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「地域の力が日本を変える」井上健二 [2011年06月27日(Mon)]
国土交通省から東京財団に出向して政策研究をされていた、井上健二さんの著書が発売されました。井上さんは一貫して地域再生についての研究を続け、本書がその集大成になります。

一言で地域再生と言っても、実際には何をもって「再生」とするかは非常に難しいと思います。おそらくこの問いへの答えは一つではないのでしょう。井上さんのスタンスは以下の通りです。

「地域再生とは、地域に住んでいる人が「住みつづけたい」と思える地域を作ることである。自分の生まれ育った地域にどのような価値があるのかが分からなくなり、自信を失ってしまっている地域があまりに多い。そこに暮らす住民自身が、地域を愛し、地域に誇りを持ち、そこでの暮らしを楽しんでいなければ、他の地域の人が、その地域を魅力的に思うはずがない。大都市とは異なるが、田舎には田舎の良さがあり、その長所を存分に暮らしに取り入れ、都会の人が憧れる豊かなライフスタイルをその地域でどう展開していくかが問われている。そこに暮らす住民が「暮らしていて良かった。幸せだ」と思える、人が最も自分らしく生きることのできる舞台としての地域を、行政に頼ることなく、どうつくっていくかが問われているとも言える。」(P44)

本書はこのような視点から、様々な地域再生の新潮流について紹介・解説しています。いずれをみても、うまくいっているところはやはり住民の自発的な意思があり、その取り組みを行政や外部人材がサポートするという形になっているようです。

例えば、事例として「オンパク」が紹介されております。これは「別府八湯温泉博覧会」の略称で、地域の様々な活動を観光客の方にも体験してもらうというものです。基本的に小規模少人数プログラムが沢山用意してあり、いずれも地域の特色を活かしたものとなっています。

このプログラム作り自体、地域の方が自分たちの住む場所の良さを再発見する良いきっかけになっているようです。また、地元住民の方が自ら参加する方も多く、リピーターになる方も多いようです。意外と自分の住む地域のことを知らないことは多いので、むべなるかなと思います。

これが評判を呼び、今では全国29地域でオンパクモデルが実現しているようです。私の故郷の函館市の湯の川温泉でも同様の取り組みをしています。

本書では事例紹介に留まらず、そこから読み取れる成功・失敗のポイントや、政策のあり方の方向性も合わせて論じております。今後の地域再生を考える方にとっては、非常に参考になる本だと思いますので、ぜひお読みいただければと思います。

(目次)
第1章 いかに地域を再生するか
1・1 地域を取り巻く環境
 1 地域を取り巻く厳しい状況
 2 地域再生政策をめぐる政府のこれまでの対応
 3 地域再生をめぐる新たな動きと明るい兆し
1・2 地域再生推進のための2つの戦略
 1 目指すべき地域再生の姿
 2 地域内循環型経済の構築
 3 地域コミュニティの再生

第2章 地域の「強み」を生かした再生への方策
 1 地域資源を生かす小規模ビジネス
 2 企業誘致に過度に依存しない地域産業政策の展開
 3 地域の「誇り」と雇用を支える伝統産業の活性化
 4 街の「顔」となる中心市街地の再生
 5 交流人口の拡大による地域内消費の拡大を図る
 6 お金の地産地消と地域を想う「志金」の活用
 7 地域の民間団体や人材の活用と、外部人材の登用
 8 生活の足となる公共交通をどう維持していくか

第3章 実践者が語る地域再生のヒント
Interview 01 地域の「強み」を生かした起業により雇用の創造を図れ―観光まちづくりによる地域再生
          清水愼一(開TB常務取締役)
Interview 02 社会交流欲は商いと街を元気にする─人と街と商いのリンケージ
          松本大地(商い創造研究所代表取締役)
Interview 03 地域の「宝」をビジネスに変える仕組み─オンパクの挑戦
          野上泰生(NPO法人ハットウ・オンパク運営理事)
Interview 04 「場所文化」を生かし、賑わいを創出する―地域を想う「志金」を生かす
          後藤健市(LLC場所文化機構代表)
Interview 05 美しい村づくりが人を呼び、世界を結ぶ―農の景観を生かしたブランディング
          浜田 哲(美瑛町長)

