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「雇用情勢一段と厳しく」(「日本経済新聞」2009年3月31日夕刊) [2009年03月31日(Tue)]
2月の有効求人倍率は0.59倍。完全失業率(季節調整値)は4.4%とのことです。雇用情勢悪化の趨勢はとまらないようです。対策は待ったなしです。今こそ政治はリーダーシップを発揮すべき時だと思います。
Posted by 佐藤孝弘 at 22:33 | 経済 | この記事のURL
「小沢氏「辞任すべき」64%」(「日本経済新聞」2009年3月30日朝刊1面) [2009年03月30日(Mon)]
日経新聞とテレビ東京が実施した世論調査では、民主党小沢代表について「辞任すべき」と答えた方が64%だったそうです。一方、麻生内閣支持率は25%と、前回の調査とくらべて10%も上昇しました。

まったく予想通りの展開で、今後も小沢氏が辞任しないうちはこの流れは変わらないでしょう。仮にこの後自民党所属の議員に捜査の手が入り、その議員が役職を辞任するようなことがあった場合は小沢氏はますます苦しくなります。

こうなってしまった以上、小沢氏は如何にして「追い詰められて辞めざるを得なくなった」感が残らない形で辞めるかということかと思います。

また、同新聞の2面には「これからの首相にふさわしい人」アンケートが載っているのですが、1位は舛添厚生労働大臣(13%)、2位は岡田克也副代表(8%)だそうです(小沢氏は前回の17%から5%に急落)。

なぜ舛添氏にこれだけ期待が集まっているかはよくわかりませんが、舛添氏は参議院議員なので、「参議院議員は総理になれるのか」という少し興味深い問題が惹起されます。少なくともこれまでは参議院議員の総理は一人もいませんでした。

憲法67条は「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」と規定しており、衆議院議員か参議院議員かということを特に問題視していません。これだけみるとまったく問題ないように思われます。

ところが。手元にある「注釈日本国憲法下巻」(樋口陽一、佐藤幸治、中村睦男、浦部法穂著)を開いてみますと、以下のようにあります。

「本条は、内閣総理大臣が、「国会議員の中から」指名される旨規定しているのであるから、規定の文言上から言えば、内閣総理大臣は、衆議院議員であれ、参議院議員であれ国会議員であればよいことになる。しかし、学説は、一般に、議院内閣制が衆議院に基礎をおいていることから、内閣総理大臣が衆議院議員であることを本則とするものと解している。衆議院議員であることを本則とすることを、さらに一歩進めて、「憲法の趣旨は、衆議院議員であることを要求するにあることはいうまでもない」と解する見解、あるいは、「内閣総理大臣の選任について衆議院の優越を規定し、内閣不信任決議案を衆議院にのみ認めている憲法の精神からすれば、内閣総理大臣は衆議院議員の中から指名されることが適当」であるとする見解が出されている。また、「内閣総理大臣は衆議院議員であることが本則であり、これまでの運用もつねにそうであったから、それは習律にまで高まったといえよう」と解して、内閣総理大臣が衆議院議員であることを憲法上の習律とする見解も主張されている。」

「本則」とか「習律」とか、よくわからない言葉ですが、伝統的学説はかなりネガティブなようです。自民が舛添氏を担ぐとなると、こうした憲法論が出てくると思われます。

また、そのような学説上の論争と関係なく、世の中の多くの人が「総理は衆議院議員でなきゃ!」と思っていれば、それに合わせる必要があるため、舛添氏は次期総選挙で参議院議員を辞職し、立候補するかもしれません。今のところ舛添氏自身に目立った動きはありませんが、要注目です。
Posted by 佐藤孝弘 at 14:19 | 政治 | この記事のURL
「買収防衛継続など議決」(「読売新聞2009年3月27日夕刊2面) [2009年03月27日(Fri)]
サッポロホールディングスが本日定時株主総会を開き、サッポロが提案した取締役選任と買収防衛策の継続に関する議案が過半数の賛成で議決されたそうです。

スティールは2007年2月のサッポロへの買収提案以降、買収防衛策を盾に提案に応じない経営陣との交渉が難航し、双方の主張が平行線の状態でした。今年の2月27日、ついにしびれを切らしたスティールはこれまでサッポロと交渉していた株式33.3%買付提案を撤回し、次期株主総会での取締役の再任に反対することを表明していました。

