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高校生の自殺予防 南薩地区オンライン教員研修  [2021年08月27日(Fri)]

【南薩地区 高等学校教職員対象 ゲートキーパー研修】

今日は加世田保健所主催で南薩地区の高校の先生対象に「高校生の自殺の現状とSOSの受けとめ」についてオンラインお話ししました。

小中高の先生を集めた研修はよくあるのですが、今日は高校の先生を対象でしたので課題を絞ってお話できました。

*高校生の自殺の現状

*コロナ禍での影響

SOSの受け止め方

*希死念慮のある生徒への接しかた

*トラウマの理解と学校での接し方

というお話をしました。


<高校生の精神疾患について>

高校生の自殺の原因で、うつ病や精神疾患がいきなり上位に出てきますが、これは小中学校からの家庭問題・学業問題の延長にあります。

高校の先生方が直面する生きづらさを抱える生徒たちは、事態が複雑化していることが多く、

生徒やその保護者をどのようにサポートしていいのか悩むことが多々あります。

子どもたちに「SOSを出して」というように

先生たちも、困った時に仲間に助けてもらうことは大切です。

そして、カウンセラーや医療機関につなげるべきケースはつなげることはもちろんですが

保健師やソーシャルワーカーなどの行政につなぐことも大事です。


<多機関連携>

熱心な先生たちは「生徒たちのことを自分たちで解決しなければならない」と抱え込みがちです。

しかし、教師という立場でできることとできないことがあり、限界があります。

例えば、高校の先生たちは生徒たちに物理や英語や歴史などを専門的に教えます。

けれども、カウンセラーでもソーシャルワーカーでもないので、

相談に関しても進路や学習方法についてはカウンセリングできても

心理的な問題に関しては対応に限界があって当たり前です。

カウンセラーたちが生徒たちに物理や英語を教えられないのと同じです。

「どんなタイミングでつなげればいいのか」という質問も色んな講演会で受けます。

例えば「リストカットを5回したら」などという目安はありません。

先生たちが自分たちではもう対応が難しいなと感じたらスクールカウンセラーに迷わず繋ぐことが大事です。

相談に関して、「遅すぎた」ということはあっても「早すぎた」ということはありません。

相談することを「ためらわない」でください(これは子どものSOSの出し方の考えと基本は同じです)


<困った保護者への対応>

保護者さんに問題意識があれば、保護者さんを色んな機関につなげることができるのですが

多くの保護者さんたちが、「うちは大丈夫」と思っていて、生徒の問題意識・教師の問題意識と解離していることがあります。

このようなケースは、保護者さんをどこかにつなげることが難しくなります。

前述したように、先生たちはソーシャルワーカーではないので、保護者さんをサポートすることは立場上難しいです。

なので、このような時は保健所や市町村の保健師に相談して、まずは先生方がつながるとよいと思います。

今日もどこにどんな風につなげばいいのかという質問があり、加世田保健所のスタッフが、保健所に相談して大丈夫ですと言ってくださったのが本当に心強かったです。

そして、保健所と学校がこうして、研修企画を通して顔と顔の見える関係性ができたということも、生徒の自殺対策の大きな一歩と思います。


本当は故郷加世田で講演の予定だったのすが、オンラインになり、帰れなかったことは残念でしたが、オンラインでつながれてよかったです。





企画をしてくださった鹿児島県南薩地区振興局加世田保健所のみなさん、ありがとうございました。


Posted by 高橋聡美 at 21:28
精神科治療学「子どもの自殺の現状と予防」 寄稿 [2021年08月22日(Sun)]

【精神科治療学 その後の自殺対策T−社会的な自殺問題と対策の現在−】

精神科治療学に「子どもの自殺の現状と予防」を寄稿しました。

2016年の自殺対策基本法改正以降、子どもの自殺は増えていて、改正以降の自殺対策の問題点、自殺予防教育が進まない背景について書きました。

とりわけ、子どもの自殺は自殺対策基本法改正以降、増え続けています。

自殺対策が機能していないのだと私は感じています。

専門雑誌ですが、読み応えのある1冊です。


星和書店のHPより

本特集は、基本法改正以降のわが国の自殺対策の経緯と現況、課題について、社会的自殺問題と臨床的自殺対策の二部に分けて取り上げた。

今月号では社会的自殺問題として有名人の模倣自殺、デジタル社会、コロナ禍等について、現在考えうる客観的で最良の解説を網羅し、社会的側面から自殺対策に取り組む執筆陣が対策を提言。一人でも多くの命を救うために必読の特集。

Posted by 高橋聡美 at 15:11
福島県精神保健福祉センター 若年自殺予防教育における人材育成研修 [2021年08月22日(Sun)]

