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「日本電産、買収を断念」(「日本経済新聞2008年12月16日朝刊11面) [2008年12月16日(Tue)]
東洋電機製造に買収提案をしていた日本電産が買収を断念したようだ。今年の9月16日にTOBによる買収提案をしてから丁度3か月。この間、東洋電機製造の策定している事前警告型防衛策に基づき、両会社の間で質問と回答のやり取りがあった。(内容についてはこちらのホームページを参照

日本電産は裁判覚悟でTOBを強行するということをしなかった。もともと日本電産は買収相手が納得するまでじっくりと水面下の交渉を続け、合意を得てから公表、というパターンで買収を成功させてきたわけだが、今回はいきなりの提案だった。財界や企業法務の世界ではかなり話題となり、「永守流M&A」を大幅に方向転換するのかどうかというのが注目点だったが、そうではないらしい。

記事によると、永守社長は「これまでの質問内容を見ると始めから拒否ありきと決めていると感じる。これ以上時間をかけても相乗効果を出せるか疑問だ」と述べたそうだ。東洋電機製造は延べ170項目の質問状を三回にわたって送付し、日本電産は計136ページにのぼる回答書を提出したが東洋電機製造は不十分と主張し続けた。

良くも悪くも、事前警告型防衛策の効果が典型的に現れていたといえる。日本電産が撤退しなければ、あと1年でも2年でも手紙のやりとりをしていたかもしれない。そこまでいくと、どこまでが「真摯な交渉」で、どこまでが「引き延ばし作戦」なのかがよくわからなくなる。これが事前警告型防衛策の問題点のひとつだ。

もし日本電産が敵対的TOBを強行すればどうなったか。普通にいけば東洋電機製造が防衛策を発動し、日本電産が差し止め請求をし、裁判所で決着ということだろう。一番典型的なタイプの買収防衛策の発動事例となり、極めて注目すべき裁判となったが、それは実現しなかった。

東京財団で提言したM&Aに関するルールが実現していれば、最終的には委任状争奪戦により決着がつくはずであった。東洋電機製造の株主構成をみると比較的分散しているほうなので、日本電産の方針次第では勝利した可能性はある。

日本電産にこうもあっさり撤退を表明させたのは、東洋電機製造の労働組合が表明した反対意見かもしれない。これによると、組合員アンケートで買収提案に反対するものが89.0%(賛成2.4%)、買収成立時に離職を検討する者が12.8%、様子を見て不満があれば離職を検討する者が69.3%に達したとのこと。また、日本電産がワーク・ライフ・バランスを軽視している懸念があるとするものだった。

この表明意見の妥当性を判断する材料は私にはないが、この上で日本電産が強硬姿勢をとれば、「和の精神を大事にする日本電産型M&A」といったこれまでの良いイメージがくずれ、他の買収もうまくいかなくなる恐れがあることは容易に考えられる。そういったマイナス面まで考えれば、早めに撤退しておいたほうが良いという判断だったのではないか。

現行制度ではやはり不透明だし、敵対的M&Aの「決着」の仕組みがないことを改めて感じた。これでは会社の付加価値を高める「良い買収」も起こりにくくなってしまう。政府はやはり買収ルールの明確化に取り組まなければならない。
Posted by 佐藤孝弘 at 12:33 | 経済 | この記事のURL