東京財団上席研究員・森信茂樹先生が昨年秋に出した著作。近年の税制改革の世界的変化の流れを解説するとともに、消費課税の意義や考え方を述べ、最後には税制改革の政策提言も入っている。
非常に読みやすく、税制を勉強するには最適の一冊だ。私が特に関心を持ったのはいわゆるフラット・タックスの考え方。最近、「フラット・タックス」という言葉をいろいろなところで聞くが、「@消費税・所得税・法人税が一律の税率であること」又は「A所得税が一律の税率であること」のどちらかの意味で使われているように思われる。
本書で紹介されているのは、ホール・ラブシュカ型といわれるフラット・タックスで、消費をベースとし、個人も法人も単一のフラットな税率で一度だけ課税される税制だ。
もう少し詳しく言えば、
消費=賃金+利子+利潤+減価償却−設備投資
(「利子」〜「設備投資」の式の部分は法人のキャッシュフローを示す)
というように、消費を分け、賃金の部分に対しては個人段階で課税、それ以外の企業のキャッシュフローの部分については法人段階で所得税と同率で課税しようというものだ。
賃金に対しても一律の税率なので、限界税率が下がり、労働インセンティブは増加する。また、貯蓄や投資には課税しないことになるため、貯蓄や投資を促進することになる。二重課税もなくなり、非常にシンプルな税制となる。なんと、申告書がハガキ一枚のサイズで済んでしまうという。
いいことずくめのように思えるが、当然、逆進性(低所得者ほど、収入に占める税の支払いの割合が大きくなってしまう)は極めて高いという問題がある。
これに対する森信先生の答えは明快だ。税と社会保障を一体改革し、「給付付き税額控除」の制度創設で対応せよということである。給付付き税額控除については、近い将来東京財団で森信先生が政策提言を出される予定である。こちらも楽しみにしていただきたい。