制適用しようとすると、上記のような会社法の解釈とは根本的に対立することになります。

また、仮に強制適用の対象を上場企業に限ったとしても法的に重大な問題があります。

会計基準は実際上、国民の経済活動に対して極めて大きな制約となります。仮にIFRSを国内企業に強制適用した場合、海外の一機関にそうした権限を委ねることとなります。

日本国憲法は“法の支配”を原則としておりますので、日本国民による民主的な正統性付与のプロセスが一切なく策定されるIFRSの強制適用は憲法違反の恐れがあり、そう指摘する学者の方もおります。そうした点を考えますと、少なくとも一律強制適用ではなく、選択適用にして離脱のオプションを用意しておくことは必要なのではないでしょうか。

今後の議論では、会計基準設定主体の“正統性”が重要なポイントになると思います。ちなみに、上場企業の会計基準については、長らく大蔵省所管の企業会計審議会で議論、制定されてきました。ところがその機能は2001年より財団法人財務会計基準機構に移り、その内部にある企業会計基準委員会(ASBJ)によって作成されることになりました。これは、 国際会計基準の設定主体である国際会計基準審議会(IASB)が、主要国の会計基準設定主体と直接の連携をとるという方針転換を受け、我が国でも、カウンターパートとしての民間の設定主体が必要ということで作られたものです。

会計士業界の方は、「会計基準は「慣習」であり、民間団体が作るのが望ましい」ということを当然のことと考えておられるようですが、本当にそうでしょうか。そもそもこういう発想は慣習規範を重視する英米型の法体系から出てきているのであり、その考え方がグローバル・スタンダードであるべきかどうかは自明ではありません。

IFRSは、その内容の妥当性だけでなくこれらの根本的な法的問題も惹起しますので、十分な議論を尽くすべきかと思います。
Posted by 佐藤孝弘 at 01:49 | 経済 | この記事のURL
「中小向け会計基準作成へ」(「日本経済新聞」2010年1月19日朝刊4面) [2010年01月19日(Tue)]
企業会計基準委員会(ASBJ)、経団連、日本商工会議所などが、非上場企業の会計基準作成に乗り出すそうです。2015年にも上場企業に国際会計基準(IFRS)が強制適用される可能性もある中、非上場の中小企業に負担がかからないように簡素化した会計基準を作る方向で検討するとのこと。

これは実務への影響が極めて大きい話なので、しっかり検討していただきたいと思います。事実関係から行きますと、国際会計基準の受容についての金融庁が予定しているスケジュールですが、

「2012年までに、上場企業について、2015年から強制適用するかどうかを決める」

ということになっております。

非上場企業はこの中に入っておりません。なぜなら、上場企業の会計は金融商品取引法(かつては証券取引法)の世界であり、非上場企業の会計は、基本的に会社法(かつては商法)の世界だからです。

中小企業の会計基準というのは、長い間、極めてあいまいな位置づけにありました。旧商法には会計基準に関する詳細な規定はなく、具体的な会計処理の方法は「公正ナル会計慣行」にゆだねられてたわけです。

ところが、「公正ナル会計慣行」の意味は具体化されずに放置されていました。とはいえ全ての会社は貸借対照表と損益計算書を作成しなくてはなりません。そこで非上場の中小企業が参考にしたのが、法人税法の規定です。税は租税法律主義の要請もあって、会計と違って細かいところまでルールが決まっています。そこで非上場の中小企業は事実上税法を参考に会計処理を行うようになりました。例えば減価償却にしても、税法が定めるルールや耐用年数に基づいた処理をしていたわけです。

このように、非上場の中小企業においては、会計処理の方法に税務が大きな影響を与えています。法人税法74条には、以下のような規定があります。

「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。 」

これは、「確定決算主義」と呼ばれるものです。「確定」とは株主総会で決算書が承認された状態を指します。こうして確定した利益を基礎に、税法の観点から加算・減算した上で課税所得が決まるという考え方です。こうした考え方は国によって異なり、アメリカなどでは税と会計は切り離され、別々に計算するようです。

日本では税と会計のリンクが強いほど、決算書の真実性や公正性が担保され望ましいということで、確定決算主義の重要性が強調されてきたわけです。

一方、株式上場企業の会計基準については、商法と切り離され、証券取引法の規制のもと、詳細なものが定められてきました。こちらは「公正ナル会計慣行」ではなく「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」として、企業会計審議会が随時基準を更新してきたという歴史があります。

