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「給付つき税額控除 日本型児童税額控除の提言」森信茂樹編著 [2008年10月16日(Thu)]
ここしばらく、政治の世界では「定額減税」の議論が出ている。本日の朝日新聞の朝刊のトップは「定額減税に埋蔵金流用 自公検討 特会3兆円から」である。

埋蔵金の利用の是非はともかく、この「定額減税」のスキームがよくわからない。新聞記事の簡単な解説では、「定額減税は、年収に関係なく所得税や住民税などから同じ額を差し引く仕組みで…」とある。

これは本当なのだろうか?夫婦子二人の世帯のケースで、所得税の課税最低限は325万円のはずである。ということは、325万円以下の所得の家庭にとってはそもそも所得税を払っていないのだから無関係な政策ということになってしまう。一方、「年収に関係なく」ということは年収数千万の大金持ちの税金も差し引くのだろうか?

このように普通の考えではおかしなことになってしまう「定額減税」も、税と社会保障を一体化し、給付つき税額控除という形で国民に戻すというスキームを取ると理屈の通ったものになる。本書は東京財団上席研究員の森信茂樹先生のチームで出した政策提言を元にし、その理論や具体的制度設計を解説したものである。森信先生をはじめ、東京財団研究員の金子洋一さんなど、検討チームで分担執筆されている。

本書で提言するスキームは、現在の扶養控除と配偶者控除をそれぞれ20万円縮減し、それを財源として年収600万円以下で子供を持つ世帯に、扶養親族一人あたり5万円の税額控除するというものである。納めている所得税が少なく税額控除しきれない分は給付(還付)を行うので、所得税を1円も支払っていない家庭でも給付を受け取ることができる。しかも財源は控除の縮減で行うので税収中立(1円も増税しない)で実現できる。

そもそも、扶養控除などの控除はたくさん家族を養える、たくさん税金を払える裕福な家庭ほど恩恵を被る制度であって、本当に必要なところに効果が届かない。それを解決するのが給付つき税額控除だ。

このスキームはアメリカやイギリスをはじめ、多くの先進国ですでに導入され、効果をあげている。面白いのは給付のしくみのバリエーションによって様々な効果が期待できるということである。特にイギリスの就労税額控除はこの仕組みを就労インセンティブを高めるためにうまく使っており、我が国の政策においても大いに参考にすべきものがある。また、消費税増税をする際に起こる逆進性対策としても効果を発揮するだろう。

以上のような内容もすべて本書に非常にわかりやすく書いてある。与党による税制改革の議論は大いに結構だが、どうせやるのであれば本書をよく読んで勉強していただいて、税制の考え方を抜本的に転換するような仕組みを作ってほしいものだ。