818日)は福島県の精保センターの自殺予防研修でした。

まん延防止措置ということで隣県ですがZOOM開催。


私の方から基調講演を90分し、その後、グループワークでそれぞれの職域での活動と課題を議論という半日研修でした。

福島県の精保センターの自殺予防研修には毎年のように呼ばれていますが、

福島県精保センターの自殺対策で他の県より進んでいるなと思う点を2つ紹介します。



<多職種のグループワーク>

これまでも、自死遺族支援の研修など様々な自殺対策研修を精保センター主催で毎年開催してきていますが

研修対象が教職員・養護教諭・スクールソーシャルワーカー・スクールカウンセラー・市町村職員・保健福祉事務所職員など多職種対象となっています。

多職種合同研修はほかでもよくあるのですが、福島の場合、いろんな職種の参加者を混在させグループワークをします。

今回も若者の自殺予防にどんなことをやっているのか、なにが問題なのかをそれぞれ出し合っていました。

(私はそれぞれのルームをラウンドする形で入りました)

意外と、他の職域の活動をお互いが知らないことが多く、

そうか、こういう時はここにつなげばいいんだということがわかります。

そして何より、県内の色んな人がここで知り合いになって顔と顔の見える関係性の中で自殺対策ができます。

この関係づくりというのはとても大切な要素だと私は思っています。



<自殺予防教育ツール>

センター長の畑先生は先駆的に教育現場で啓発授業を行っておられ、

その教材をリーフレットにしHPでも公開しています。

H29年に生徒(高校生)に対する自殺予防授業用テキストができ、さらに、福島県教育委員会と共催で「若者の自殺予防教育のあり方検討会」を設置し、
R210月に「自殺予防教育のための指導者の手引き」を作成しています。


これは、教員向けの手引書で、学習指導案やシナリオ付きスライドなどが盛り込まれており、

授業やロングホームルームで活用できるようになっています。(学校に合わせて編集も可能になっています)

教育委員会と精保センターのコラボであれば、自殺予防教育を進めやすいので他の自治体でもぜひコラボしてほしいと思いました。


どこの自治体も自殺予防教育をしたいけれど、教材やツールがないという課題にぶつかっており、

このように、教材がしっかりとあるところはまだ多くはありません。


そして、これらの教材を各学校あるいは市町村で作成するのは大変ですし、同じ作業を色んなところでやることになり、合理的ではありません。

福島のように生徒用と指導者用と両方、作成・公開されていると教育の中に取り入れやすくなります。


このツールもすぐにできたわけではなく、福島精保センターが長年積み重ねてきたものの一つの形です。


自殺対策に特効薬はなく、このようにコツコツと関係性を築いていったり、成果を積み重ねていくことがやはり大事だなと思った研修でした。


Posted by 高橋聡美 at 14:50
子ども・若者の自殺対策 講演 福岡 [2021年08月19日(Thu)]

【福岡県精神保健福祉センター主催 「子ども・若者の自殺対策」ZOOM講演会】


市町村職員・保健福祉事務所職員・学校教育関係者と対象の幅が広くて、焦点が絞りにくかったのですが

コロナ禍でもリモートで開催でき、多くの人に聴いてもらえてありがたかったです。

ご質問も沢山もらいました。

中でもよくある質問で今回もありました2つの質問について紹介します




【連携すべき機関】

Q「子どもが自傷行為・自殺未遂した時、どこの機関と連携をとればいいですか」

これは、その町々で持っている社会資源が異なるのでどこどこにつなぎましょう(児童精神科医にとか、トラウマの診れるところにとか)限定していうことができません。

その町でどのような社会資源があるのかお互いを知って協働するしかないと思っています。

とりわけ学校の先生方は学校の中で解決しようとして疲弊してしまうので

自分の学校の地域にどういう社会資源があるか先生たちご自身が知っておくことは大事だと思います。



【自殺のサイン】

Q「こういうサインが危ないとか自殺のサインありますか?」

自殺で亡くなった後の相談のほとんど、「全くいつもと変わらなかった」と周りの方はおっしゃっておられました。

色々とハイリスクになる要因はありますが、「サイン」というサインは実はないと思って、ひとつひとつの困りごとに丁寧に接していくしかないのだと私は思っています。

例えば遺書を書いているなど、典型的なサインもあるにはあるわけですが、子どもの自殺の多くが遺書などを残していません。

もちろん、居場所がなかったり、複雑な家庭環境などハイリスクと思われる子どもたちもいますがそれがサインかというと

サインというより、生きづらさだと思うのです。

そして、これさえ押さえておけば大丈夫みたいなものでもなく

マニュアル通りにはいかないものなのだと思うのです。

SOSのサインについて断言してしまうことの方が、自殺のサインを見逃す要因になるように感じています。


Posted by 高橋聡美 at 23:54
学校における自殺・自殺未遂についての検討会 [2021年08月01日(Sun)]