商法学者の標準的な解釈においては、企業会計審議会が作る基準は「公正ナル会計慣行」のひとつではあるが、他にも「公正ナル会計慣行」はありうる、という考え方が一般的でした。例えば、非上場の中小企業には別な基準が「公正ナル会計慣行」として並立しうるといった考え方です。

平成10年〜12年頃にかけて、上場企業においては、時価会計の導入の波が日本にもやってきました。国際的な時価会計へのシフトにあわせ、我が国でも金融商品会計基準や退職給付会計など、大きな制度変更が行われてきたわけです。こうした会計基準は当然、証券取引法の世界であり、先ほどの商法の解釈からすれば中小企業には適用はされないはずですが、このことは明確にされずにおりました。

上場企業の会計基準が複雑化する中、いよいよこの問題にケリをつけようと、平成14年に中小企業庁が「中小企業の会計に関する研究会」を立ち上げました。これは、中小企業における「公正ナル会計慣行」を明らかにしようとするもので、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、商法学者、税法学者、会計学者、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、金融機関など、関係者が集まって議論され、最終的には大部の報告書が完成しました。

私は当時中小企業庁でまさにこの研究会の担当者でして、報告書の原案もかなりの部分は執筆も行いました。この報告書では、会計「基準」とまでは言っておりませんが、事実上会計基準にあたるものが提示されました。これは、中小企業にとっての「公正ナル会計慣行」を明らかにするための戦後初の試みだったと思います。

この報告書は、4団体(日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所、企業会計基準委員会)に引き継がれ、「中小企業会計指針」として毎年更新がなされてきました。中小企業の会計については、まずはこの「会計指針」を徐々に普及していくという目標が建てられたわけです。

ただ、いきなりこの「会計指針」を中小企業に強制適用するわけにはいきません。中小企業といっても法人企業だけで200万社以上も存在し、その実態も多様です。しかも、戦後50年もこの問題を放置してきたわけですから、普及にも同じくらいの時間をかけてやるくらいの覚悟が必要です。

ここから先は聞いた話ですが、この4団体の議論においては、「会計指針」の内容を上場企業が用いている会計基準に合わせる方向での見直し論がリードし、本来の趣旨である、中小企業にとっての「公正ナル会計慣行」を探るという趣旨が貫徹されていないといわれています。

背景には「会計基準はひとつであるべき」というイデオロギーと、そうではない商法の解釈の違いがあり、このことは公認会計士と税理士の業際問題ともからんで複雑な状況を生み出しています。

こうした状況の中、上場企業におけるIFRSの導入を機に、中小企業の会計のあり方についてももう一度整理し直す必要がありそうです。この記事の検討もその試みの一つだと思います。

実は、中小企業向けIFRSというものがすでに存在しております。こちらはIFRSの簡素化版であり、簡素であるとはいえ、中小企業へ適用されたときに与える影響は極めて大きなものとなりそうです。IFRSはこれまでの取得原価主義の会計基準とはまったく異なる思想で作られておりますので、これまで日本が堅持してきた確定決算主義との整合性も当然議論の俎上に上ることと思います。

「会計基準はひとつであるべき」というイデオロギーを信じる人、あるいはIFRSの導入によって自分の仕事が増える人は、すべての中小企業にIFRSを適用すべきと主張するでしょう。「いつか見た光景」がまた繰り広げられると思われます。

会計の問題については、東京財団でも今後研究していきたいと思いますが、基本的には、「ある会計基準がそもそも会計基準として質の高いものか」ということと、「会計基準のユーザー(会社と金融機関などの関係者)の役に立っているか」ということをベースに検討がなされなければなりません。今後様々な場所で検討がされることでしょうが、その議論はイデオロギーとは切り離し、真にユーザー本位の基準を目指していただきたいと思います。
Posted by 佐藤孝弘 at 13:49 | 経済 | この記事のURL
「予算審議「政治とカネ」が影」(「日本経済新聞」2010年1月18日朝刊3面) [2010年01月18日(Mon)]
いよいよ本日より通常国会が召集されます。当面の案件はもちろん2009年度2次補正予算案と、2010年度予算案です。

本来であれば、「短期的な景気対策と長期的な財政再建をどう両立させるか」という、政権交代前から日本が抱える重要な政策課題について、骨太の議論が行われるべきところかと思います。ところがこの見出しにあるように焦点は「政治とカネ」、になってしまいました。

