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«復興構想会議資料 | Main | 本日18:00〜第7回税・社会保障制度の抜本改革を考える討論会です»
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消費税引き上げの景気への影響と逆進性対策 [2011年05月31日(Tue)]
社会保障改革集中検討会議が佳境を迎えました。今朝の日経新聞1面によると、6月2日に原案を取りまとめ、そこで消費税率の引き上げが提言に入るそうです。2015年までに段階的に5%引き上げ、10%程度とすることがその内容とのこと。

そうだとすると、昨日の会議の資料はその準備としてでしょうか。消費税引き上げの景気への影響と逆進性対策について充実した資料が配布されています。

まず、景気への影響ですが、↓こちらの吉川先生の資料に載っています。

社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書説明資料(第U部)

それによると、97年の消費税引き上げの評価について、

「1997年の消費税率引上げについて、マクロ経済に与えた影響は未だに見解が分かれる。ただし、最近の研究結果から考えると97〜98年の景気後退の「主因」とは考えられない。」

とのこと。諸外国をみても一概には言えないようですが、以下の点がポイントになるようです。

「消費税は社会保障目的税的に用いられることによって、税率引上げの影響を緩和できる可能性。」

「・現行の受益と負担の構造の下で、社会保障制度の持続可能性に懸念が生じている現状。
・現行制度の安定化を含め、国民が払った税金が受益として返ってくることを実感できれば、
制度に対する将来不安が払しょくされることにより、経済に与える影響は小さくなることが
期待される。
・経済社会の環境変化に対応できるよう所要の機能強化を行うとともに、国民が制度の持
続性について確信が持てるような制度の見直しを行うことが必要。」

国民が社会保障制度の持続可能性に懸念を持っていると、将来不安から過剰に貯蓄して消費を抑えるでしょうから、この議論は実感とも合いますね。結局政府とその政策への国民の信頼度に依存しているということでしょう。さらに、引き上げのタイミングについては、

「先進諸国の多くの例にみられるように、景気が成熟する前の成長に勢いのある段階で引上げを始めることが望ましい。」

これもその通りでしょうが、見極めは非常に難しいでしょう。

「引上げ方については、税率を一度に大幅に引き上げる場合は、経済の変動を増幅する恐れがあることから、段階的な引上げ方が望ましい。」

消費税の段階的な引き上げは貯蓄に対して資本課税を行うのに近いので、インフレ期待を醸成する面もあるようです。

一方、逆進性対策です。それについては↓こちらの井堀先生の資料に載っています。

社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書説明資料(第T部)

冒頭いきなり、

「生涯所得でみた消費税の負担は、ある一時点の所得でみた場合と比べ、逆進性が小さい。
・消費税の逆進性とは、所得に対する消費税の負担率が、低所得者ほど重いことを指す。
・一時点の所得でみた逆進性は必ずしも「不公平」を意味せず、単に調査時点の年齢の違い等を反映したものである可能性あり。
 高齢化の中で、一時点の所得でみる妥当性が薄れる(壮年期には消費に比べ所得が多く、老年期には消費に比べ所得が少ない)。
・生涯所得でみると消費税は比例税であるとの指摘。」

とあります。さらに4ページには、

「・ 一時点の所得でみた消費税の逆進性は、所得税など他の税制や社会保障制度全体、さらには歳出面を含めた見直しの中で十分対応可能。」

とあります。ここが強調されるということは、「これから提案する消費税の引き上げには、逆進性対策は入れないよ」というメッセージかもしれません。

事情を推察しますと、逆進性対策としては、かつてEU諸国が実施した食料品等への軽減税率の導入か、近年カナダが実施したような、「消費税逆進性対策給付付き税額控除」のどちらかが考えられます。

逆進性対策の効果としては、後者のほうが圧倒的に高いということは既に明らかになっています。昨日の配布資料でも何度も引用されていますが、昨年出した東京財団政策提言で佐藤主光先生が分析しております。

東京財団政策提言「給付付き税額控除 具体案の提言〜バラマキではない「強い社会保障」実現に向けて〜」

ただし、給付付き税額控除を実施するには、(基本的には)番号制度の導入が前提となります。所得制限を設けて給付するので、そのためには番号による所得の正確な捕捉が必要になるということです。だからこそ、これまでは番号の議論と消費税の議論と給付付き税額控除の議論はセットで行われてきました。

ところが、番号の議論が後ろ倒しになったため、それらの政策のリンクが消えてしまいました。そうなると、逆進性の問題は今回はスキップせざるを得ないでしょう。やはり政策の順序、スケジュール設定は大事ですね。