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「脳死・臓器移植の本当の話」小松美彦 [2009年06月22日(Mon)]
今まさに国会審議中でもある、臓器移植に関する解説書です。脳死に関する論点について専門的な内容を含めてわかりやすく書かれています。

衆議院ではあっさりとA案が通ってしまったのですが、A案に賛成した国会議員のうち、どれだけの人が以下のような事実を知っていたのでしょうか?

「脳死患者は心臓が動いており、さわると温かい。汗や涙を流し、妊婦であれば出産する。脳死・臓器移植はこのような状態の人から、心臓などの臓器を取り出し、別の患者に移植する医療である。臓器を摘出する際、「脳死者」と判定された人にメスを入れた瞬間、脈拍と血圧が急上昇し、患者がのたうちまわることも珍しくない」

このような状態を本人意思が不明の場合、家族の同意だけで臓器摘出できるようにするのがA案です。本人の自己決定の権利を大きく侵害するほか、同意した家族が後にトラウマを抱えることにもつながるでしょう。「脳死者」=死体となったはずの家族がのたうちまわるのですから。

今回ご紹介する本書の問いかけは、「脳死」は「人の死」の基準とするに相応しいかという点です。

臓器移植法によると、脳死状態の定義とは、“脳幹を含む全脳の機能の不可逆的な停止”です。つまりこれは、大脳、小脳、脳幹のすべてが機能を停止したため、意識も感覚もなく遠からず確実に死ぬことが保証された状態ということです。

この定義だけみると、脳死を人の死としてもそれほど違和感を持たない方もいらっしゃるかもしれません。ところが、ここには大きな落とし穴があります。

定義上の脳死はそうであっても、それが実際に現場で運用されるにあたっては、ある人がこの定義に該当する脳死なのかを判定するプロセスが必要です。

最終的に脳死かどうかを確定させる“法的脳死判定”では、1.深昏睡、2.瞳孔散大、3.脳幹反射の消失、4.平坦脳波、5.自発呼吸の停止、という条件を満たし、これらの5条件が6時間以上の間をおいて二度満たされること、です。これはいわゆる「竹内基準」と呼ばれ、現行の臓器移植法の運用でも使用されているものです。

果たして、この判定方法で脳死と判定された人は、さきに挙げた定義上の脳死と確実に同じ状態と言えるのでしょうか?

本書では、この判定方法についても、様々な問題点を指摘しています。一点だけご紹介しますと、「脳死と判定された人に意識や感覚はないのか」というものです。

筆者はイギリスの麻酔学者デイビッド・ヒルの論文を引用しています。それによると「臓器摘出の執刀時に、ドナーの大半が急速で激しい血圧上昇と頻脈示す」そうです。
さらに同じくイギリスの麻酔医、フィリップ・キープは以下のように証言します。
「看護婦たちは本当に心底動転していますよ。[脳死者に]メスを入れた途端、脈拍と血圧が急上昇するんですから。そしてそのまま何もしなければ、患者は動き出し、のたうち回りはじめます。摘出手術どころじゃないんです。でしすから、移植医は私たち麻酔医に決まってこう言います。ドナー患者に麻酔をかけてくれ、と。」

いかがでしょうか。最悪の場合、このような患者は臓器摘出時に激痛を感じているおそれもあるということです。この点については、医学的にもまだ解明されていないそうですが、すくなくとも現時点ではその可能性を否定できないとのこと。アメリカでは臓器摘出時に麻酔を打つことはもはや“常識”になっているそうです。

この一点だけでも脳死を一律に“人の死”規定してしまうことに問題を感じざるを得ません。A案の問題性について、賛成者はどのくらい真剣に検討したのでしょうか。本書は、臓器移植を考える人すべてに読んでいただきたいと思います。いや、すべての日本人に読んでいただきたいと思います。全ての人が脳死状態になる可能性があるのですから。
Posted by 佐藤孝弘 at 21:59 | 思想 | この記事のURL
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