このままでは、「何のために政権交代したのか…」と多くの国民が感じてしまいます。政治には政権運営(政局・選挙含む)の側面と政策の立案・実行の側面がありますが、実際に国民の生活に影響を与えるのは後者です。政治資金の問題は重要ですが、並行して、与野党で政策の議論もしっかりとやっていただきたいと思います。

本日の朝日新聞一面に、最新の世論調査が載っておりますが、内閣支持率が42%(前回48%)、不支持率が41%(前回34%)と急速に悪化しております。

政権交代時代の政治は、良くも悪くも「支持率政治」の側面が強くなります。総理は自らの発言や行動が支持率に与える影響について、もう少し注意してみると良いかもしれません。

ポイントは「党の体質」と「リーダーシップ」です。

自民党が支持を失ったのは、だれがリーダーになっても足の引っ張り合いになり、かつリーダーがそれらの問題を捌くことができず、政治が一向に前へ進まないという、「党の体質」が嫌われたためです。

今後はどの政党であっても、特定の人物や案件への批判が「党の体質」批判に転化したとき、ものすごい勢いで支持率は低下していきます。

そして、55年体制の頃と異なり、投票行動によって政権交代が起こることを国民が知ってしまいました。政治家サイドも、うまく国民の受け皿となれれば一挙に支持を得られることを知ってしまいました。このままいけば7月の参院選までに民主党批判の受け皿となる勢力が現れ、支持はそちらに流れるでしょう。

今、問われているのは民主党の政党としての体質だと思われます。
Posted by 佐藤孝弘 at 13:54 | 政治 | この記事のURL
「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」上杉隆 [2010年01月15日(Fri)]
2年とすこし前に出版された、気鋭のジャーナリストによるルポです。政治の問題を考えるにあたり、この十年ほどの政治のおさらいをしようと思い、とりあえず手元にあったこの本を読んでみました。

本当にスキャンダルが多かった政権だなあと改めて思いました。出てくるもので主なものは以下のとおりです。本書は噴出するスキャンダルと安倍政権の対応のまずさが精緻に描かれています。

(2006年)
11月〜郵政造反組復党問題
11月〜タウンミーティングやらせ質問問題
12月 本間税調会長辞任
12月 佐田玄一郎行革担当大臣辞任
(2007年)
1月 柳沢伯夫厚生労働大臣の失言(「産む機械」発言)
1月〜教育再生会議の迷走
2月〜消えた年金問題
3月〜松岡利勝農林水産大臣の「ナントカ還元水」問題
6月 久間防衛大臣の失言(「原爆投下はしょうがない」発言)
7月 赤城農林水産大臣の事務所費架空計上問題

これで参院選に臨んだのだから負けても当然かと思えてきます。やはり政権発足直後の「郵政造反組復党問題」への対応の失敗が全ての綻びの始まりだったと思います。本書は危機管理のケース・スタディという読み方もできると思いますので、まだ読んでいない方はぜひどうぞ。

一方、安倍政権の政策面については、ほとんど書かれておりません。個人的に当時を思い出しますと、これだけのスキャンダルの中、それなりに政策的に新しい取り組みも行っていたように思います。

例えば、航空政策ですが、現在前原国土交通大臣が積極的に推進しているオープンスカイ(航空自由化)政策は、安倍政権下の「アジア・ゲートウェイ構想」の一丁目一番地の政策です。こうした地ならしがあったからこそ前原大臣も迅速に政策を打ち出せたのだと思われます。

また、「アジア・ゲートウェイ構想」では羽田空港のハブ化について書いておりませんが、おそらく検討段階にはあったでしょう。ただ、「一県一空港」的空気が支配する自民党においては、そういうことを言った時点で総叩きに遭うことは目に見えているので初めからあきらめたのではないでしょうか。

安倍政権の実績のうち、防衛庁の省への昇格、教育基本法改正、海洋基本法、国民投票法、パートタイム労働法改正、「再チャレンジ」政策などは、政策論としてそれぞれ論じる意味のあるものだと思います。(本書も含め)政権運営のまずさばかりが強調されがちな安倍政権ですが、政策の観点から見直してみれば別な課題も見えてくるように思いました。
Posted by 佐藤孝弘 at 21:23 | 政治 | この記事のURL
「特別会計見直し前倒し 財務相指示 11年度の財源狙う」(「日本経済新聞」2009年1月13日朝刊3面) [2010年01月13日(Wed)]
菅直人財務大臣が昨日の閣議後の閣僚懇談会において、2011年度予算編成に向けて各省が所管する特別会計や独法、公益法人などの見直しを徹底するよう指示したとのこと。