第4章 これからの地域再生
4・1 これからの地域再生のポイント
 1 地域への愛着と誇りの再建なくして地域の再生なし
 2 地域再生の主体はそこに暮らす住民自身
 3 分野横断的・総合的な地域再生の取組を進める
4・2 地域再生をどう進めるか―推進のための仕組みづくり
 1 地域ぐるみのパートナーシップの重要性
 2 実践指針となる戦略をつくる
 3 地域経営事業組織を構築する
4・3 地域の自主・自立時代にふさわしい地域再生政策の実現に向けて
「鳩山政権と地方分権改革上 試される政治の本気度」西尾勝(「日本経済新聞」2009年11月20日朝刊27面) [2009年11月20日(Fri)]
本日の日経新聞「経済教室」にて、西尾先生が地方分権のこれまでの経緯と今後の取り組み方についてわかりやすく解説しておられます。西尾先生は1995年に設置された地方分権推進委員会(諸井虔委員長)と2007年に発足した現在の地方分権改革推進委員会(丹羽宇一郎委員長)の両方に参加しているだけあって、政治的なハードルがどこにあるかという点もしっかり踏まえた上での非常に現実的な論考になっています。

本稿によると、95年〜の地方分権推進委員会では、地方分権推進法の規定の縛りもあって、「閣議決定可能な案件」に限定した形で勧告がされたとのこと。すなわち、かつての自民党政権のもとでは、省庁や政府与党の議員が調整の結果概ね同意できる案件に絞らなければならないことを意味したということでした。

つまり、自民党政権下の調整型政治の範囲内で出来る分権改革を精一杯やったということでした。逆に言えば、大胆な政治決断が必要な案件はひとまず置いておいたことを意味します。

一方、2007年以降の地方分権改革推進委員会では、「国の出先機関の統廃合」をはじめとして各省の調整にまかせていたのでは絶対に先に進めないものばかり。西尾先生の言葉で言えば、

「要するに、先の諸井委員長の下での分権改革は「官僚主導」体制のもとで実現したのに対し、今回の丹羽委員長の下での改革は初めから「政治主導」に期待をかけざるを得ない改革だったのである。」

ということになります。今、ボールは民主党政権が持っており、そのことは本稿のタイトルにもある「試される政治の本気度」となっていることにも表れているでしょう。

本稿で現在の最優先課題として挙げられているのは、第一に国、地方の協議の場の法制化、第二に法令による「義務付け枠付け」の見直し、第三に都道府県から基礎自治体への事務権限の移譲です。

特に第二と第三については、私もすぐにでもはじめるべきことかと思います。税財源の話を先に始めるとハードルが高すぎていつまでも進まないので、そこにあまり影響がないこうした点からスタートすべき、という西尾先生の指摘は着実に分権改革を進めるために極めて重要なポイントかと思います。

第二の点については原口総務大臣がすでに取り組みを始めているところかと思いますが、セットで第三の課題にも取り組むべきです。もしかしたら都道府県が「抵抗勢力」になるかもしれませんが、それこそ知事会の地方分権への本気度を試す良い試金石となるのではないでしょうか。
「分権改革へ体制模索」(「日本経済新聞」2009年11月4日朝刊2面) [2009年11月04日(Wed)]
安倍政権が2007年に設置した地方分権改革推進委員会は9日に第4次勧告をとりまとめ、その役割を終了。今後は原口総務大臣とそのチームに移るそうです。

地方分権の議論もいよいよ実行の段階になったようです。地方分権はご多分に漏れず、「総論賛成・各論反対」になりがちな分野です。これまでかけ声倒れに終わっていた部分にもメスが入ることを期待します。

地方分権への反対論としてよく言われるのは、「地方はまだ人材も体制も育っていないので、今時点で分権するのは危険だ」というものですが、おそらくそれではいつまでたっても分権などできないでしょう。「卵が先か、鶏が先か」というのと同じ議論ですので。

問題はこれからの分権改革の進め方でしょう。いきなり道州制といったビッグバン・アプローチを取ろうと思うと、議論百出で結局何も進まなかったということになりかねません。

まず、補助金をできる限り交付税に委譲すること、基礎自治体(市町村)ができる限り権限を委譲することから始めるべきです。その後、スリム化された県と、地方整備局など、国の出先機関との関係を整理したり、税財源の委譲にについて議論するという順番が混乱を少なく押さえるアプローチかと思います。民主党のマニフェストでも基本的にはこういう方向性かと思いますので、派手さを狙わずに、実質的な部分で改革を着々と進めていただきたいものです。

なお、今後議論をリードするであろう原口大臣のチームに入っている山田杉並区長、中田元横浜市長、中村松山市長等は先日「日本志民会議」を立ち上げたところです。この動きと民主党がどういった関係を持っていくのか。こちらも興味があるところです。
「給付金 振込料巡り対立」(「読売新聞」2009年3月7日朝刊38面) [2009年03月07日(Sat)]
全国の市町村が定額給付金を住民の口座に振り込む際の手数料をめぐって、自治体と指定金融機関の交渉が各地で難航しているそうです。多くの自治体が原則無料を求めるのに対し、指定金融機関側は応分の負担を要請しているとのこと。

