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「企業結合法制と買収防衛策」中東正文(商事法務2008年8月25日号掲載論文) [2008年09月01日(Mon)]
M&A法制を専門とする商法学者による論文。会社支配権争いに関するルールは(金融商品取引法ではなく)会社法制が第一義的な責任を負う形で法の再構築がなされるべきとした上で、具体的・網羅的な制度提案まで踏み込んでいる画期的なもの。「もう法律を変えないとどうしようもない」という認識が専門家の間でも広まってきたようだ。

特に注目すべきは、委任状争奪戦と敵対的買収の組み合わせの部分。東京財団の政策提言を引用した上で「委任状争奪戦を敵対的買収と連携させるためには、買収者の議決権行使について制限を課すという仕組みが効果的であろう。現在の買収防衛策の一般的な大規模買付けの基準を用いれば、新たに議決権の二〇パーセント以上の株式を取得する場合には、買付前に委任状争奪戦を行い、議決権行使の制限を解除するという段取りを経させるべきである。」と述べている。

解除の要件等についての違いはあるだろうが、基本的な発想は東京財団案と同じだ。この「議決権の制限」部分は、商法学者としては慎重にならざるを得ない論点だろうが、中東氏が述べるとおり「理論的に成り立ちえないものではない」のである。東京財団で検討するにあたり商法学者の方とも議論したがこの点には慎重な方も多かった。しかし、氏の論文により「会社支配権の移転」という場面を想定した制度改正に正面から取り組むための議論の土台ができたように思う。

本論文では法律学的な論点が中心だが、これに経済理論的な論点も加えてより実のある改正論議をすべきであろう。9月中に東京財団での検討をもとにした、M&Aに関する書籍を世に公表する予定である。それを機に大いに議論を盛り上げていきたい。
Posted by 佐藤孝弘 at 16:42 | 経済 | この記事のURL