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「年金問題の正しい考え方」盛山和夫 [2008年10月27日(Mon)]
年金制度の入門書。とはいっても現行の年金制度の構造やこれまでの経緯だけでなく、世代間格差や未納問題など、複雑な制度とその問題点をかなり詳細に、わかりやすく解説している。また、基礎年金の消費税化、年金の一元化、積立て方式への移行など、近年の年金改革案についても網羅的に述べられている。

著者は、年金制度が危機に瀕しているのは、少子高齢化のせいではなく、1973年のスキームがあまりに"大盤振る舞い”だったことにあるという。その上で2004年の制度改正を肯定的にとらえ、マクロ経済スライド調整率の導入によって、初めて持続可能なスキームとなる可能性が出てきたと指摘する。

マクロ経済スライド調整率とは、年金支給のベースとなる物価上昇率・平均賃金上昇率から一定の調整率を引くことで給付水準を低く抑える仕組みだ。これは法律ではないので、法改正しなくとも給付水準を下げられる。ただ、著者は現在の調整率(0.9%)では、到底制度を維持することはできないとも指摘しており、ある程度の経済成長と、調整率の引き上げが必要とする。

後半は、最近よく議論される年金の制度改革論議についての著者の見解が述べられる。最も問題視される未納問題を論じた第7章のタイトルは「未納は本当に問題なのか」として、おり、初めから未納問題の悪影響について懐疑的な姿勢だ。著者によると、未納の解消は年金財政の収支の改善には役に立たず、むしろマイナスだという。基礎年金は構造的に赤字体質なので、著者の資産だと収支が悪化するというのだ。

とはいえ、未納者が将来生活保護支給を受けるようになれば、結局それは税負担が増える話になる。これは私も非常に懸念するところだが、著者は以下のように述べる。

「まず、注意しておきたいのは今日の未納者のすべてば、一生涯未納を続けるわけではないということだ。未納率は20代で約50%と若年層で高く、中高年層では低い。免除者を含めると、若年層の割合はもっと高くなる。たしかに、これらの人々が今後40年間ずっとどんな保険料も払わないでいたら、大勢の無年金老人が出現するだろう。しかし、20代で無職やパート・アルバイトであっても、30代になって定職について二号被保険者になる可能性や、結婚して三号被保険者に成る可能性は少なくない。」

などと書かれているが、ここだけ妙に楽観的だし根拠がわからない。私は就職氷河期世代のド真ん中で、実感としてわかるが、そう簡単に「30代になって定職について」と言えるようなようなご時世ではないと思う。また、著者は年金は払うのは得であることを強調するが、年収200万円のフリーターに損得論を説いても説得力はない。

しかも、本書前半では「公的年金制度は、すべての国民、それもいま存在している世代だけでなく、これから生まれてくる人々を含めた将来の世代を包括的に対象として、老後の生活に一定の保障を提供するものである。」と書いているにもかかわらず、未納者が多く発生しても年金制度は破綻しないから問題ないとするのは矛盾にも思える。

このように、本書は不明な部分があるものの、基本的には明快な論理で、新たな気づきを与えてくれる部分も多い。年金問題を考える上では欠かせない一冊だろう。