ここ数ヶ月で、全国の小・中・高から相談があり、個別に自殺、自殺未遂案件相談を受けています。



中学生の相談が増えているのが特徴で、


少なくとも私が相談された全てケース、「死にたい」と周囲に漏らすことなく亡くなっていました。


むしろ「普通に元気だった」と。



私が学校からあるいは本人から相談を受けている「死にたい」と言っている子たちは


ほとんど家庭で様々な生きづらさをかかえています。


親とうまくいかない(多くは母子関係)、親がわかってくれない。と。


学校は行きたくないわけでもないし勉強もしなきゃいけないのもわかってるけど、行けない。と、不登校になる理由も自分でもわからないという子も多いです。



また、「あの先生が大きな声を出すのがイヤ」というような学校に行きたくない理由のあるケースでも


家庭の中で大きな声で夫婦喧嘩やD Vのある子で、


先生がというより、大きな声に反応して学校に行けなくなるようです。


そんな子達の多くが、「他の子が叱られているのを見るのもつらい」と言います。



このような場合「学校に行きたくない理由」にされた先生も心理的に追い込まれますので、


児童生徒のカウンセリングはもとより、教員のサポートも必要となります。


もちろん、そもそもの原因である家庭問題はスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーと協働して介入できるといいなと思います。




それと、これも複数相談があるのですが、保護者が外国籍で、日本の教育システムがよくわからず、親子で混乱してしまうケースです。


日本語が母国語でない保護者さんにはより丁寧なサポートが必要と思われます。


外国籍の保護者さんたちは、日本のお母さんたちに引けを取らないようにと頑張りすぎる傾向があり


誰にも頼らないで頑張ろうとしたりします。


その頑張りを子どもにも強いたり


子どもの成績が良いことで自分の海外での子育ての「成功」を実感したがります。


肩の力を抜けるといいなと思います。




たいていの場合、親と子どもでも見えている情景が違います。


つまり、親が「問題」と思っていることを子どもは「問題」と思っておらず


子どもが「問題」と思ってことを親は問題とは思っていないことがよくあります。


例えば、親は成績が悪いことや不登校気味なことを「問題」と思ってて、


子どもは「なんで、自分がそういうことになってるのか、わかろうとしない親が問題」と思っている


そんな感じです。



学校の先生と児童生徒の間でも同じようなことが起きています。


例えば、ある子が親子喧嘩をしてリストカットをしました、もしくはピアスを開けてきましたという時に


「困りました」と先生は私に相談します。


「先生たちは何に困っておられますか」と聞くと


「だって、先生それはもう進路の問題ですよ


とおっしゃるのです。


おそらく、子どもはさしあたって進路問題にはぶつかっておらず


親子関係で困っていて、その相談先もなく体に傷をつけているのだと思うのですが


先生たちはその先の先に起こるかもしれない進路について心配しているわけです。



子どもと大人と見ている風景が全然違うと感じます


子どもの自殺が増えている一方で大人たちは子どもに何が起きているか、


子ども達に聞かないで、自分たちの価値観で解決しようとしているのかもしれません。




ケース検討会でも経緯を詳細に書いた資料が配られ、先生たちは私にこう聞きます。


「あの子は何に困ってるんでしょうか」


「どうしたらいいかわかりません」



私もわかりません。とお答えしています。

だって、私はその子じゃないから。


「何が一番しんどいか、何に困ってるか?本人はなんと言ってますか?」と尋ねると


「聞いてません」と


聞いてみてください。先生達で話し合ってもその答えは出てきません。


本人の話を聞いてあげてください。


何をしたらいいかも、私たちにできることは何かを「私たちに何ができる?」「どうして欲しいか」を聞いてみてくださいとお伝えしてます。



できるサポートはやる


できないサポートはどこかにつなげる。


教師に限らず、おそらくたち私たち大人は子ども達が起こしている「問題行動」にだけ目が行き、それをコントロールすることに翻弄し


こちらの心配や要望を伝えるばかりで


その子の話を聞いていないんだと思うんのです。


どうたらいいかわからない時はまず


子どもの情景を見させてもらう。


そして、私が何をすべきかも聞いてみるといいと私は思っています。


子どものことを考えるのにその子の話を聞かずしてその子の理解はできません。


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Posted by 高橋聡美 at 10:08