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「内部留保、雇用に使える?」(「朝日新聞」2009年1月30日朝刊3面) [2009年01月30日(Fri)]
最近一部で叫ばれる、「内部留保を使って雇用を維持せよ」という議論についての解説記事。確かに、一部政治家の方の発言などを聞いていると、用語の混乱があるように思われます。

基本中の基本の話ですが、内部留保とは決算において利益が出た際、株主に配当を支払った残りの金額です。これはあくまで「金額」にすぎないのであって、その分の現金があるわけではありません。また、この内部留保はバランスシート上「剰余金」として積まれていきますが、必ずしも「剰余金」の分の現金があるわけではありません。設備や在庫に化けている場合もあるわけです。

それ以前に、「利益」分の現金があるとも限らないわけです。そうであるかのように発言をする方が何人かおりますが、複式簿記のしくみを理解せずに「内部留保」という言葉ばかりが先行すると議論をミスリードしやすいので気を付けていただきたいものです。

それはさておき、記事にもありますが、経営者サイドからすると内部留保は設備投資や資金繰りのためにとっておきたいということのようです。こちらのほうが問題の本質で、90年代半ば以降、特に97年の金融危機以降、企業が設備投資をキャッシュフローの範囲内、特に減価償却費の範囲内で行うようになりました。それまでは設備投資といえば銀行借入でしたが、かつての強烈な「貸し渋り」「貸しはがし」を目の当たりにした経営者は、設備投資や資金繰りをできるだけ自社内で生み出すキャッシュフローで賄おうとしているように思われます。

ですから、雇用の問題は企業の資金繰りのあり方や金融システムの変化と密接にかかわっていると思うのですが、不思議とそういう議論は起こりません。本件について私自身にまだ答えはないのですが、いかなる政策対応があるか、考えていきたいと思います。
Posted by 佐藤孝弘 at 10:25 | 経済 | この記事のURL
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