その結果が今日出たわけですが、スティールの狙い通りにはいかなかったようです。昨年の株主総会期では、アデランスホールディングスの取締役の再任案の否決に成功し、スティール側の推す役員二名をアデランスは受け入ることとなったのですが、今回はダメでした。。

記事からはその詳細はわかりません。サッポロ側の安定株主工作が功を奏したのかもしれませんし、スティール側株主からまったく信用されていなかったのかもしれません。少なくともこれまでのところアデランスの株価や業績は全く向上しておりませんので、スティールの経営能力(あるいは有能な経営者を選ぶ能力)がないと判断された結果の可能性もあります。

二年以上にも及ぶ交渉はなんだったのかと思います。ブルドックもスティールも無用な消耗をつづけただけではないでしょうか。M&Aルールの問題はまだまだ終わっていないと感じます。
Posted by 佐藤孝弘 at 17:21 | 経済 | この記事のURL
「金融システムを考える」大森泰人 [2009年03月26日(Thu)]
金融庁の現役行政官による独白本です。2年ほど前に出て話題になって、読もうと思ってはいたのですが、ようやく読んでみました。著者は90年代後半の金融ビッグバン以降、一貫して金融行政の中心で改革を進めてきた方です。基本的には時系列で、当時の状況や考えが実に率直に記されており、政策を考える立場の者にとっては非常に勉強になります。

また、これを読んだ方は「なんて型やぶりな官僚なんだ!」と思うかもしれませんが、そうではなくて、個々人の正義感や哲学をしっかり持った上で仕事をしている官僚自体は少なからず存在します。ただ、それを通常は対外的にには出さないことと、縦割り行政の中でかき消されているだけのことです。

読んでいくと、「銀行中心のシステムから市場中心のシステムへと日本の金融システムを改革する」という一貫した考え方で金融システム改革がなされてきたことがよくわかります。たとえば以下のような記述があります。

「2001年春、小泉政権になってからは、構造改革なくして成長なしとか、最大の構造改革は銀行の不良債権処理であるといった、なかなかに定量的検証が難しいスローガンが強調されるようになりました。不良債権処理の痛みに耐えることを求める一方で、当時の柳澤大臣には、痛みを乗り越えた後の日本の金融システムの将来像を示さなければという思いが強くなりました。(中略)不良債権をふたたび日本にとっての桎梏にしないためには、実体経済のリスクが銀行だけに集中してしまう金融システムを、市場中心に再構築しなければならないということです。これはビッグバンの意図と同じですが、今回はより切実でした。
 銀行が、企業の信用リスクを判断して貸付を行うのは将来的にも重要な役割ですが、完済されるまで貸付債権を抱え込むから、景気の変動や産業の盛衰とともに不良化してしまいます。貸付は、さっさと切り離し証券化して広く薄く国民にリスクシェアしてもらうほうが、金融システム全体としてはかえってリスクに強靭だし、もちろん最初から株式や社債で調達してもいいわけです。」

これは、2004年に行われた講演のようです。このように、当時も今も、日本にとって「市場中心のシステム」は遠い目標だったのですが、最先端をいっていたアメリカの、強靭であるはずの金融システムが壊れてしまいました。世の中の発想が、巨大なバブルを起こさないよういかなる規制をすべきかという方向に変わってしまったわけです。日本にとっては、周回遅れだったマラソンが、突如レース中止になってしまったようなものですが、こういった点についての著者の現在の考え方を聞いてみたいと思いました。

また、このほか、敵対的M&Aの問題やグレーゾーン金利の問題など、世の中をにぎわせた話題がたくさん出てきます。金融行政の現場指揮官の当時の考えがわかる貴重な資料ですので、今後の日本の金融システムを考える上では必読書のひとつかと思います。
Posted by 佐藤孝弘 at 10:30 | 経済 | この記事のURL
「小沢代表続投を表明」(「日本経済新聞」2009年3月25日朝刊1面) [2009年03月25日(Wed)]
昨日のWBC決勝は感動的でした。特にイチローの最後の打席。

