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「特別会計のはなし」財務省主計局 [2008年04月30日(Wed)]
埋蔵金問題や道路特定財源の問題などで、最近特別会計についての議論が行われることが多い。本書は財務省主計局が国民向けに作った、特別会計を理解するための冊子だ。これは、書店販売ではなく、財務省ホームページから全文ダウンロードできる。

一般会計と比較して、とかく「不透明」といわれる特別会計だが、その全容を知るのにはちょうど良い。ただ、これを読む際には注意が必要である。あくまで財務省の目線で書かれているからだ。

例えば7ページの、「特別会計と一般会計の違い」の出だしはこうなっている。

「特別会計は、予算編成上の扱いや国会審議における扱いにおいて、一般会計との間に基本的な違いはありません。」

確かに建前上はそうだろう。しかし、実際の予算編成過程では両者には大きな隔たりがある。役人経験があれば誰でも知っていると思うが、一般会計と特別会計では、予算編成時の財務省の査定の厳しさが天と地ほども違うのだ。一般会計の予算については、その必要性などについて、財務省主計局が細かいところまでギリギリと詰めるのだが、特別会計となるとかなり緩い。これが特別会計が各省庁の既得権益化しているといわれる所以である。さらに特定財源(目的税等法律で使途が特定されている財源)が組み合わさると、ますます財務省のコントロールからは離れていく。

おそらくそのような状況は財務省としても望んでいないのだろうが、財務省自身は特別会計改革をあまり強く主張しているようにも思われない。政治サイドや他省庁に遠慮をしているのかもしれない。このような問題はおそらく、大きな政治的変動があった際に、政治の強いリーダーシップによって解決するしかないのだろう。

このように、多少“裏”を読む必要はあるものの、特別会計の概要を理解するのにはもってこいの冊子で、もっと国民に知られてよいと思う。
「日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ」飯尾潤 [2008年04月23日(Wed)]
昨年話題となった本書をいまさらながら読んでみた。現在の日本の統治構造を政官関係を中心に、正確に描写している。

自民党の部会における法案の事前審査の例では、以下のように述べる。

「政調部会でもそうだが、自民党の意思決定は通常は全会一致方式を採る。しかし異論が強いときには、「一任」という方式による。それは多数決によって、反対賛成が明確化することを避け、事後の調整を可能にする自民党の智恵である…(中略)…どうしても反対の議員は、それを考慮して、一任の前に退席することもある。少数者になった反対者は、こうして議事進行の邪魔をせず、また自らのメンツを保つことができる。もちろん一任を取り付けた側は、反対意見があったことを記憶し、反対であったにもかかわらず、それが了承されることを黙認した議員に対する配慮を忘れないことが大切である…(中略)…そうした貸し借り関係を、長期的、また、多角的に調整することで、議員同士の利害が調整され、安定した人間関係のネットワークが形成されるのである。」

このように、政治的な対立を「貸し借り」に収斂させる手法が至るところでみられる。官僚組織についても法案の事前審査や個別案件を通じて頻繁に与党と接触し、ここでも「貸し借り」関係が構築されているのが実態である。

本書の冒頭、著者は問いかける。
日本においては議院内閣制より大統領制のほうが権力も集中し、リーダーシップもとりやすいと思われている。ところが英米での認識は逆で、議院内閣制のほうが権力の集中が起こるものとされている。なぜ日本ではそのような認識となったのか?

この問い自体がそのまま現代日本政治の政治過程、政策決定過程の問題点を現しているのだが、そういった状況を一律に悪いことと見るべきかどうかを判断するには注意深い検討が必要だろう。現在の日本のやり方のほうが他と比べ効率的かもしれないのだ。

これらの問題を解くカギは、やはり「政党」であろう。著者も「民意の集約」「責任と権力の一致」といった原則を確立すべきと述べている。ただ、それを具体的に実現するための制度となるとかなり難しい。

「ねじれ国会」による混乱が続く今こそ「統治」の問題に正面から取り組むべきだ。本書はその出発点として最適の一冊だ。
Posted by 佐藤孝弘 at 15:42 | 政治 | この記事のURL
経済同友会政策提言「健全なM&Aを促す法改正を〜悪質な買収リスクを低減し、健全なM&Aの促進を通じて日本経済の持続的成長を図るために〜」 [2008年04月16日(Wed)]
経済同友会より、一昨日出された企業買収ルールについての政策提言

