今話題の書籍。一時期アマゾンランキングで総合一位も取っていたようだ。著者の水村美苗さんは寡作だが極めて評価の高い小説家で、岩井克人先生の奥様でもある。
我々は今、「英語の世紀」を迎えている。幾多の歴史的経緯によって、英語が英語を母語とする人々の枠を超えて、世界中で流通する言葉、すなわち著者のいう「普遍語」となりつつある。また、インターネットの普及はそれに拍車をかけている。
たとえば50年後、「地方語」としての日本語が生き残るのは確実であろうが、はたして日本で生まれる最高の知性を持った人間が、学問や文学の世界で日本語を使って「読まれるべき言葉」を書くだろうか?それは英語ではないのか。
著者の問いかけに、読む者は頭をガーンと殴られたような感覚になるだろう。英語が苦手な私としては、なおさらだった。詳しくはぜひ本書を読んでいただきたい。
最終章にはそれまでの分析を踏まえた政策提言がついている。学校教育において、国民全員をバイリンガルにするのを目指すのではなく、一方で英語を自由自在に操るエリート(著者はそういう表現を使っていないが)を育て、一方で国民全員への国語教育を徹底して行うというもの。
個人的には大賛成だ。日本の強みは知的な能力の平均レベルの高さにあると思うので、それを維持・発展させる上でも有効な政策だと思う。