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「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」上杉隆 [2010年01月15日(Fri)]
2年とすこし前に出版された、気鋭のジャーナリストによるルポです。政治の問題を考えるにあたり、この十年ほどの政治のおさらいをしようと思い、とりあえず手元にあったこの本を読んでみました。

本当にスキャンダルが多かった政権だなあと改めて思いました。出てくるもので主なものは以下のとおりです。本書は噴出するスキャンダルと安倍政権の対応のまずさが精緻に描かれています。

(2006年)
11月〜郵政造反組復党問題
11月〜タウンミーティングやらせ質問問題
12月 本間税調会長辞任
12月 佐田玄一郎行革担当大臣辞任
(2007年)
1月 柳沢伯夫厚生労働大臣の失言(「産む機械」発言)
1月〜教育再生会議の迷走
2月〜消えた年金問題
3月〜松岡利勝農林水産大臣の「ナントカ還元水」問題
6月 久間防衛大臣の失言(「原爆投下はしょうがない」発言)
7月 赤城農林水産大臣の事務所費架空計上問題

これで参院選に臨んだのだから負けても当然かと思えてきます。やはり政権発足直後の「郵政造反組復党問題」への対応の失敗が全ての綻びの始まりだったと思います。本書は危機管理のケース・スタディという読み方もできると思いますので、まだ読んでいない方はぜひどうぞ。

一方、安倍政権の政策面については、ほとんど書かれておりません。個人的に当時を思い出しますと、これだけのスキャンダルの中、それなりに政策的に新しい取り組みも行っていたように思います。

例えば、航空政策ですが、現在前原国土交通大臣が積極的に推進しているオープンスカイ(航空自由化)政策は、安倍政権下の「アジア・ゲートウェイ構想」の一丁目一番地の政策です。こうした地ならしがあったからこそ前原大臣も迅速に政策を打ち出せたのだと思われます。

また、「アジア・ゲートウェイ構想」では羽田空港のハブ化について書いておりませんが、おそらく検討段階にはあったでしょう。ただ、「一県一空港」的空気が支配する自民党においては、そういうことを言った時点で総叩きに遭うことは目に見えているので初めからあきらめたのではないでしょうか。

安倍政権の実績のうち、防衛庁の省への昇格、教育基本法改正、海洋基本法、国民投票法、パートタイム労働法改正、「再チャレンジ」政策などは、政策論としてそれぞれ論じる意味のあるものだと思います。(本書も含め)政権運営のまずさばかりが強調されがちな安倍政権ですが、政策の観点から見直してみれば別な課題も見えてくるように思いました。
Posted by 佐藤孝弘 at 21:23 | 政治 | この記事のURL