TOBルールの改正中心(会社法に関する部分は抽象的な記述に留まっている)で、東京財団案とは異なっているが、法改正なしに現在の状況は打破できないという問題意識の部分では一致している。経営者サイドからこのような意見が出てきたことは大いに歓迎すべきで、これを機により立法論を活発化すべきだろう。
「抜本的税制改革と消費税」森信茂樹 [2008年04月10日(Thu)]
東京財団上席研究員・森信茂樹先生が昨年秋に出した著作。近年の税制改革の世界的変化の流れを解説するとともに、消費課税の意義や考え方を述べ、最後には税制改革の政策提言も入っている。

非常に読みやすく、税制を勉強するには最適の一冊だ。私が特に関心を持ったのはいわゆるフラット・タックスの考え方。最近、「フラット・タックス」という言葉をいろいろなところで聞くが、「@消費税・所得税・法人税が一律の税率であること」又は「A所得税が一律の税率であること」のどちらかの意味で使われているように思われる。

本書で紹介されているのは、ホール・ラブシュカ型といわれるフラット・タックスで、消費をベースとし、個人も法人も単一のフラットな税率で一度だけ課税される税制だ。

もう少し詳しく言えば、

消費=賃金+利子+利潤+減価償却−設備投資
(「利子」〜「設備投資」の式の部分は法人のキャッシュフローを示す)

というように、消費を分け、賃金の部分に対しては個人段階で課税、それ以外の企業のキャッシュフローの部分については法人段階で所得税と同率で課税しようというものだ。

賃金に対しても一律の税率なので、限界税率が下がり、労働インセンティブは増加する。また、貯蓄や投資には課税しないことになるため、貯蓄や投資を促進することになる。二重課税もなくなり、非常にシンプルな税制となる。なんと、申告書がハガキ一枚のサイズで済んでしまうという。

いいことずくめのように思えるが、当然、逆進性(低所得者ほど、収入に占める税の支払いの割合が大きくなってしまう)は極めて高いという問題がある。

これに対する森信先生の答えは明快だ。税と社会保障を一体改革し、「給付付き税額控除」の制度創設で対応せよということである。給付付き税額控除については、近い将来東京財団で森信先生が政策提言を出される予定である。こちらも楽しみにしていただきたい。
「買収防衛策「株主が判断」急増」(日本経済新聞4月7日朝刊1面) [2008年04月09日(Wed)]
日本の上場企業の買収防衛策の導入状況に関する記事。敵対的買収者への防衛策の発動時に株主の判断を仰ぐ「株主判断型」が急増し、全体の4割を占めることになったとのこと。

言うまでも無く昨年8月のブルドックソース事件の最高裁決定の影響を受けた実務の流れであるが、全く理屈に合わない。一言で言えば、「経営者の責任逃れ」的な側面が強い。

防衛策の導入・発動には高度な経営判断と対応の迅速性が要請される。敵対的買収者が株式をどんどん買い増していく状況で、株主総会を急遽開催しての判断などできるのだろうか?また、「株主が良いと言っているのだから問題ない」という発想は経営者のモラルハザードをもたらすのではないか?

株主が判断するのはあくまで「現経営陣は会社の付加価値を高める能力の高い経営者かどうか」であって、防衛策の導入・発動の判断ではない。判例が実務をミスリードした典型的な事例であろう。

また、「敵対的買収者に金銭など対価を渡す可能性がある」防衛策を導入した企業が19社もあるとのこと。世界中のグリーンメーラーを日本に呼び寄せようとしているのだろうか?多くの識者が懸念していたことが現実に起こりつつある。

記事中、野村証券の西山賢吾氏によると、防衛策導入初期には、原則発動しない前提であったが、最近は「発動を意識した形に変化している」という。

アメリカではポイズンピル自体の適法性が強く信じられているため、絶対といって良いほど発動されない。ところが、日本の場合、防衛策を無視して買収者が買い増し、防衛策を発動した場合、裁判所が防衛策の差止めを容認する可能性がかなり高いと思われている。つまり、事前警告型含め、新株予約権の無償割当てによる買収防衛策の適法性は実務レベルではほとんど信じられていない。

それを証拠に、金銭交付型の防衛策を導入した昭和産業は、その理由として「法的な安定感が高まる」ということを挙げている。

結局は現在の法制度の問題である。法改正による対応をしなければ、現状の実務の流れは変わらない。法的インフラなくして「アメリカ型でいく」と強弁しても、意味がない。

2月に公表した東京財団の提言はこのような現状を避けるべく検討されたものである。本案に限らず、政府は法改正の議論を本格化すべきだろう。
Posted by 佐藤孝弘 at 09:36 | 経済 | この記事のURL