1.十回のあの場面で打席が回ってくる
2.一塁が空いているにもかかわらず相手投手が敬遠せず勝負に来る
3.しっかりと結果を出す

という経緯と結果は神がかりでした。昨日の試合は多くの日本人に勇気と感動を与えたのではないでしょうか。

今回のWBCでは日韓の強さが際立っていましたが、個人的にはアメリカの弱さが気になりました。メジャーリーグはドミニカ、ベネズエラ、日本など、世界中から最高の才能を集め、それによって最強なのですが、それ故にいざ国別対抗となるとスカスカになってしまいます。もちろん、アメリカは今回も有力選手の辞退者が多かったわけですが、それも含めて弱い部分が出たといえるでしょう。

これはスポーツに限らないようで、ある経済学者の方とお話をした際には「学者の世界もそうだよ」とおっしゃっていました。アメリカという国のビジネスモデルはやはり日本とはかなり違うことを実感しました。

さて、WBCの興奮が冷めやらぬ中、昨日夜にはイチローならぬ「一郎」が涙の続投会見を行いました。

これまで報道された疑惑への説明が十分なされたとは思えません。所属議員の地元の反応など、世論の動向を見て、「いける」と判断されたのだと思いますが、与党サイドが続投表明させるためにこれまでは攻勢を弱めていた可能性もあります。この判断が今後ボディーブローのようにきいてくると思います。いずれにせよ引きづづき、麻生総裁、小沢代表がそれぞれダメージをかかえつつも党首として居座る「奇妙な均衡」の状態が継続しそうです。

今度の総選挙の最大の争点が西松事件とその対応への審判ということであってはいけません。あくまでも日本の将来像とそれを実現する政策で戦ってほしいものです。メディアもそういった論調で報じていただきたいと思います。
Posted by 佐藤孝弘 at 10:01 | 政治 | この記事のURL
「だまされないための年金・医療・介護入門」鈴木亘 [2009年03月24日(Tue)]
最近話題の本書をようやく読んでみましたが、多くの人に読んでいただきたい良書だと思います。非常にわかりやすく書かれているだけでなく、しっかりと政策提言もついています。

本書の問題意識は、現在の年金・医療・介護の制度設計が基本的に「賦課方式」(現役世代が高齢者世代の給付を支える仕組み)にあり、賦課方式だと急激な少子化が進む状況においては、極めて大きな世代間格差が生じるというものです。

本書で試算している、社会保障制度の「世代別損得計算」(各世代の「生涯受給額」の総額から「生涯保険料額」を引き、世代ごとの損得を出したもの)によると、1940年生まれの世代がプラス4850万円、2005年生まれの世代がマイナス3490万円になるそうです。差額は8340万円(年金のみでは5610万円だそうです)で、これだけの格差が容認されてよいはずがありません。

特に年金制度の部分が勉強になりました。年金改革について議論がいろいろと行われてはいますが、「賦課方式」を維持する場合には改革の手段として「負担の引き上げ」と「給付カット」しかなく、いくらその二つの手段を駆使しても、これから来る少子化による現役世代の負担の激増には対処できないとのことです。

年金についての本書の提言の基本スタンスは「世代勘定の積立方式」に移行し、世代内での助け合いを行う仕組みに変えることです。移行に際して必要な「清算」についても詳細に解説してあります。

さらに、政治的に「飲みやすい」年金改革案として、基礎年金財源の税方式化+積立方式への移行という案が出されておりますが、非常に現実的だと思います。いずれどこかの政党がこの案を担ぐことになるかもしれません。

ただし、本書でも何度か指摘されるように、この本のスタンスは保険の原則(応益負担)の強化であって、低所得者層へのケアなどは別途の対策が必要となります。ここは、東京財団でも提言している「給付つき税額控除」と組み合わせることで対処が可能だと思います。

いずれにせよ、これをベースに様々なバリエーションが考えられるしっかりした考え方だと思いますので、社会保障に興味のある方はぜひ読んでみていただければ幸いです。
「日本の将来像描け 有識者会議政府が検討」(「産経新聞」2009年3月23日朝刊2面) [2009年03月23日(Mon)]
与謝野馨財務・金融・経済担当大臣が22日のテレビ番組で、政府に日本の中長期的な戦略を話し合う有識者会議の設置を検討していることを明らかにしたとのこと。与謝野氏は、