記事には「予算案を審議すらしていない段階で次の予算案の財源探しを始めるのは異例」と書かれておりますが、こうしたスピード感あふれる「異例」ならば大歓迎でしょう。子ども手当の完全実施などで歳出がさらに増加するのは今からでも分かっています。独法や公益法人は数も多く、今から始めて早すぎるということはありません。

ただ、特別会計の見直しについては、ぜひやってほしいのですが、期待しすぎると期待はずれになるかもしれません。民主党は選挙前から一般会計と特別会計を合わせ200兆円の中から無駄を削ると言い続けてきました。ところがこの削り代(けずりしろ)は意外と少ないのです。以前当ブログでもご紹介した「特別会計のはなし」の平成21年度版11ページ〜によりますと、平成21年度予算における特別会計の重複計上を除いた歳出純計は169.4兆円です。(以下引用)

「さらに、歳出純計額の中には、1国債償還費等79.5兆円、2社会保障給付費(法律に基づく給付そのものを指し、事務費等は含みません。)52.6兆円、3地方交付税交付金等17.9兆円、4財政融資資金への繰入れ9.5兆円が含まれています。これら4項目の歳出は、1財政構造改革、2社会保障制度改革、3地方財政改革、4財政投融資改革、といった視点から議論を行っていかなければならないものです。
 このため、特に特別会計という会計制度そのものを切り口とした見直しの対象となる事務・事業の歳出額(=「特別会計見直し対象経費」)は、歳出純計額からこれらを除いた10.0兆円であると言うことができるでしょう。」(以上引用)

簡単に言えば、特別会計169.4兆のうち、恒久的に毎年使える一般財源として削る余地があるのは10兆円分だけだということです。ずいぶんと小さくなってしまいました。特別会計の無駄の見直しへの期待があまり大きいと、「大山鳴動して鼠一匹」ということになりかねません。

以上の話と、いわゆる「埋蔵金」は別の話です。埋蔵金とは特別会計の資産と負債の差額のことでフローではなくストックです。一回使ったら終わりの財源です。「埋蔵金」は平成20年度より予算の穴埋めに使われ始めています。こちらは、数十兆は出る余地はあるかもしれませんが、それ以降は出ません。子ども手当は恒久的な制度ですから、埋蔵金を当てるべきではありません。

「ひとまず埋蔵金で数年間穴埋めをしておき、使い切る頃には消費税増税で対応」という考え方もありうると思いますが、そうであればそういう説明をはじめからするべきだと思います。このあたりの方針を明確にする形で議論が進むことを願っています。
「首相補佐官10人に倍増」(「日本経済新聞」2009年1月12日朝刊一面) [2010年01月12日(Tue)]
昨日、鳩山首相・小沢幹事長をはじめとして、政府・民主党首脳会議を開き、首相補佐官の定員を現在の5人から10人に倍増させる方針を決めたとのこと。また、副大臣や政務官などの政府内ポストを新たに15人増加するそうです。

「政治主導」の体制づくりとして結構なことではないでしょうか。ただ、この決定をした方々の頭の中に、この増員分にどういう仕事をしてもらうかの具体的なイメージが果たしてあるのかが若干心配ではあります。

焦眉の課題として、「政務三役が政策決定のボトルネックになっている」とか、「多くの官僚が指示待ち状態になってしまっている」といわれる現在の状況をどう変えていくかが重要です。これは、単に人員を増やすというだけでなく、仕事のやり方自体にメスを入れなければ改まらないでしょう。本質的には、「政治判断が必要な案件」と、「基本的に官僚に任せてモニタリングすればよい案件」を如何に見分け(仕分け?)るかということが重要だと思います。

こうした点はもっぱら“組織運営の実務”です。抽象的な次元での「脱官僚主導」といった話をする段階はもう卒業すべきでしょうから、実務的に取りたい結果をどうとるかをしっかりと詰めていただきたいと思います。

今後、これらの新設ポストにどのような人員を配置していくかで本気度がわかるでしょう。例えば民間人ポストに“有名人”を並べるだけ、といった人事では先が思いやられます。あくまで実務能力優先でいくべきだと思います。
Posted by 佐藤孝弘 at 18:39 | 政治 | この記事のURL
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