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「立法学」について [2009年11月13日(Fri)]
東京財団仮想研究所(VCASI)ホームページに現在掲載されている、「立法学」の新しい動きについてのコラムをぜひお読みいただければと思います。VCASIフェローの谷口先生が政権交代後の日本の立法のあり方について、大屋先生が途上国への法整備支援のあり方について述べられております。

立法の復権?――「立法学」の進展の端緒として(谷口功一先生)

法整備支援と立法学の可能性(大屋雄裕先生)

これまで「立法学」と言えば、法制技術論ばかりで、まるで内閣法制局経験者の役人のために作った学問だなあというイメージがあったのですが、こうした新しい動きを「立法学」ととらえて学術的に研究する動きが出てきているのは大いに歓迎すべきことです。

今年の6月〜7月にかけての臓器移植法改正のバタバタなどを見ましても、こうした問題の重要性はおわかりいただけると思います。加えて、谷口先生が指摘されているように民主党新政権は、立法過程を大きく変えようとしているわけですから、その妥当性を検証する上でも何らかの理論的な枠組みや方法論が必要かと思います。

そもそも「良い立法」というものの定義が困難なため、整然とした学問分野にしずらい部分かとは思いますが、こうした取り組みをぜひ推進していただきたいと思います。
Posted by 佐藤孝弘 at 11:40 | 法律 | この記事のURL
「臓器移植国会議員アンケート賛否不明が7割支持最多はA案」(「朝日新聞」2009年6月3日号朝刊1面) [2009年06月03日(Wed)]
臓器移植法の4つの改正案に関し、朝日新聞が行ったアンケート結果が載っています。全議員のうち7割が回答せず、回答者の中でも「わからない・検討中」が二割を超えるとのこと。回答者のなかで一番割合が多いのはA案(44%)のようで、B案は5%、C案は13%、D案は27%とのこと。

(各案の内容については、先日東京財団が議員会館で開催した、「臓器移植法改正A〜D案提案者による討論会」の概要をご参照ください。)

A案は「脳死を一律に人の死とする」など、日本人の死生観にもかかわる重大な内容を含んでいますが、7割の議員がこのアンケートに回答していないことからみても、多くの国会議員が本件について深い認識を持っているように思われません。この法案については各党が党議拘束を設けず、議員個人の判断で採決に備えるにもかかわらず、です。

個人的には、ここは性急な判断をせず、ドナーカードやそれに関する教育・普及などの政策を打った上で国民的な議論の広がりをまつべきかと思っております。ドナーカードがこれだけ広まらないこと自体が日本人のこの問題に対する慎重な姿勢の表れではないでしょうか。
Posted by 佐藤孝弘 at 16:19 | 法律 | この記事のURL
「リーガルクエスト会社法」伊藤靖史、大杉謙一、田中亘、松井秀征 [2009年04月22日(Wed)]
最近出たばかりの会社法の入門書です。気鋭の研究者4名の共同執筆で、会社法を勉強したいと思っている方に非常にお勧めです。

これまで多くの会社法の教科書は記述が無味乾燥なものが多く、社会に出る前の学生などにとっては現実とのかかわりが全然イメージできず勉強している状況でした。たとえば「新株予約権」などと言われても、「それって何のために必要なの??」という疑問が解消されないまま勉強しなければいけなかったわけです。とはいえ、現実とのかかわり部分を多くしすぎると非常に冗長になってしまいます。本書はそのバランスが絶妙で、よほど工夫されたのだなと思いました。

敵対的買収と防衛策についても、実際の事例を紹介しつつ丁寧に解説されています。P414〜「防衛策についての考え方」の部分では以下のような記述があります。

「「支配権争いの帰趨は、(合理的な範囲で)取締役会が決めることができる」という主張もあり得ないわけではない。筆者(注:4名の執筆者のうち田中氏)は、上のような主張には懐疑的である。企業価値を毀損するが株主には利益となる買収というものが、現実にどの程度存在するか疑問である一方、防衛策を広く認めることが敵対的買収の規律効果を弱める危険は現実的だと考えるからである。しかし、本書の共著者の中には、取締役会に防衛策を行使する裁量権限を認めることについてより積極的な者もいる。本書はこの議論の対立に決着をつける場ではない。ただ、読者に知っておいてもらいたいのは、この問題は会社法の条文の形式的な解釈によって決着のつくような話ではなく、一定の政策判断を必要とする問題であること、そしてその判断の妥当性は、現実の経済社会に対する不断の観察によって確かめられなくてはならないということである。」