「指定金融機関」とは聞きなれない言葉かもしれませんが、地方自治法235条には以下のような規定があります。

(金融機関の指定)第235条 都道府県は、政令の定めるところにより、金融機関を指定して、都道府県の公金の収納又は支払の事務を取り扱わせなければならない。2 市町村は、政令の定めるところにより、金融機関を指定して、市町村の公金の収納又は支払の事務を取り扱わせることができる。

これに基づいて指定を受けた金融機関は、公共工事費の支払いなど、原則無料で引き受けてきたわけです。とうしてこんなことが行われたかというと、基本的に指定金融機関は一自治体につき一行ですので、地方の金融機関にとって指定金融機関になることは“地域で一番”というステータスになるということが大きいようです。また、公金を預金として確保できるメリットもあったようです。

ところが、最近はそういったメリットが減ってきたために、銀行側も手数料の見直しを求めてきました(詳しくはこちら、全国地方銀行協会「地方公共団体とのお取引の維持・発展に向けて〜私どもの意見〜」をご参照ください)。また、最近地方税の収納などはコンビニでもできるようになったのですが、地方公共団体から支払われる手数料は指定金融機関のほぼ2倍程度です。このような、制度の根幹が揺らぎ始めているところにこの給付金です。全国で5000万件もの振込みがあるため、かなりの費用負担になるでしょう。

今回の給付金のような、臨時・緊急の措置にかかる事務手数料負担については、金融機関側もまったくコスト計算に入れていなかったでしょうから、急に言われても困るのは事実でしょう。円滑な給付を行うためにも、自治体(国?)も応分の負担をすべきかと思われます。

指定金融機関制度自体についても長い間うまくいっていたのでしょうが、見直しの時期ということでしょうか。所得税の年末調整が典型ですが、こうした“民間企業に事務をタダでやらせる仕組み”は多くが限界にきているのかもしれません。
「道路財源 首相「地方に1.3兆円以上」(日本経済新聞2008年11月20日朝刊2面)」 [2008年11月20日(Thu)]
道路財源の一般財源化について、麻生首相の発言が不明確なようだ。そもそもこの問題は福田首相が今年の5月に全額一般財源化を閣議決定したことにさかのぼる。筋論から言えば、もともと地方向けの道路予算だった部分をそのまま地方交付税とし、使い道は地方に決めさせるということだろう。

当然、道路を作りたい人たちはそれに抵抗する。それにいかに対処するかが麻生総理の腕の見せ所だったはずだ。

しかし、方針もハッキリさせないうちに首相が「使途自由になる地方の取り分は現状以上」とあえてハードルを上げた。早速道路調査会が猛反発し、発言がトーンダウンしたようだ。政権にとっては「給付金」以上の打撃となるだろう。
「地方財政改革の政治経済学」小西砂千夫(前半) [2008年11月09日(Sun)]
地方財政制度の全体像と改革の方向性について、詳細に書かれている。地方財政をそれだけの問題としてとらえるのではなく、国全体の「統治」の視点からみている視野の広い本だ。ひとまず前半部分を読了。

小泉内閣期、地方税・地方交付税・国庫補助負担金を一体として見直す、「三位一体改革」が行われた。そこでは、2004年〜06年度の3カ年に、4兆円の国庫補助負担金を削減し、それに対応して3兆円の税源移譲を実現することが政府の方針とされた。また、三位一体改革は、地方財政計画の歳出の縮減を通じる地方交付税の減額を伴った。

本書では、経済財政諮問会議における、財務大臣と総務大臣のさや当ての場面がしばしば登場する。財務省的論理としては、ひも付きのカネである各省国庫補助負担金の削減し、総務省所管の地方交付税が無傷ならばバランスがとれない。地方交付税交付金を減らすよう、財務省が求める。それに総務大臣が反論する。

読んでいると、財政再建の議論なのか地方分権の議論なのかよくわからなくなってくる。それも当然で、国と地方の事務配分を所与のものとして考えると、改革の幅は当然少ない。本当の抜本改革は、国と地方の事務配分の見直しが不可欠だが、そこまでは踏み込めていない。

本書を読むと、小泉首相のリーダーシップが際だつとともに、その限界も感じる。財務大臣は財務省の、総務大臣は総務省の代弁者であって、それを総理がツルの一声で決裁をするのだが、結局はそれでは改革はわずかしか前進せず、本書の著者も言うような、「三方一両損」のような結論になる。具体的なツメの部分を役所任せにする当然の結果である。とはいえ、それすらできなかった歴代内閣と比較すれば格段の成果とも言えるだろう。

とはいえ、この一連の議論は今後の改革の進め方について大いに参考になると思われる。ではどういう方向が望ましいのか。それは後半を読み終えたときにまた。