「政策を議論すればするほど狭いところに入っていくが、国民は『おいらの国はどうなるんだ』と思っている。そういう大きな方向性を政治が国民に示すことが大事だ。4月中旬から幹の部分を議論したい」

と述べたそうです。

こういう話を聞くといつも、「あなた方はこれまで何をやっていたのですか」と思ってしまいます。麻生総理にしても、与謝野大臣にしても、初当選以来30年ほど政治家をやっているわけでして、いまさら「有識者会合」で意見を聞くということにものすごい違和感を感じてしまいます。

もちろん、政治家もなかなか忙しく、政策だけやっているわけにはいかないでしょうが、これまで30年あったわけですから、その過程で自分なりの「日本の将来像」を描き、さらに実行可能な政策まで落とし込んでおき、いざ政権中枢に入った際にはひたすら実行、ということができなければ長期間にわたって議員をやる意味はほとんどないと言ってよいでしょう。

これは日本の政治の最大の弱点です。「脱官僚」は結構なのですが、その代りに別な人に将来ビジョンを作ってもらおうという発想自体が政治を弱くしていると思います。外部の知恵を活かすことは大切ですが、基本中の基本である「自分のアタマで考え、決断、実行する」ことを政治家が放棄してはなりません。
Posted by 佐藤孝弘 at 10:58 | 政治 | この記事のURL
「小沢氏 見えぬ本心」(「朝日新聞」2009年3月18日朝刊4面) [2009年03月18日(Wed)]
民主党で「ポスト小沢」の動きがざわついているようです。記事によると、小沢代表の続投論、岡田克也氏、また、菅直人氏、鳩山由紀夫氏の待望論が出始めているそうです。24日が逮捕された小沢氏の秘書の拘留期限ですので、そこで進退を明らかにするとのこと。それを機に政局が一挙に動くことになる可能性があります。

今度の総選挙で民主党が政権をとれるかどうかは、仮に小沢氏が辞任となったときに、民主党内が結束を維持できるかという点にかかっていると思われます。民主党はこれまで失敗を重ねつつも、なんとかここまで持ってきましたが、ここで踏ん張れるかどうか、政権交代という大きな目標のために一致結束できるか問われています。

民主党全体としては、岡田氏が就任するのが最も世論の支持を受けられ、プラスなのではないでしょうか。まず、若さです(といっても55歳ですが、見た目のイメージが重要)。オバマ大統領のイメージとも相まって、プラスイメージだと思います。また、その手堅さは「ブレ」つづけてきた政治への一つの回答になりますし、なによりも過剰なまでの潔白さは政治資金の問題が今回の混乱のきっかけだけにアピールポイントになるでしょう。

また菅氏、鳩山氏ですと、小沢氏との「連帯責任」を唱えて反対する勢力が現れると思われますので、党内の対立が激化する可能性があります。

何度か当ブログでも書いていますが、こういった情勢の時、党内の力学の論理だけでなく、世論も勘案した最適な結論を出せるかどうかに、政党のガバナンスが問われます。そういう選択を民主党ができるか、要注目です。
Posted by 佐藤孝弘 at 15:25 | 政治 | この記事のURL
「雇用政策に関する提言(第二弾)」 [2009年03月16日(Mon)]
東京財団の石川和男研究員が雇用対策に関する提言の第二弾を公表しました。

提言はこちらをクリック

最近、新聞を読んでいて雇用の問題の記事を見かけない日はありませんが、議論百出で、必ずしも整理しきれていません。特に、緊急、短期、中長期といった時間軸や、非正規労働者対策なのか、労働市場全体への対策なのかといった政策目的をはっきりさせないままの議論が多いです。

本提言では、それらの論点を明確で簡潔に整理するとともに、今後とるべき方向性を示しています。ぜひお読みいただければと思います。
「思考停止社会「遵守」に蝕まれる日本」郷原伸郎 [2009年03月13日(Fri)]
企業コンプライアンスの第一人者による警告の書です。「法令遵守」の絶対性がメディア等で強調されすぎ、企業や消費者が「法令遵守」と聞いただけで思考停止に陥ってしまう現在の日本の状況を豊富な具体例とともに描いています。