通常、こういった微妙な問題については教科書であれば飛ばしてしまうところかもしれません。しかし、対立点や論点を明らかにし、正解が見つかっていない部分もあるということを正面から認めて記述する本書の態度には誠実さを感じます。
※こちらの大杉先生の解説もぜひご参照ください。
Posted by 佐藤孝弘 at 11:09 | 法律 | この記事のURL
「思考停止社会「遵守」に蝕まれる日本」郷原伸郎 [2009年03月13日(Fri)]
企業コンプライアンスの第一人者による警告の書です。「法令遵守」の絶対性がメディア等で強調されすぎ、企業や消費者が「法令遵守」と聞いただけで思考停止に陥ってしまう現在の日本の状況を豊富な具体例とともに描いています。

たとえば食品偽装の問題では、不二家や伊藤ハムに対する過剰なバッシングについて解説した後、以下のように述べます。

「伊藤ハムは、大手のハム・ソーセージメーカーです。お弁当のウインナーソーセージを楽しみにしている子供たちも含め、多くの消費者のニーズに応え、食品を安定供給する社会的義務を負っています。それは、食品企業として最も基本的な義務です。
 そういう食品企業にとって、客観的に見て健康被害の恐れがない程度の問題でただちに工場の生産を全面的に止めることが、本当に社会の要請に応えることと言えるのでしょうか。」

そして、諸外国と比較してもはるかに高い基準を定めてその基準を上回っただけで公表を求められ、自主回収を行った上にメディアからバッシングを受ける日本の異常さを述べ、以下のように続けます。

「もっともメディア関係者の中にも、このような日本の食品をめぐる報道の異常性を指摘し、問題提起しているジャーナリストもいます。また、現場で取材に当たっている記者の多くも、程度の差はあれ、そのような問題を認識しています。ところが、それがマスコミ全体の論調にはまったく結びつかないのです。そこに、この問題をめぐるマスコミ報道の病巣の深さがあります。」

最後にあるような、個別の記者レベルでは正しく認識しても、マスコミ全体の論調が過剰になってしまう状況、というのはまさにかつて山本七平が警告してきた「空気」そのものでしょう。私が思うに、「空気」を打ち破るのに必要なのは客観的な事実や専門知識です。私が思うに、日本のメディアや政治は、専門家を上手く活用することができていないためにこのような過剰報道に走っているような気がいたします。

また、本書では耐震偽装問題や敵対的買収の問題など、私が担当する東京財団の研究プロジェクト「会社の本質と資本主義の変質研究」の問題意識と重なる記述が出てきます。

建築基準法の問題では、我々も提言で最大の問題として掲げた建築基準法や建物の耐震性能についての一般国民の「安全幻想」についてもしっかり述べられています。

「それにもかかわらず、一般の人には、建築確認が、現在のような高層化・複雑化した建築物についても安全性を確保する役割を果たしているように誤解されてきました。建築基準法による建築確認という制度が果たしている役割について、一般人の認識と実態との間に大きなギャップが生じていたのです。」

また、敵対的買収の問題では、ブルドックソース事件の最高裁決定を批判します。

「ブルドックソース事件判決は、株主の大部分が賛成し、スティール・パートナーズ側にも十分な補償が行われているのだから当事者間の解決方法として問題はない、との判断です。それが企業買収の世界全体にどのような影響を与えるか、という点への配慮は十分ではないように思えます。」

このように述べ、裁判所の判断に「市場の健全な機能の確保」という観点が抜けていることを指摘しています。(※なお、この敵対的買収の部分では拙著「M&A国富論」もご紹介いただいております)

以上のように、問題意識としては東京財団での検討と極めて近いものがありますが、解決の方向性としてはどのようなものがあるのでしょうか。

ヒントは第七章、終章に述べられています。おそらく、日本においては、アメリカのように日本の何十倍もの弁護士がいて、社会の隅々からトラブルを訴訟の場に持ち込み、判例を通じて法を形成していくという行き方はやはりなじみにくいと思います。

まずは著者も指摘するよう、法の背景にある社会的要請が何であるかを自分の頭で考える習慣を日本人が身につけていくことでしょう。それを補助する法曹資格者の強化も重要です。そして、もう一方では、実態に合わなくなったルールについては迅速に、かつ理論と実態の調和が取れた法改正を行っていくことでしょう。本書ではどちらかと言えば前者のアプローチを強調していますが、東京財団の検討では後者のアプローチをとっています。いずれにせよ、本書でも指摘するように法曹資格者をはじめとした専門家を社会の中で活かしていく方向は変わらないように思います。

最近の事例を幅広く網羅し、非常に読みやすい本でもあります。法律が専門でない方もお読みいただくことをお勧めします。
Posted by 佐藤孝弘 at 14:09 | 法律 | この記事のURL