CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
«はじめまして | Main | 「日本経済の生産性革新」宮川努»
プロフィール

佐藤孝弘さんの画像
リンク
<< 2011年08月 >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
カテゴリアーカイブ
最新記事
https://blog.canpan.info/satotakahiro/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/satotakahiro/index2_0.xml
月別アーカイブ
最新トラックバック
「日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条」山本七平 [2007年06月27日(Wed)]
本書は、第二次世界大戦末期、ブタノール製造の技術者として戦地に送られた小松真一氏が残した記録(「虜人日記」)に沿って、山本七平氏が日本人及び日本の組織について論評したものである。

30年ほど前の週刊誌での連載をまとめなおし、2004年になって新書サイズで発売されたものである。私自身は、3年前に発売された時すぐに買って読んだのだが、今回思うところあって改めて読み直してみた。

全編にわたって非常に示唆に富んでおり、紹介したい部分も多いのだが、特に印象に残ったのが「員数(いんずう)主義」の話だった。これは、「形式的な数合わせさえすれば実質は問わない」という悪しき組織文化のことを指す。

小松氏は書く。

『形式的な軍隊では「実質より員数、員数さえあれば後はどうでも」という思想は上下を通じ徹底していた。員数で作った飛行場は、一雨降れば使用に耐えぬ物でも、参謀本部の図面には立派な飛行場と記入され、又比島方面で○○万兵力を必要とあれば、内地で大召集をかけ、成程内地の港はそれだけ出しても、途中で撃沈されてその何割しか目的地には着かず、しかも裸同様の軍隊なのだ。比島に行けば兵器があるといって手ぶらで日本を出発しているのに比島では銃一つない…』

さらに山本氏は、このような悪弊は、戦後の日本でも相変わらず繰り返されていると指摘する。例えば、「春闘決起大会」の動員数である。ある年の大会では、主催者側発表が20万人、警察庁調べでは3万1千人だったらしい。明らかに主催者側が過大に発表しているわけだが、春闘の事務局長はインタビューに対しこう言い放ったそうだ。

『「つまらんこと聞きにくるんだねえ。二十万人召集したわけだから、ま、二十万人集まったと発表した。ただそれだけのことですよ……」。』

山本氏はこの発言について以下のように解釈する。

『これは実に面白い考え方である。「二十万召集した、しかし三万一千(?)しか集まらなかった」という事実は、問題でないのだというわけである。結局、召集数と実数の差は「実体なき員数(これこそ員数の極致)でうめ、「二十万集まったと発表した」わけである…』

今から見ると滑稽な話であるが、笑って見過ごすわけにはいかない。現に社会保険庁では「年金の未納率を下げるために保険料を免除する」という、正しい意味での「員数主義」が横行していた。役所であっても企業であっても、このような例はほかにもたくさんあるだろう。

どちらかといえば、「員数主義」は公的な機関のほうが起こりやすいといえるだろう。なぜなら、企業がそんなことをやっていれば、あっという間に業績が低下し、倒産してしまうからだ。

我々日本人はいつ員数主義のワナにはまるかわからない。本書はその戒めという意味でも、必読の書といえるのではないか。
Posted by 佐藤孝弘 at 19:11 | 思想 | この記事のURL