たとえば食品偽装の問題では、不二家や伊藤ハムに対する過剰なバッシングについて解説した後、以下のように述べます。

「伊藤ハムは、大手のハム・ソーセージメーカーです。お弁当のウインナーソーセージを楽しみにしている子供たちも含め、多くの消費者のニーズに応え、食品を安定供給する社会的義務を負っています。それは、食品企業として最も基本的な義務です。
 そういう食品企業にとって、客観的に見て健康被害の恐れがない程度の問題でただちに工場の生産を全面的に止めることが、本当に社会の要請に応えることと言えるのでしょうか。」

そして、諸外国と比較してもはるかに高い基準を定めてその基準を上回っただけで公表を求められ、自主回収を行った上にメディアからバッシングを受ける日本の異常さを述べ、以下のように続けます。

「もっともメディア関係者の中にも、このような日本の食品をめぐる報道の異常性を指摘し、問題提起しているジャーナリストもいます。また、現場で取材に当たっている記者の多くも、程度の差はあれ、そのような問題を認識しています。ところが、それがマスコミ全体の論調にはまったく結びつかないのです。そこに、この問題をめぐるマスコミ報道の病巣の深さがあります。」

最後にあるような、個別の記者レベルでは正しく認識しても、マスコミ全体の論調が過剰になってしまう状況、というのはまさにかつて山本七平が警告してきた「空気」そのものでしょう。私が思うに、「空気」を打ち破るのに必要なのは客観的な事実や専門知識です。私が思うに、日本のメディアや政治は、専門家を上手く活用することができていないためにこのような過剰報道に走っているような気がいたします。

また、本書では耐震偽装問題や敵対的買収の問題など、私が担当する東京財団の研究プロジェクト「会社の本質と資本主義の変質研究」の問題意識と重なる記述が出てきます。

建築基準法の問題では、我々も提言で最大の問題として掲げた建築基準法や建物の耐震性能についての一般国民の「安全幻想」についてもしっかり述べられています。

「それにもかかわらず、一般の人には、建築確認が、現在のような高層化・複雑化した建築物についても安全性を確保する役割を果たしているように誤解されてきました。建築基準法による建築確認という制度が果たしている役割について、一般人の認識と実態との間に大きなギャップが生じていたのです。」

また、敵対的買収の問題では、ブルドックソース事件の最高裁決定を批判します。

「ブルドックソース事件判決は、株主の大部分が賛成し、スティール・パートナーズ側にも十分な補償が行われているのだから当事者間の解決方法として問題はない、との判断です。それが企業買収の世界全体にどのような影響を与えるか、という点への配慮は十分ではないように思えます。」

このように述べ、裁判所の判断に「市場の健全な機能の確保」という観点が抜けていることを指摘しています。(※なお、この敵対的買収の部分では拙著「M&A国富論」もご紹介いただいております)

以上のように、問題意識としては東京財団での検討と極めて近いものがありますが、解決の方向性としてはどのようなものがあるのでしょうか。

ヒントは第七章、終章に述べられています。おそらく、日本においては、アメリカのように日本の何十倍もの弁護士がいて、社会の隅々からトラブルを訴訟の場に持ち込み、判例を通じて法を形成していくという行き方はやはりなじみにくいと思います。

まずは著者も指摘するよう、法の背景にある社会的要請が何であるかを自分の頭で考える習慣を日本人が身につけていくことでしょう。それを補助する法曹資格者の強化も重要です。そして、もう一方では、実態に合わなくなったルールについては迅速に、かつ理論と実態の調和が取れた法改正を行っていくことでしょう。本書ではどちらかと言えば前者のアプローチを強調していますが、東京財団の検討では後者のアプローチをとっています。いずれにせよ、本書でも指摘するように法曹資格者をはじめとした専門家を社会の中で活かしていく方向は変わらないように思います。

最近の事例を幅広く網羅し、非常に読みやすい本でもあります。法律が専門でない方もお読みいただくことをお勧めします。
Posted by 佐藤孝弘 at 14:09 | 法律 | この記事のURL
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