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「「外交革命」に日本はどう立ち向かうか」北岡伸一(中央公論2007年9月号掲載論文) [2007年08月10日(Fri)]
東京財団主任研究員の北岡伸一先生の論文。

戦争や経済の戦いからイメージの外交の戦いに移行している現在、日本はどのような行き方をすべきか、真正面から論じている。

いつもながらスケールの大きな分析と、具体的な提案を読むことができます。
先生ご自身の体験を踏まえた、空理空論一切無しの論考。

国家について考える者にとっては必読です。是非どうぞ!
Posted by 佐藤孝弘 at 13:31 | 外交 | この記事のURL
「ものづくり経営学 製造業を超える生産思想」藤本隆宏 [2007年08月02日(Thu)]
日本の製造業研究の第一人者、東京大学の藤本隆宏氏のものづくり論の新書版である。新書とはいえ、全560ページとかなりのボリュームがある。氏を中心とした「ものづくり研究センター」のメンバーも共同執筆している。

「製品とは、設計情報が素材に転写されたもの」という考え方に基づき、“強い”といわれる日本の製造業のどこが強いのか、その中身を詳細に分析している。

本書では、製品設計の基本思想をインテグラル(擦り合わせ)型とモジュール(組み合わせ)型に分ける。前者は、例えば自動車のように、構成要素間の相互依存性が高いもので、セット企業と部品企業の相互調整が重要になるような産業をさす。後者は、例えばパソコンのように、構成要素間の相互依存性があまりない産業をさす。
より具体的には以下の自動車(インテグラル型)の例がわかりやすいだろう。

「燃費性能を上げようとする時、もちろんエンジンが非常に重要であるが、それだけでは達成できない。ボディーの軽量化も重要なポイントになる。ところが、走行安全性を求めれば、むしろボディー剛性を強化、すなわち全体的に重めにつくるほうがよい。さらに、走行安全性にはサスペンションの関与が欠かせない要素である。…こうしたアーキテクチャでは、製品開発のプロセスで、部門間のコミュニケーションがきわめて重要になる。エンジン部門は、燃費を考えながら、馬力も出すという二律背反の問題を解かねばならず、同時に、この部分はエンジンでは解決できないからボディフレームのほうでなんとかしてくれ、といった横の連携が必要になるのである。」

日本はインテグラル型に強いとされる。本書によると、その理由は以下のとおり。

「日本企業がインテグラル型で強みを発揮する最大の理由は、この種の産業が日本の産業組織の特性と親和性があるからだ。インテグラル型で全体最適的な設計を目指すには、セット企業と部品企業が、それぞれ高い能力を持つのみならず、開発や生産のプロセスで発生する問題を共同で解決していく姿勢が求められる。ものづくりに対する考え方や、経営、仕事に対する姿勢が共有されていることが大前提だろう。」

たしかに、トヨタ式の導入などは、コミュニケーションが密接な日本型の組織でなければ難しい面だろう。実際、私も中小企業の工場でトヨタ式を導入する現場を見たことがあるが、社長、工場長、現場が一体となって改善に取り組むのを見て、「これは外国にはなかなかマネできないな」と思ったことがある。

ここまでは従来からの藤本氏の議論であるが、本書では、さらに環太平洋諸国の製造業の特徴についても分析が進められている。組織能力は地域に偏在するため、それぞれが相対的に強い分野で比較優位に立つということである。分析によると、中国・アメリカはモジュラー型が強く、日本がインテグラル型に強い、唯一といっていい国とのことだが、インド、ベトナム、タイなどはインテグラル型で優位に立つ可能性を秘めているという。

現在、日本型産業組織が大きく変容しているといわれる。日本の製造業の強みの源泉が、独自の組織能力にあるとすれば、従来型の組織づくりを消滅させるように誘導する政策は、競争力を減退させることになる。世界的にも国内でも経済の構造変化が進む中、それにあわせて変化することは大切だが、強みは強みとして残すべき部分もあるのではないか。本書でも、第一部第三章で「日本型年功制」とものづくりの親和性について、高橋伸夫氏が論じているが、この点、私が担当している、「会社の本質と資本主義の変質」プロジェクトにおいて、非常に重要な論点となると思われ、見極めていきたいと思う。

また、本書は「開かれたものづくり」と称し、ものづくりの理論を、サービス業などの非製造業へも応用できないかと試みている。顧客へと向かう、「設計情報のよい流れ」をつくることがものづくりの本質であれば、アウトプットがモノであろうとサービスであろうと同じであるという考え方だ。広く応用可能であれば、サービス業の生産性向上につながる可能性もあり、今後の研究が楽しみである。
Posted by 佐藤孝弘 at 09:53 | 経済 | この記事のURL