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「いま、働くということ」大庭健 [2008年09月24日(Wed)]
「何のために働くのか?」という問いに正面から向き合った一冊。働くこと自体の意味を哲学的に考察している。

通常、この問いに対しては「生活のため」「生きるため」あるいは「自己実現のため」ということで片付けられてしまうところだが、それより深い部分に切り込もうとしている。「生活のために働く」といった時点ですでに労働は単に何かの目標達成のための「手段」と位置づけられる。さらには人生を「プロジェクト」としてとらえ、その成功がすべてということになる。そこでは、「労働それ自体の意味や喜びは何か」という視点が欠落してしまう。

著者は人間の仕事にのみ固有の特徴として、「間柄において働く」という点に着目する。人間は他者のことを考えるだけでなく、他者が自分をどう自分を考えているかを考えてしまう存在である。また、人間の行動は、自分の行動も他人の行動も何らかの意図に基づいた、理由のある行為であるという特徴がある。

人間のこのような特質は、仕事に以下のような固有の意味を与える。

@実際に対面仕事で接する相手との相互承認
A社会の不特定多数との関係において役割を果たすこと

二つが満たされてはじめて、人間は社会的な存在が承認されているという安堵を感じるという。逆に、この二つが満たされないと人は根源的不安に陥る。

このような視点からみると、たとえばグッドウィルで行われていたような日雇い派遣は人間を破壊する労働形態ということになるだろう。私も実際に日雇い派遣で働いたことがあるが、@、Aのどちらもなかった。だから著者の結論は、非正規雇用と労働者派遣の規制である。

そういう方向性が本当に望ましいかどうか、私はまだ結論を出せない。いずれにせよ労働法制を考える際には「労働」という行為自体を根本から考える必要があると思われるが、その点本書は大いに参考になった。

※なお、本書の存在は本ブログを読んでいただいているおやっさん様に教えていただきました。ありがとうございました!
Posted by 佐藤孝弘 at 17:50 | 思想 | この記事のURL