CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« 2011年04月 | Main | 2011年06月»
プロフィール

佐藤孝弘さんの画像
リンク
<< 2011年05月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
カテゴリアーカイブ
最新記事
https://blog.canpan.info/satotakahiro/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/satotakahiro/index2_0.xml
月別アーカイブ
最新トラックバック
「社会保障制度改革の方向性と具体策」について [2011年05月13日(Fri)]
昨日開かれた、「社会保障と税の一体改革に関する集中検討会議」にて、社会保障改革の厚生労働省案(「社会保障制度改革の方向性と具体策 ―「世代間公平」と「共助」を柱とする持続可能性の高い社会保障制度―」)が出ました。今後の改革案の土台となるだけに、重要な文書だと思います。

資料等はこちらをご覧ください

論点が多岐にわたっておりますが、社会保障財政に関連する部分についていくつかコメントさせていただきます。

7ページ「W社会保障制度改革の基本的方向性」に基本的な考え方が出ております。まず強調されているのが、「世代間公平」の問題です。人口構造による将来における高齢世代の増加と、将来世代への社会保障費用の先送りが指摘され、「世代間の公平を図っていくことが喫緊の課題である」としています。

この話には二つのポイントがあると思います。まず、今の日本の年金・医療・介護の財政方式は基本的に賦課方式をとっており、その場合逆ピラミッド型の人口構造になると、少ない現役世代で多数の高齢者への給付を賄わなければならず、その意味での世代間格差が発生します。もう一つは、同じく年金・医療・介護の給付財源には、一部財源が入っておりますが、税収によっては賄えず、国債で補っています。これによっても将来世代にツケを回していることになります。

理念の部分には書かれていませんが、前者について、社会保障制度の改革を、後者については増税を、というのがこの文書の意図なのだろうと思われます。

さて、具体策はどうでしょう。「Y個別分野における改革の方向性」を読んでみますと、抜本改革と言える部分の具体案がなく、やや残念な思いがしました。例えば、新しい年金制度については、社会保険方式による所得比例年金に税財源による最低保障年金を組み合わせた新たな年金制度を「検討する」とされています。それ自体は、民主党がかなり前から検討していることでしょうから、多くの人はその具体的な中身が出ることを期待していたはずです。政権交代から2年経った今でも「検討する」にとどまっているというのは遅すぎはしないでしょうか。

その点、「新しい年金制度の導入には、国民的な合意が必要であるとともに、社会保障・税に関わる番号制度の導入・定着や、歳入庁創設等、税と社会保険料を一体的に徴収する体制の構築などの環境整備が必要なことから、一定の準備機関が必要である。」とあります。

まったくその通りなのですが、そのようなことは自明であり、政権交代した時点でわかっていたはずです。1年もあればこのような制度の具体化についての検討はできたはずであることを考えると残念になりません。

結果として、年金改革の具体的な案としては、「現行制度の改善」になります。引用しますと、

「・ 働き方・ライフコースの選択に影響を与えないよう、厚生年金の適用拡大や被用者年金の一元化などを図る。
・ 低年金・無年金問題に対応するため最低保障機能を強化するとともに、能力に応じた負担を求めつつ、年金財政の持続可能性を確保するための制度改善を行う。
・ 公的年金制度を支える業務運営及びシステムについて改善措置を講じる。」

とのことです。これだけでは不明な部分も多いですが、現行制度をベースにしてマイナーチェンジをするのかという印象です。7ページの大きな問題意識に対応する政策にしては、インパクトが少なそうに感じます。この「現行制度の改善」がどのくらい「世代間の公平」に寄与するのかが不明と言うことです。今後、「財政試算」が出るということなので、それに注目していきたいと思います。

また、年金財政をみると不可欠と思われる、給付の削減については全く触れられておりません。政治的な理由によるものかもしれません。

医療・介護については、こちらは具体的な政策メニューが並んでおります。改革の方向性としてはこのとおりだと思いますが、年金の問題と同様にそれぞれの改革の医療・介護保険財政への寄与度がよくわかりません。少しでもいいのでそこに踏み込んでいただきたいと思いました。

なお、一方の増税については全く具体的な案は出ていません。それは政府税調の仕事という役割分担がなされたのでしょうか。通常、消費税と「税財源による最低保障年金」はセットだと思いますので、「税財源による最低保障年金」が先送りされた以上、消費税の話はしていないということなのでしょうか。

このように、基本理念はしっかりしているものの、具体案の部分で不明な点が多い文書だと思いました。今後の財源資産や制度の具体案に期待したいと思います。

※別な部分ですが、「「共助」をベースとした「重層的なセーフティネット」の構築」の考え方は非常に良いと思います。第一のセーフティネット(社会保険など)、第二のセーフティネット(「トランポリン型社会」の構築)、最後のセーフティネット(子どもの貧困連鎖防止、生活保護制度など)として一貫してセーフティネット政策を考えることのようです。このように施策を連関させて考え、制度間の「つなぎ目」部分の設計をしっかりと考えなければ、うまくいきません。基本的には働いたほうが得になる、勤労や技能向上へのインセンティブを失わせない方向の制度設計が重要です。

ただ、「トランポリン型社会」の理念に最もフィットする制度である「給付付き税額控除」について触れられていないのは非常に残念なことです。
| 次へ